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来界者《フォールナー》リュウトの異世界遍歴 ~勇者の息子の最初の仕事は、女子寮の雑務係でした~  作者: しょぼん(´・ω・`)
第二巻/第二章:勇者の息子、約束を果たす

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第一話:突然の告白

 大浴場に着いた時点で、まだリナちゃんラナちゃんの姿はなかったけど、先に掃除を始めておこうって事で、エスティナにまだ女子が残ってないか。忘れ物なんかがないかを確認してもらった後、俺達は掃除を始めたんだ。


 結構な人数を抱える、魔導学園女子寮にある大浴場。その内装は中々に豪華だけど、何より結構な広さがある。

 昔両親に連れて行ってもらったホテルの大浴場なんかより、もっと広いんじゃないだろうか。


 噴水のような給湯口。

 これは俺の部屋の洗面台にもあった水流宝珠ウォータークリスタルから出した水を、一旦放熱宝珠(ヒートクリスタル)で温め、それから湯船に回すようにしているらしい。

 そっちの宝珠クリスタルの操作は先にマナードさんがしてくれていて、今は給湯は止まり、湯船にお湯が溜まってるだけ。


 って事で、いざ掃除を開始しようとしたわけなんだけど。

 そこにひょっこり顔を出したのが、当番であるリナちゃんとラナちゃんだった。


「リュウトお兄ちゃん! リナ、ミャウと遊びたいです!」

「違う。今日はお掃除」

「あ、そ、そうです! お掃除しに来ました!」


 俺の前までやってきて直後に口にされた、あまりにどストレートな本音。

 俺とエスティナは顔思わずを見合わせて苦笑したっけ。

 多分、またミャウに乗りたいんだと思う。だけど、流石にこれはあいつに聞かないと答えを返せない。


「えっと、ミャウ。少しお前に乗りたいみたいだけど、どうする?」


 俺が脇にいるミャウに顔を向けると、あいつもやれやれという顔をした。

 でも、結果を待つリナちゃんの緊張した表情を見て、同情したのか。


「ミャーウ」


 コクリと頷いたミャウは、それを受け入れ床に伏せたんだけど、ここから彼女達の行動は早かった。


「やったー!」


 喜びの声を上げた直後、リナちゃんとラナちゃんはすぐさま近くに置いていたモルットを手にして、ミャウに駆け寄りそれを白い毛に押し付けた。


「ミャ、ミャウ!?」

「ミャウ。大人しくしてて」

「あわあわにするねー!」


 その言葉の通り、戸惑うあいつが一気に泡まみれになっていく。

 そして、ある程度泡立った所で、二人はミャウの上に迷いなく乗っかった。


「ミャウちゃん! これで滑ってみて! すぐ床が綺麗になるよー!」

「滑るから、楽しいよ」

「ミャ、ミャウ」


 あまりに行動に淀みがなかったせいか。

 戸惑いながらもそのままあっさり二人を受け入れたミャウは、後ろ脚で床を蹴り滑り出した。

 けど、やっぱり滑る足のせいで、バランスが悪かったんだろう。


「ミャミャミャミャ!?」

「うわーい! くるくるー!」


 突然くるくるっと回転しながら、床を泡立て滑っていくミャウに、リナちゃんは大興奮。

 ラナちゃんも声は出してないけど、笑みを浮かべてる所を見ると、やっぱり楽しいんだろうな。


 慌てながらも、ぶつかる前にミャウはうまく壁をキックする。

 回転も早さも維持して、まるで素早く動くロボット掃除機みたいに移動しているうちに、あいつも楽しくなったのか。

 「ミャーウ!」なんて鳴きながら、リナちゃん達と楽しみながら、床を泡まみれにしていった。


「これなら、床だけは掃除が早そうだね」

「そうだな」


 なんて、俺とエスティナは苦笑したけど、まあ掃除の役には立ってるしな。

 このままやらせておくか。


「洗い場はミャウ達だけで大丈夫かもな」

「そうだね。泡は後で取る事にして、私達は湯船のお湯を抜いて、そっちの掃除をしようか?」

「ああ」


 俺達が微笑ましい光景に釣られて笑うと、ミャウを避けて湯船に向かおうとしたんだけど。


「あ、あの……」


 ふと耳にした、入り口の方からしたおどおどとした声に振り返ると、そこにいたのはアイリスさんだった。

 今日の当番じゃない彼女が何故現れたのか。

 正直それがわからなくって、俺とエスティナが顔を見合わせてしまう。


「あれ? アイリス。どうしたの?」

「あ、えっと……その……」


 エスティナの問いかけに、目を泳がせもじもじしていた彼女が、突然藍色のセミロングの髪を振り乱し勢いよく頭を下げた。


「あ、あの……リュ、リュウトさん! わ、私と、付き合ってください!」

「……へ?」


 突然の言葉に、素っ頓狂な声をあげ固まった。

 隣のエスティナも、モップを持ったまま、目を丸くし愕然としている。


「ミャウちゃん! もっとくるくる!」

「ミャウミャーウ!」


 時折、こっちなんてお構いなしに、床をくるくる滑っているミャウと、栗毛色の髪をなびかせながら、背中に乗って喜んでいるリナちゃんラナちゃんがあっちに行き、こっちに行き、視界をちらちらと横切るけど、アイリスさんは頭を下げたままじっと動かない。


 ……っていうかさ。

 俺、本当に掃除しに来てるんだよな?

 何でこんな所で告白をされてるんだ?


 頭を下げたままのアイリスさんの必死さがはっきりと伝わってくる。

 けど、その、急に付き合ってと言われたって……。


 きゃっきゃしている後ろの二人と一匹は置いておくとして。

 この状況、一体どうすればいいんだ?


 今までの人生で、告白なんかされたことのない俺は、この雰囲気もへったくれもない場所で、顔を真っ赤にして頬を掻く事しかできない。


 俺には好きな人はいる。すぐ隣に。

 だけど、エスティナには好きな人がいるみたいだし、告白なんてできはしない。

 だからって、いきなり告白してきたアイリスさんの気持ちを受け入れろと言われても……まだ出会って数日しか経ってないんだけど……。


 えっと……素直に断れば良いのか?

 でも、それで彼女が泣いたりしたらどうすればいいんだ!?


 正直、俺は困っていた。

 この、場違い過ぎる告白に。

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