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市民に開放されたフードコート

【市民に開放されたフードコート】


『お坊ちゃま、前々から話していた“フードコート”計画、ようやく発進ですか』


『うん。アニエス先生や学院との間では協議が済んでいるし、あとは学園都市の市民の声次第だったんだよね』


 ラテンス・ロコの評判、

 そして学院食堂の噂を聞くものたちから、

 日ごとに一般市民も利用できる場所が作れないか、

 要望が増えてきた。


 これこそが僕たちの待っていた展開だ。

 学院での食堂が期待以上の成果を見せているので、

 アニエス先生も学園都市の体制変革を視野にいれているのだ。


『フードコートは学院内に作るけど、学園都市の住民ならば自由に利用できるようになる』


『学園都市の大商人やギルドからの反発が怖いですね』


『まあ、学園都市に風穴を開けようとしているからね。織り込み済みだよ』


 学園都市においては、食堂一つ新たに運営するだけで

 大変な苦労が必要だ。

 しかし、それは彼らが勝手に設けた制約なのだ。


 自由を標榜するはずだった学院及び学園都市において、

 大商人に占有される学園都市政治や

 自由参入を認められないギルドの存在など、

 あってはならないのだ。



『ようやく、長年の懸案を突破できるわ』


『アニエス先生の悲願でしたものね』


 このような不自由な事態に陥ったのは、

 ここ20年ほどなのだという。

 気がついたときには、雁字搦めになっており、

 容易に解けなくなっていた。


 都市の自由を勝ち取るために大商人が奮闘し、

 大商人に占有される都市政治に参入しようと、

 各種職人ギルドが設立される。

 そういう流れにあるので、

 解きほぐすのが簡単ではない。


『ついてこれない商人やギルドは切り捨てね』


 大改革が始まろうとしている。


 商人やギルドの邪魔には十分警戒している。

 そのために、彼らの身元調査は十分に済んでいる。

 搦手を使うものは、関係する人全てを処断する。

 物理的行使に至るものは、黒狼警察が待っている。


 そして、あらかじめその旨、公言してある。

 果たして、どこまで通じているか。



【フードコート】


『これがフードコートですか?もの凄くオシャレな建物なんですね』


『南・東面が大きなガラスで構成されているのですね』


『あんなガラス製造できるの、お坊ちゃまぐらいじゃないですか?』


『こんな綺麗な建物が学院の高台にあるんだから、見晴らしはいいし、周囲からもよく目立つわ』


『夜はライトアップするからね。観光名所にもなりそうだ』


 イメージは前世日本の僕の住んでいた街にある大学。

 食堂が非常にオシャレだった。

 天井の高さが5m以上、壁面は南・東面ガラス張りで

 実に開放感がある。


 前世日本においてもモダンな建築物だ。

 この世界では飛び抜けた空間になる。

 中世風の建物が居並ぶなかで浮かないか心配だったが、

 昔と今がお互いに美観の不思議な相乗効果をあげている。


 このイメージを伝えるために作った魔道具が、

 映像記憶プリンターである。


 古代人でおそらく日本からの転生者である

 レイ・カトウさんがマンガ等を出力するために

 開発した魔道具だ。


 僕の前世の記憶をこれで出力してみると、

 案外使える画像が出力されてきた。

 歪んでいたり、ぼやけていたりするが、

 イメージを伝えることができればいいのだ。


 建物自体がこの世界ではチートなものになる。

 南・東面は大きな板ガラスの組み合わせで構成される。

 これほどの大きなガラスを生産できるのは、

 僕以外にはいないだろう。


 多少の攻撃ならば傷一つなく跳ね返すことができる。

 一般人の体当たり程度ならば、びくともしない。

 このガラスを破壊できれば、王国魔導師として一流、

 そういい切ってもいいぐらいだ。


 建築は僕が中心となる。

 この世界では建築は土魔法で簡単に立ち上げてしまう。

 あまりお金がかからない。

 構造計算もあまり関係ない。

 建物強度は魔法強度に比例するため、

 ありえないような造形でも建築可能だ。


 しかし、構造を無視しないに越したことはないので、

 ある程度の補強は行う。



 その2階にはアミューズメント・スペースを設けた。

 フードコートを利用した人が利用できる。


『ねえ、フードコートの2階、見に行った?』


『ええ、“ビデオ”ってヤツよね』


『ええ。冒険者たちってあんなにかっこいいのね』


『凄いよね、冒険者のトップランクって。恐ろしい魔物を一刀両断!』


 中での最大の驚きは“動画映像”である。

 ようやく、ビデオ撮影魔道具が完成し、

 そのモニターも合わせて製造したのだ。


 モニターサイズは縦横50cmx1m程度、

 50インチぐらいの大きさだ。


 このモニター、適当な台数を設置する。

 イメージは大きなスポーツバーだ。

 このスペース内でも飲食ができるようにしてある。


 ここで、例えば学院のクラス対抗戦とか、

 冒険者の冒険活動とかを流すわけだ。


 特に冒険者の映像には一般市民は大興奮だ。

 魔獣・魔物との戦闘や森の奥などは、

 普通は無縁なのだ。


『1階も凄い混雑してるんだけど、2階はもっと凄いよね』


『みんな大興奮だよな』


『あのビデオのお陰で冒険者ギルドのランク分けも納得できるし』


『ていうか、C級でも凄いな』


『C級になると特別の才能が必要だって言われるらしいけど、それわかるわ』


『B級とかA級とかになると、まさにスペクタクル!って感じで大興奮だもんな』


『私、A級冒険者の○○さんのサインもらっちゃった!』


『あ、一番人気の?羨ましい。それ、いま凄い高値なんだぜ』


『俺なんか、○○さんの使ってるブーツのレプリカでバッチリよ』



 ビデオの迫力映像にみんな大歓声をあげる。

 出演した冒険者は一躍有名になって、

 街を歩こうものならサイン攻めだ。


 中には冒険者のスポンサーになって、

 商品を宣伝するものもでてくる。

 現状は僕たちはその活動にはノータッチだが、

 将来的にはなんらかの枠組みを作る必要があるだろう。



 コンテンツはもうひとつある。

 そのスペースでミニライブを開くのだ。


『ミニライブもいいよね』


『うん。吟遊詩人さんとか教会の聖歌隊とか出てるけど』


『なんといっても、南国ダンスシスターズよね!』


 ここでは吟遊詩人などが技能を競い合うコーナーがある。

 投票制度があり、毎週ベスト10を発表している。


 生ライブもあるが、人気歌手は映像でも流している。

 ここで一番に人気があるのが、

 南国のダンスシスターズである。


 特に、あの中毒的な手拍子。

 会場全員が合わせて手拍子をしたり、踊ったりし始める。

 独特の熱狂空間となる。


 2階の床はきっちり強固魔法と結界魔法をかけているのだが、

 それでも熱狂の度合いがましてくると、

 1階にもドンドンと音が漏れてくるぐらいだ。

 それが1階のお客さんたちを誘い、さらに熱狂の渦へと邁進していく。



ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

励みになりますm(_ _)m

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