ドヤった結果がこれだよ!!
「さて、各々感じたことはあるでしょうが、まずは知ることが思い知るという形になったことを謝ります。申し訳ありません」
「い゛ぃ゛っ!?」
「えちょ!? せ、せんせっ!? あ、あああ、頭上げてよ!?」
「その通りです! 主様が頭を下げるようなことあるわけございませんっ!!」
頭を下げてみればどっからその声出したんだよって悲鳴に近い声のカタリナに、見なくても慌てまくってるとわかるメル。
ついでにカルシャさんは何いってんだよ、怖いよ……。
「言うまでもなく目付けの技術とは戦う者にとって極めて重要なものです。にもかかわらず、今の今まで触れられなかった。俺の怠慢と言えます、許せとは言えませんが、ちゃんと取り返しますのでご容赦願いたい」
「ゆるすっ! 許すからっ!? ベルガさんってばっ!?」
「あわ、あわわわわっ!?」
責任という言葉を自分なりに大切なものだと思っていたのにも関わらずこれだ。
正直、穴があったら入りたいなんてレベルじゃない。いっそ殺してくれとすら真面目に思ってる。
「師匠」
「何だろう?」
「ボクが思うに、ですけど。仮に師匠が気づいていたとしても、目付けの技術を磨く機会や方法は無かったと思うんですよ」
「そそっ! そうだよトリアの言うとおりだよ! だからいい加減頭あげてってばっ!?」
機会や方法ね。
確かに否定は出来ない、だが。
「大切なものなんだよと言うことは出来たはずだ。磨く機会が無かろうとも、知っていれば少なくともカタリナは赤っ恥をかかなくて済んだ。俺の怠慢でカタリナの誇りが傷つけられたんだ。それこそ仮に俺なら、簡単には許せないと思う」
「それは……」
「わ、私そんな誇りが傷ついたとか思ってないから!?」
それはそれで悲しくなるから勘弁してもらいたいところ。
「ベルガ」
「はい」
「このまま頭を下げられていても、建設的とは言えません。取り返すと言いましたね? ならばその方法を持ってあなたの全てを、アルルの名において許しましょう」
「ありがたき幸せ」
「な、何をえらそ――むーっ!?」
「カルシャはちょっと黙っとこうな」
クルセイダーの二人はおいておいて。
アルル様の言葉で頭を上げてみれば泣きべそ一歩手前のカタリナと、目を回しているメルがいて。
「ボクが言うのもなんですけど、ほんっと師匠はこういうことに限っては真面目ですよね」
「それだけ強さというものへ真摯に向き合っているということでしょう。わたくしとしてはとても好ましいのですがね」
揃って似たような困り顔を浮かべているトリアとアルル様がいた。
「申し訳ありません」
「いいのです。それで? 取り返す方法とは?」
「はい。それはですね――」
「個人練習、ですの?」
「はい。こうして皆で揃って稽古をするって機会を一旦無くします。もちろん俺と一対一で稽古する機会は設けますが、それも週に一度の頻度へ落としたいと思います」
「「ダメッ!!」」
「ま、まぁまぁお二人とも。さ、最後まで聞きましょう?」
カタリナとメルが声を揃えて詰め寄ってきた、落ち着いてくださいませ。
「先程も言いましたが、目付けとは大切であり重要な技術です。現状、放置していていいレベルに皆はいません。むしろ、本来の実力を損なってしまう要素となりかねない……そこで、です」
明らかに不満顔が二つ、いや三つか。
頬を膨らませて今にもブーイングしてきそうな奴らを目に入れないようにして。
「これからしばらくカタリナを騎士団、メルを近衛兵団、トリアを魔法剣士隊の訓練にそれぞれ見学しに行ってもらいます」
「見学、ですか? 参加ではなく?」
「そう、見学だ。目付けとは言ってしまえば観察眼や洞察力に寄る所が大きい。それらを養うためにぱっと見でどういうことが得意か、苦手かを考えながら見学してもらう」
「「ぶー! ぶー!」」」
カタリナ? メル?
二人共そんなキャラじゃないだろう? 壊れちゃった……。
「はいはい、俺としては責任を取りたいので聞き入れてもらいたい所です。そうですね、もしもちゃんと言うことを聞いてくれたらさん――じゃなくて、デートでもしましょうか」
「「はいっ!! やりますっ!!」」
「……さん?」
あっぶね、テレシアと同じ感覚で散歩とか言いそうになった。
――ご主人様?
違うくて。ごめんてテレシアさん。
「一週間を目処に見学先を入れ替えましょう。それぞれ自分の管理する部隊を一番最後にする形で……ですので三週間ですね、自主練習はお任せしますがこの期間は可能な限り見学を優先して下さい」
「わかりましたわ、こちらでも調整できるように計らいましょう。ところで」
「アルル様は逆に目付けに秀でていらっしゃる。他の皆が見学に勤しんでいる間、俺とみっちり稽古です」
「う……の、望むところですわ」
そりゃもうみっちりやりますとも、お覚悟願いますね。
実際、目付けというか見抜きとでも言うのか。
加えて自分を見せない技術に長けているアルル様に見学はあまり効果がないだろう。
「お姉様?」
「言うまでもなく、抜け駆けはダメだからね? アルルちゃん」
「も、もちろん、ですわ? というか、そんな余裕、絶対ありませんわよ、これ」
何よりカタリナやメル、トリアに大きく差をつけられているわけだし。
見抜いたり防いだりしたところで、実力という中身がなければ意味がない。
武闘会のこともある、これを機にアルル様に集中するとしよう。