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来界者《フォールナー》リュウトの異世界遍歴 ~勇者の息子の最初の仕事は、女子寮の雑務係でした~  作者: しょぼん(´・ω・`)
第一巻/第三章:勇者の息子、女子生徒達に印象づく

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第四話:エスティナの友達

「あれは多分、初級幻術の範囲幻影ミラージュフィールドだよね?」

「うん。実はあの子達、入学式でもあれを披露したんだけど、講堂一面を花で埋め尽くして、先生達をも驚かせてたんだ」

「へぇー。あの中を一面って、相当あの術が得意って事なのかな?」

「そうみたい。あの演出でみんな心を掴まれちゃって、今じゃ学園のマスコットみたいになってるんだよね」


 確かに、あの二人にあれだけ可愛らしい魔法を掛けられたら、みんな可愛がりたくもなるだろうな。


「他に印象深い人達っている?」

「他にかぁ……あ。そういえば、エスティナの友達の子も、結構印象に残ってるかも」

「アイリスとミネットの事?」

「そうそう。あの二人、珍しく俺に興味を示してきてたよね」

「あー……確かにそうだよね」


 俺の言葉に、エスティナが少し不満げな顔になる。

 ん? 何か気になることがあるんだろうか?


 俺は心当たりが無いか。

 その時のことを振り返ってみた。


   § § § § §


「いやー、長かったなー。やっとあたし達の出番だね」

「は、はい……」


 その二人が部屋に入ってきた時の反応は、まったく真逆と言って良かった。


 片方は金髪の髪を横でポニーテールにした、褐色の肌が健康そうに見える、俺の世界でもはっきりとギャルって言葉が似合う感じの人間の少女。

 もう一人は、眼鏡を掛け、露骨にオドオドとしている、藍色のセミロング髪が綺麗な霊魔族エルファの少女。


「エスティ、遅いよー」

「仕方ないでしょ。順番はクラウディス先輩の提案した方法で決まったんでしょ?」

「ま、そうなんだけどねー」


 両腕を頭の後ろに回しつつ、悪びれない顔で答える女子。

 ……うん。これは間違いなくギャルに違いない。と言っても、異世界でギャルっぽい子がいるイメージがなかったし、妙な親近感があるけど。


「確かリュウト君にミャウちゃんだよね? あたしはミネット。よろしく!」

「あ、うん。よろしく」

「ミャウ」


 挨拶しながらてへっと舌を出しポーズを決めるミネットさんに、俺達が短く返事をすると、彼女が一気に俺に顔を寄せてきた。


「でも、来界者フォールナーって初めて見たけど、近くで見ると結構イケてるじゃん」


 ……へ?


「イケてる、ですか?」

「うん! あたしの見立てじゃ、デイルバード戦騎学園の生徒達と比べても、上位二十人くらいに入るんじゃないかな? こりゃエスティがころっと落ちるわけだ」

「ミ、ミネット! 変な言い方しないの! 私はただ、リュウトが本当に来界者フォールナーだって知って、この世界で暮らすのが大変だと思って協力してるだけなんだから!」

「ふーん。その割に、昨日寮に戻って来てから、ずっとリュウト君の話してたよねー」

「そ、そんな事ないでしょ! もうっ」


 顔を真っ赤にして否定するエスティナに、からかい甲斐があると言わんばかりに目を細め、口に手を当てにっしっしっと笑うミネットさん。

 これは彼女が一枚上手かな。


「ま、いいけど。じゃ、リュウト君。今度落ち着いたら一緒に遊びに行こ? 街の事、色々教えてあげる」


 彼女はそのまま俺に顔を向けると、さらっと笑顔でそんな誘いと共に、手を差し出してくる。

 ……まあ、さっきの感じといい、イケてる発言も含めて、流石に社交辞令だろうな。

 変に本気にしないようにしないと。


「ありがとうございます。その時はお世話になります」

「あはっ。うん! 楽しみにしてるね!」


 無難な返事をしつつ握手を交わすと、彼女はひまわりのような快活な笑顔を見せ。


「そしてミャウちゃーん! やっぱ近くで見るとめっちゃ可愛い!」


 すぐさまミャウに寄り添うと、嬉しそうに顔に頬擦りを始めた。

 その変わり身の早さには、流石に唖然とさせられたな。

 

「こほん。次はアイリスの番だね。緊張しなくって大丈夫だよ」

「う、うん……」


 ミネットに呆れたであろ表情を切り替えるべく、軽く咳払いしたエスティナがもう一人の子、アイリスを促すと、彼女はおずおずと俺の前に立つ。


 妙な緊張感を醸し出しているアイリスさんに、俺も少し背筋を正す。


「えっと、あの……私、アイリスって言います。召喚術科を専攻してる、エスティと同じ二年生です。えっと、趣味はその……絵を描く事です」

「ほんと、アイリスは休みになるとずーっと部屋で絵を描いてるよねー」

「でも、凄く上手じゃない。私はいいと思うよ」


 丁寧な自己紹介に割って入るミネットとエスティナ。

 って、そのせいか。

 次に何か言おうとしていたアイリスが困った顔になってるな。


「二人とも。まだアイリスさんが話してるんだから」


 俺がそう二人に釘を刺したんだけど。


「ア、アイリスさん?」


 アイリスさんは間の抜けた声を出すと、


「アイリス、さん……アイリス……さん……」


 そのままもじもじと恥ずかしそうにしつつ、ぶつぶつと自分の名を繰り返呟いている。


 ……俺、何かおかしな事言ったか?

