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裏返しとふにゃふにゃ

 こじれそうな気配がする。


「えぇと、せんせ? その、忙しくなる案件じゃないし、アルルちゃんならすぐ終わらせてまた稽古に出られるようになると思うよ?」


「あぁ、そうだと思いたい。んだけどなぁ」


 メルが宰相として武闘会の開催が正式に決まったよと教えてくれた。


 国を挙げてのイベントが決定されたということは、当たり前にアルル様が忙しくなるということで。


「露骨に避けられてる気がするんだが?」


「あ、あはは……」


 困り顔で笑うメルだ、当たっているんだろう。


 そう、武闘会の処理をするためにという理由でアルル様と会う頻度が激減した。

 こうなってしまうと俺の立場としてはアルル様に呼ばれないと会うことは難しい。


 神様扱いされるようになったとはいえ、それはあくまでも対外的な名目だ。

 俺の嫁さんなんだから旦那の言うことを聞けーなんて言う性分でもなし、名目を掲げて無理を通すってのは趣味じゃない。


「アルルちゃん、何考えてるんだろうね」


「まぁ、な。話を出した頃のアルル様は自分も参加することに前向きというか、前提条件の一つとして考えていただろうし。今のままじゃ恥かくだけってのも分かってると思うんだけど」


 加えて言うなら、私情を挟むような人じゃないとも思う。


 何より他の者に多くを任せて稽古の時間を優先するといったのはアルル様だ。

 腹黒いし、言葉遊びで煙に巻く一面はあるけど、嘘をつくことはない。


 だからこそ、こじれそうだなぁなんて思ったりするわけだけども。


「何にしても、今回俺はやらかしてしまったし、自分を棚に上げたくはない。しばらく待つことにするよ」


「ぐいぐい来て欲しいと思ってるかもよ?」


「ぐいぐいって」


 無理やり稽古に参加させるってことか?

 いや流石にそれはどうなんだよ。


「……あたしでもアルルちゃんがせんせに本気になったらどうなるかわからないし……ライバルはカタリナちゃんだけで十分だし……でもなぁ、うーん」


「うん?」


「何でもないよ、朴念仁さん」


 唐突な朴念仁呼ばわりが俺を襲う……何故だ。


「そう言えば、見学の調子はどうだ?」


「え? あ、うん。デートが楽しみだね」


「おいおい?」


「冗談だよ。カタリナちゃんも言ってたけど、改めて目付けって大切なんだなって思った。どこの兵団でも、精度はともかくちゃんと相手の実力を測ろうとしてるってわかったもん。せんせがあたしたちにあの場で謝った理由もよくわかったよ」


 なら良かった。


 兵団内での目付けは一緒の窯のメシを食い合う仲なだけに、精度が良すぎるって意味であまり意味はないが、それでも相対したとき成長を測るという面で役に立つ。


 今の調子ならカタリナとメルは自分の管理している部隊に戻ったときに驚くだろう。

 部隊の人間たちは思った以上に強かったか、弱かったかどちらの方向にかはわからないが。


「そうだな。折角の機会だから、改めて自分の管理している部隊に必要なものは何かってのも考えながら見学すると良いよ」


「他の隊との差別化、あるいは連帯にも役立つし?」


「そこら辺は俺の言えることじゃないな。単純に、目付けの上手い人が隊長格にいるのは良いことだ。アーノイドなんかは言うまでもなく素晴らしい眼力を持っているし、後釜であるビスタもそう。こういっちゃ何だが、魔法剣士隊と近衛兵団に比べて抜きん出た実力を騎士団は持っている」


「ほ、ほんとにこういっちゃ何だがだね? むむむ」


 口調とは裏腹に楽しそうなメルで何よりだ。

 口を酸っぱくして何度も言ったが、長所と短所は裏表の関係なのだ。

 

 だからこそ、短所を発見すればわくわくする。

 どうやって埋めてやろうか、この部分の表、あるいは裏に当たる部分は何なのか。

 そういった自分への追求の始まりに心を躍らせることができるのは、間違いなく強くなる条件の一つ。


「へっ? わぷっ」


 カタリナもメルも、強くなる。


 ロザリーさんとの戦いは、そりゃもう物凄く楽しかった。

 反省しているけれど、楽しかったと思った自分は否定できないし、するつもりもない。


「え、あ、あの、せ、せんせ……?」


 言ってしまえば先の戦いで短所を見つけられたんだ。

 切迫した戦いになってしまうと、つい相手を殺して勝とうとしてしまうなんて。


 これを短所だとしたのなら、裏返しの長所が俺にもあるはずで。


「ふ、ふわ……」


 きっと、こうやって誰かが強くなることを喜べる部分が長所であって、いわくところの先生としての強さに繋がるんだろうと思う。


「ありがとうな」


「……ふぇ?」


 いつの間にかメルの目がとろんとしていた。


 っていうか無意識に頭を撫でていた。


「な、なんでもいいから、もっと、してぇ?」


「お、おう」


 やっぱキミ、キャラちょっと変わったね?


 いや、無意識に女の人の頭撫でるとか何やってんだって話だけどさ。


「ふにゃあ」


 ――そういうところですよ! ご主人様! あとわたしにも後でお願いしますね!! 頭だけと言わず全身くまなく念入りにっ!!


 テレシアのお気持ち表明が頭に響く中。


 もしかしたらアルル様は、わくわくすることが怖いのかも知れない、なんて。


 なんとなく思った。

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