宝石
【宝石】
さて、ノームのパラケルからもらった宝石。
『このダイヤモンドだけど。カットに凝りたいね』
『宝石師に頼むんじゃないのですか?』
『うん。この世界にも革命を起こすよ』
僕には前世のダイヤモンドの記憶が朧気にある。
基本的な形は上が台形、下が角錐。
そして、きめ細かくカットを施していく。
カットの仕方は屈折率による。
宝石に入った光が全て反射して外に出ていくような、
そういうカットを目指す。
まず、屈折率の測定。
“料理人”が示す果物の糖度を計測する方法、
これは屈折率で表すことができる。
これを魔道具で宝石の屈折率測定に応用するのだ。
屈折率がわかれば、後は数学の問題。
シュミレーションでカット方法を考える。
様々なカット方法を思いつき、
100面を越えるカットもできるようになった。
また、伝統的なカット方法にもアレンジをくわえ、
より透明かつ光輝くようなカット方法を編み出した。
どのカットがいいのかわからないけど、
20種類ほどのカット方法を魔道具化した。
こういう機械的な仕事は魔道具の得意ジャンルだ。
ダイヤの研磨剤入超高圧ウォータージェット、
あれをここでも使用する。
屈折率や大きさ、形に応じて最適なカットがなされるよう、
調節できる。
◇
『どう?』
『まあ、吸い込まれそうな輝き!』
『ダイヤモンドって、虹色の光ももっているのね』
『角度によって輝き方が変わるのも神秘的ね』
指輪にしてエレーヌとカトリーヌにプレゼントすると、
飽きることなく、ずっと見つめている。
『この宝石がオイラが持ってきたダイヤモンド?』
『そうだよ』
『ふへー、ここまで綺麗になるもんなの。じゃあ、他の宝石もいける?』
『他の色だとここまでいけるかどうかわかんないけど、チャレンジしてみるよ』
ノームのパラケルはずっと保管してきた
自慢のコレクションを見せてくれた。
白色 ダイヤモンド
赤色 ルビー
緑色 エメラルド
青色 サファイア
黄色 トパーズ
いやいや、ちょっと待て。
大きすぎるだろ。拳大の宝石ばかりだ。
ひょっとして、数百とか数千カラット?
色付きのダイヤモンドもある。
『ああ、これは大きすぎてもったいないから、もっと小さいのにしようよ』
『ほいきた』
目の前に山のように積まれる各種宝石。
『じゃあ、これでいろいろカットしてみるから』
僕は若干感覚が麻痺しつつ、
宝石をマジックバッグに放り込んだ。
僕たちはワイワイガヤガヤ騒ぎつつ、
ダイヤモンドを中心にどんどんと宝石をカットした。
◇
結局、何十カラットもあるような大きな宝石が
ずらりと並ぶことになった。
眩い光に圧倒されて、なんだか気持ちが妖しくなる。
これに興味を示したのが、大蜘蛛のアレクだ。
『これで宝冠やネックレスとかを飾ると素晴らしいものができそうですね』
アレクは手が器用だった。
それと、デザインセンスも豊富にもっているようだ。
僕が宝石デザインのイメージを伝えると、
次々と宝石デザインを作り上げていった。
『おお、なんとキラビヤカに輝く宝石どもよ。あの石っころがここまで美しくなるものかえ』
リーナのところにもいくつか宝石を献上したところ、
リーナは絶賛の嵐だ。
そもそも龍はキラキラしたものが大好きだ。
彼女の棲家にも、金銀宝石が大量に保管してあった。
『妾も宝石は大量に保管しておる。これらもキラキラに加工してたもれ、いや、妾も宝石加工にチャレンジするわ』
龍のリーナは手先が不器用だ。
龍の姿であろうと、少女の姿であろうと。
当初は加工するたびに宝石を潰したりしていた。
しかし、好きこそモノの上手なりけり。
そのうち様になってきた。
力の加減の訓練になると喜んでいる。
そのうち、宝石単体のみならず、
宝石を大量に使ったティアラとか首飾りとかに
興味がうつり、
みんなで豪華さを競い始めた。
エレーヌ、カトリーヌ、リーノ、パラケル、アレク。
この5人というか、5体が部屋にこもって
何日も不眠不休で加工に熱中するので不気味だ。
しかも出来上がったジュエリーを体中に装着するので、
まるで成金みたいで頭が痛い。
カトリーヌなど、
『限界に挑戦!』
などと体中に大量のアクセサリーをつけまくり、
動けなくなることがあった。
途中で力果てたらしい。
この娘は頭がいいのか悪いのかわからない。
面白かったので、みんなで動けない彼女を
くすぐりまくって楽しんだ。
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