カトリーヌの悩み
【カトリーヌの悩み1】ジュノー15歳
半分うんざりしている僕と違い、
カトリーヌは近頃気が塞がっていた。
カトリーヌ。
美人の多いこの国においても、
美貌は並外れていた。
僕の記憶に残る母上の残像とくらべると、
勝ち気方向にふってはいるが、
決して見劣りがしないぐらいには。
僕の母親は王国の百合の花と呼ばれた。
対して、カトリーヌは王国の薔薇と
呼ばれ始めているらしい。
一つ一つのパーツが大きい上に、
陰影のある顔立ちと、
もって生まれた正のオーラによって、
遠目にもはっきりとわかる存在感。
顔だけではなく、プロポーションも申し分ない。
身長は165cm程度だが、
顔が小さく、手足が長い。
9頭身程度のバランスの持ち主で、いわゆるモデル体型。
痩身で、背筋も伸びているからずっと背が高く見える。
かといって、ガリガリというわけではなく、
女性らしい柔らかさを感じさせる。
所作も上品で美しい。
さすが、著名な伯爵家令嬢だけはある。
若干ワガママでタカビーなところがあるが、
フレンドリーな性格で別け隔てがない。
その彼女。
悩んでいた。
悩みは将来についてである。
1つ目は彼女は家から独立したい。
2つ目は縁談が殺到している。
女性は家庭に入れ、という習わしが強い訳では無い
ただ彼女は伯爵家長子としての振る舞いに縛られていた。
伯爵家的には魔導師となって欲しい。
そして、長子として伯爵家を継いで欲しい。
この場合の長子は文字通り、年長の子である。
男女の区別はない。
伯爵家は歴代魔導師軍の師団長を排出する家柄である。
父親も当然、魔導師軍の師団長。
その中でカトリーヌは長子として生まれ、育てられた。
ところが、彼女の祝福は“薬師”
伯爵家としては大いに落胆した。
彼女はその落胆に抗うように、必死の努力を積み重ねた。
魔法高等学院での主席の座を維持する陰には、
並大抵ならぬ修練があったのだ。
しかし、そうした努力とともに、
彼女には実家への不信感が芽生えていた。
なぜ、自分は家の言いなりなのか。
自分は単なる操り人形なのか。
彼女には自我が生まれていたのだ。
それは成長痛とでも言えるかもしれない。
実家への反発心は彼女を独立心へと導いた。
彼女がアニエス教授を理想とするのには
そういう背景があったのだ。
そこにアニエス教授からの指導。
僕のすすめでアニエス教授と魔石回復薬の処方に携わると、
才能が開花。
彼女の独立心はますます旺盛になってきている。
彼女はアニエス教授のように自由に羽ばたきたい。
2つ目の悩みはもっと深刻だ。
彼女はもうすぐ15歳。
15歳から成人とされるこの世界では、
決して若すぎるわけではない。
貴族であれば、許嫁がいても不思議ではない年齢だ。
婚約者を若いときから作るのは、
そうでないと縁談が殺到してめんどくさいからである。
搦手でこられたりすると、断れないケースも多い。
どんなに嫌な縁談でも。
だから、とりあえずキープ君を設けておくのだ。
縁談を断りやすいし、いい人が見つからなければ、
そのまま結婚すればいい。
カトリーヌは珍しく婚約者がいない。
ずっと引き伸ばしてきたのだ。
実家に囚われたままで、
しかも結婚となれば、貴族社会にどっぷりつかったまま、
でたくもない社交界で愛想を振りまいて老いていく、
カトリーヌはそんな未来を想像して、
ため息をつくばかりであった。
ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。
励みになりますm(_ _)m