 思わず首を傾げた俺は、助けを求めるかのように自然とエスティナに顔を向けたんだけど。

 彼女もまた、ミネットさんと顔を見合わせ、困ったように苦笑する。


「ごめーん。アイリス」

「ごめんね。話に割り込んじゃって」

「あ。う、ううん。だ、大丈夫……」


 二人がそう謝罪すると、はっと我に返ったアイリスさんは、またさっきまでのおどおどとした態度に戻ったんだけど。ちらちらと俺を見た彼女は、何かを決意したのか。真剣な目を俺に向けてくると、


「あ、あの! リュウトさん!」


 そう強く俺の名を呼んだ。


「えっと、何かな?」

「あ、あの……その……」


 俺が何とか返事をすると、彼女はまたもじもじとし始めたんだけど、次の瞬間。意を決して目を閉じ、こう叫んだんだ。


「あの……私の、絵のモデルになって下さい!」

「……絵のモデル?」

「は、はい……」


 呆気にとられた俺の反応に気後れしたのか。

 アイリスさんが再びおどおどとする。


「あの……私、男性の友達とかいなくって、それで……男性の絵を、描いてみたいなって思っても、できなくって……だから、その……あの……」


 最後はしどろもどろになり、声も小さくなっていく。

 多分、彼女なりに勇気を出したに違いない。

 けど、モデルって……何をするんだ?

 ただ立ってるとか座ってるとかすればいいのか。いや、まさかだけど、ヌードモデルとか言い出さないよな……。


 俺の知識にあるモデルを重ね合わせつつ、一体どんな感じになるのか内心動揺していると。


「あの、良かったらアイリスのお願い、聞いてあげてもらえないかな?」

「あたしからもお願い! アイリスってあたしが男子紹介するって言っても、全然受けてくれないしさー」


 なんて言いながら、二人からもお願いをされてしまった。

 とはいえ、ミネットさんの言い回しが癪に障ったのか。アイリスさんが弱々しくも不平不満を口にする。


「そ、それは、ミネットの紹介しそうな男性って、その、なんとなく、苦手な感じだし……」

「わかるわかる。絶対遊んでて楽しいって理由だけで連れてきそうだし」

「えー。それって大事じゃない?」

「大事も何も、絵に関係ないじゃない。それに。外で色々な男子と遊んでると、何時か痛い目に合うよ?」

「大丈夫大丈夫! ま、でもアイリスのモデルとしては合わないかもだし。そういう意味じゃ、やっぱりリュウト君が適任じゃん?」


 言い争いにも感じる会話の中で、何故か俺が猛プッシュされている気がするけど……。

 ミネットさんやアイリスさんは俺の何処にモデルの素質があるって感じてるんだろう……。


 色々勘ぐりはするものの。エスティナからもお願いされたんじゃ、無下にはできないよな。


「正直、適任かはわからないし、すべてのリクエストに答えられるわけじゃないけど。その、それでもよければ協力するよ」

「あ、ありがとうございます!」


 俺が当たり障りのない返事をすると、アイリスさんはぱぁっと笑みを浮かべた後、勢いよく頭を下げてくる。


 なんとなくその安堵した顔を見て、こっちもほっとしたんだよな。


   § § § § §


 ……うーん。

 モデルの件はエスティナも推してきてたし、となるとやっぱりミネットさんの件かな?

 何となく、話を聞いていると八方美人な雰囲気があったし。自分もああいう雰囲気の子、ちょっと苦手なんだよね。


 っと。そういえば。


「そういえばエスティナって、何でみんなからエスティって呼ばれてるの?」


 俺がふと気になっていた事を思い出し問いかけてみると、はっとした彼女が慌てて笑顔を取り繕う。


「ああ、あれはミネットの提案だったの」

「ミネットさんの?」

「そう。私って校長の孫だし、堅苦しいって思われてて。それで、愛称で呼ぼうって提案されて」


 あー。そう言われると何となく納得かも。

 エスティナって響きも、ちょっとお堅い印象があるし。


「そっか。じゃあ、俺もそう呼んだ方がいい?」


 そう尋ねてみると、彼女はちょっとかしこまった後、俯き加減にこっちに視線を向けた。


「えっと、私は、今までのままがいいな」

「どうして?」


 素直に問い返した俺に、彼女は少しもじもじしながら、上目遣いに俺を見つめてくる。


「その……昔からそう呼ばれてたし。それが変わっちゃうのは、ちょっと嫌かなって」


 ……正直、そのどこか恥じらいある反応に、俺は少し固まっていたと思う。

 まあ、見惚れてただけなんだけど。


 でも、確かに俺にとっても、今の呼び名の方がしっくりくるんだよね。


 ……昔と変わらずいたいって気持ちは嬉しくもあるけど、友達でいようって言われているような気もしてちょっと複雑。

 それでも、こうやって特別扱いされているだけでも、嬉しくなってる時点で惚れたもん負けかな。


「わかった。じゃあ、そのまま呼ばせてもらうね」

「うん」


 俺がそう答えると、エスティナは嬉しそうにはにかんでくれる。

 そんな幸せな笑みを見ながら、俺もまた釣られて笑顔になっていった。

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