凶暴なヘンシェン鶏1
【凶暴なヘンシェン鶏1】
『坊っちゃん、一角兎と熊ネズミは森の獣としては初歩なんですよ』
『あれで?獰猛すぎない?』
『ええ。次は、ヘンシェン鶏いきましょうか』
『ああ、肉と玉子で有名なやつね』
ハンバーガー効果でステータスが爆上がりしたことで、
みんな意気軒昂だ。
次の獲物はヘンシェン鳥という鶏に似た鳥だ。
わかりやすいように、ヘンシェン鶏と呼ぶことにする。
ヘンシェン鶏は大変美味だ。
味は前世の名産地鶏に匹敵する。
キメが細かく締りがあり適度な歯ごたえで、
ジューシーさの中に旨みとコクがある。
また、繁殖力が強く、卵も繁殖期が来ると
1日1個のハイペースで産んでいく。
ただ、この鶏は凶暴で戦闘力が一角兎よりも高い。
攻撃力はその鋭い嘴で行うが、
何よりも僅かながらであるが、空を飛ぶ。
これがやっかいだ。
しかも、集団生活を行う。
最大100羽ほどの群れをなし、
連携して襲いかかってくる。
決してなめていい相手ではない。
『坊っちゃん、ヘンシェン鶏は接近させたらやばいです。集団で襲ってきますから、四方八方から嘴で突かれて出血多量、というコースになります』
『じゃあ、一角兎や熊ネズミ以上に、中・遠距離攻撃だね』
『ただ、坊っちゃんの盾がありますから、大丈夫だと思いますが』
盾を身につけソリッドエアを発動させると、
ロベルトが全力で剣で切りつけても大丈夫だ。
『でも油断は禁物だよ。1回の攻撃は受け止められるだろうけど、回数が嵩張るとどうなるかわからない』
『確かに。私の剣だと20回ほどで盾の効力がなくなりましたからな』
鶏の攻撃力はロベルトよりも弱いということだから、
もう少し持つだろうけど、
それでも、攻撃を受けないほうが安心だ。
◇
森は奥に行けば行くほど魔素濃度が濃くなる。
それに比例して、魔物・魔獣が強くなる。
ロベルトは、元B級冒険者だ。
20歳ぐらいでB級になったときは、
『未来のS級冒険者』
として、大いに注目されたという。
しかし、何故か女運が悪いようで、
いつも女難に遭うらしい。
女性問題でいろいろやらかして、都にいられなくなった。
と、メイドたちが話しているのを聞いた。
メイドたちからもきゃあきゃあ言われていたが、
本人は朴念仁だ。
ナンパな気配がない。
女癖のほうはわからないが、
狩猟の腕は確かだ。
まず、ロベルトには探査スキルがある。
50mぐらい離れた敵の位置を察知できる。
何かいるな、程度なら風向きが有利なら
数百m先の獲物もわかるらしい。
さすが、上級冒険者(元)。
そして、50m離れていても、
ほぼ百発百中で矢を射抜ける。
凄腕ハンターだ。
『この程度の腕なら、いくらでもいますよ』
とロベルトは言う。
いるわけがない。
謙虚さは時として傲慢に聞こえるぞ。
ただ、僕もまけていない。
火魔法の火球(火の球を飛ばす技)
風魔法の風刃(風の刃を飛ばす技)
氷魔法の氷槍(氷の槍を飛ばす技)
土魔法の硬石(硬い石を飛ばす技)
を覚えて、実践で使いまくっている。
僕の得意なのは風刃である。
30m先で太さ20cm程度の木を切り落とせる。
今回試されるのはエレーヌの攻撃力だ。
彼女は狩猟の腕、特に弓の腕は確かだ。
それは、一角兎を狩るときに実証済である。
彼女は下級貴族の出身だが、
下級貴族の食卓は平民同様、狩猟に依っていることが多い。
彼女も普通に狩りにでていたようだ。
だから、彼女のスキルは、
弓、儀礼、計算、読み書き、水魔法
と多岐に渡っている。
ただ、今回は僅かながらでも空を飛ぶ相手だ。
弓で射抜けるのか。
水魔法はどの程度使えるのか。
魔法については、ロベルトも同様だ。
彼は土魔法が使える。
しかし、生活魔法以下で、使い道がないらしい。
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