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決着は鮮やかに

「なるほど、信仰具現化ね」


「信仰具現……? ベルガ、それは?」


「あの完全詠唱魔法がどういう魔法か。あえて言うならそんな名前になるかなってところです。魔力の性質が変わった、本来ありえないことですが……彼女らが使うような言葉で言えば、その身に神を降臨させる魔法ってところですか」


「神を? つまり神の御業とやらを使えるようになったということか?」


 頷く、大体合ってると言えるだろう。


 ただまぁ。


「聞きたいのだがベルガ」


「なんでしょう?」


「相当、凄い魔法なんだろう? 聖十字教に詳しくないが、神という名のインパクトが強烈であることはわかる。にもかかわらず、どうしてそんなに落ち着いているんだ?」


「底が見えましたから。俺としてはまったく興味がなくなったと言いますか」


 トリアよりも、メルよりも今のカルシャは強いだろう。

 だが、どう見ても二人が敵わない相手と思えない。


「五分で完了する完全詠唱魔法、そうとだけ聞けば驚異的です。けど、内容がこれじゃあな」


 俺が知らなかったってことは、アストラの遺産魔法ってこと。

 あらゆる完全詠唱を五分に短縮できるとでも言うのなら、本気でお手上げするところだったけど。


「自分には、やはりよくわからないが。ベルガがそう落ち着いているんだ、引き続き安心して見ていることにしよう」


「ええ、そうして下さい。ほら、動きますよ」


 もう俺としては、あの二人が浮かべている笑顔の正体しか興味ない。


 さぁ、メル、トリア。


「遠慮なくぶちかませ」




 初手はカルシャからだった。


「トリアッ!」


「お任せをっ! ホーリーヴェイルッ!!」


 傍から見れば光線のような魔法を、トリアがイル・ガーディアの布を使って弾いた。


「神の愛をそのように!!」


「受け取り拒否ってもんですよ! 行きますっ!!」


 そのまま布を盾のように構えながら突進して距離を詰めようとするトリアだが。


「弁えよ! 光槍(レイランス)!!」


「っ!」


 光の槍がすぐさまトリアに向けて放たれ、動きを止めようとする。


「レイ、なんてよく言ったものね」


「なぁっ!?」


 あぁ、同感だよメル。


「ただの、凝縮された炎じゃん」


「お、のれぇっ!」


「ふふっ、ありがとうございますっ!」


 光の槍、のように見えてただの超高温な槍。

 レイなんて言ったは良いが、その実炎の槍ってだけだ。


 即ち物理的に防ぐことができる。


 一見すれば確かに光属性なんてこの世界に存在しない魔法、すなわち神の御業と言われたのなら信じてしまうだろう。


 事実として紡がれた術式は難解だ。

 だが、俺で辛うじて読み取れる術式を、魔法オタクのメルが見逃すはずない。


「やああぁああっ!!」


 メルが作り出した土壁にレイランスが突き刺さり、その裏からトリアが身を躍らせ現れる。


 間合いに入った。


「小癪なぁっ! 神に近づくなど不届きと知れっ! 光嵐(レイストーム)!!」


「うわっ!?」


 が、カルシャは接近戦を拒否。

 カルシャの周囲、地面から光の槍が突き上がった。


 ありゃ厳しいな、さっきのヤツ同様に高熱を帯びている。

 触れてしまえば火傷じゃ済まないだろう、一瞬で骨まで溶けかねない。


「ク、ハハ! そうだ、そうして黙って待っておけっ! 今、神の神たる所以を見せてやるっ!」


「ふふ、神? さっきからペテン師がうるさいですね」


「ほんとだよ。そっちこそ、化けの皮剥がしてあげるから待っててよね」


 さぁてどうする?

 剣の間合いで戦うことは拒否された。

 トリアとメルに残された手段は少ないぞ? 


 カルシャが扱う魔法は光と言いつつ炎の魔法であることは分かっただろう。


 聖の効果があるとは言っても、ホーリーヴェイルが布を使っている以上簡単に燃えてしまう。

 サキュリアの鉄球を処理したようにはいかないぞ……って。


「あれ?」


「どうした?」


 一番最初に放たれた光線を、トリアは弾いていなかったか?


「え? いや、まさかおま、待て待て待て待て」


「お、おい、ベルガ?」


 慌てて目を凝らしてイル・ガーディアについている布を見ても焦げ跡なんて何処にもない。


「テレシア! ディープアナライズ!!」


 ――いえ、ご主人様。わたしが解析を行うよりも早く、答えが見られそうですよ。


 うっそだろ、お前。


「ベルガ!?」


「あ、あー……いや、すみませんアーノイドさん。簡単に言ったらダメな言葉ってわかってるんですけど……この試合、勝ちましたわ」


「は?」


 腰抜けたよ、メルの仕業だな? ったく、あいつのオタクっぷりはこれだから侮れない。


「トリアッ!!」


「はいっ! ホーリーヴェイルッ!!」


「そのような下賎な――にぃっ!?」


 魔力パスを通して、トリアのホーリーヴェイルへと更に効果を付与してやがる。


 カルシャを守るようにそそり立つ光の槍をお構いなしに突き進むホーリーヴェイル。


 何だ? 何を付与してる? 

 ……うーわ、俺でもわかんねぇわ。ブースト系と水属性まではわかるけど、それ以上は無理。


「メル様! 魔力お借りしますよ! 二重聖護布(デュオ・ヴェイル)!!」


「っく、うぅ……まかせ、たからねっ!」


「はいっ!!」


 お披露目も大概にしろって、もう俺の肝をどうしたいんだよ。


「な、う、ぉっ!?」


 トリアのもう片手から放たれた不可視の布がカルシャを締め上げていく。


 ここで、ダブルするかー……いやぁ。


「つえぇわ」


「う、うぉ、うあぁぁああぁぁぁあっ!?」


 そうかそうか、まだあると思っていた付与は魔力吸収ですか。


 えっぐいわ。

 メルの魔力量にモノを言わせた戦法と言えなくもないけど。


 ここまで上手く互いの魔力を共有し合うコンビを、俺は見たことがない。


「あ、あ、あぁ、ぁ……」


 カルシャの身体からどんどん力が抜けていく。

 瞳に宿っていた、狂信的……いや、狂気的な色も消えていく。


「か、ふ」


「お、っと」


 ホーリヴェイルが解除されて、倒れそうになったところをトリアが支えて。


「――勝者、ベロニカっ!!」


 ビスタが二人の勝利を、宣誓した。

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