学院食堂の本格化
【学院食堂の本格化】
『ねえ、食堂のお昼ごはん食べた?』
『食べた!美味しすぎ!』
『感激して泣いてる人もいたわ』
『ああ、わかる。あれはチキンバーガーっていうのね』
『フライドチキンをパンで挟んだだけなのに、どうしてあんなに美味しいのかしら』
『ていうか、パンもフライドチキンも野菜もソースも美味しすぎるわ』
『ラテンス・ロコに納入している業者さんの食材だって』
『あんな高級食材を使ってるの?食事代は変わんないよね?』
『うん。今まで通り』
『炭酸ジュースもついてくるのが嬉しいわ』
『あれ、“ドルチェ”で売ってるのと同じらしいわよ』
『うそ、あれって美味しいんだけど結構値段するよね?』
『銅貨5枚だった』
『すごいお買い得のお昼ごはんよね!』
学院食堂の改革のため、まずは生産体制の整備から始めた。
それが、去年のこと。
1年近く経って、生産体制が整ってきた。
ヘンシェン鶏の鶏肉・卵ともに十分な生産量を供給できる。
水牛による乳製品も同様。
小麦は冬小麦がそろそろ収穫期だ。
森猪と魔牛は秋以降になる。
だから、第1段としてチキンバーガーを提供開始したのだ。
漸次、メニューが増えていく。
◇
『どうかな、調理のほうは』
『はい、順調です。というか、料理魔道具で作り置きしてマジックバッグで保管しておくだけなので、すっごく楽になりました』
学院食堂の特徴は、料理魔道具を大量に投入したことだ。
誰にでも作れる、それを目指したのである。
そのために、気温・湿度を一定に保つ制御室を
調理場として使用している。
勿論、熟練シェフが作るものには及ばない。
しかし、王国基準で考えるならば、
遥かに水準の高いものを作ることができる。
『しかし、この料理魔道具、えらく高性能ですな』
『分量の食材をセットしておけば、自動的に完成ですもんね。これでは私らは料理人じゃないですね』
『材料の下ごしらえと材料投入、料理の盛りつけぐらいですかね。することといえば。全自動というわけにはいきませんが、料理の大切なところは魔道具まかせになりますな』
料理魔道具は、
ステーキ、ハンバーグ、とんかつ、フライドチキン、
唐揚げ、テリヤキチキン、豚の角煮、ビーフシチュー、
チャーシュー、野菜の肉巻き、青椒肉絲、酢豚、
豚の生姜焼き、焼き鳥、ハンバーガー、全粒粉パン。
各種サラダ用ドレッシング
ゴマ、オニオン、レモン、シーザーサラダ、ベーコン、
マヨネーズ、醤油、テリヤキ、タルタル、ウスターソース。
炭酸飲料。
甘味は麦芽糖。コストカットのため。
などがある。
まあ、僕の食べたいものが並んでいる。
いずれの料理魔道具はマジックバッグの機能付きなので、
料理が劣化しない。
『腕のほうはラテンス・ロコで磨いてもらうということで』
『ラテンス・ロコの料理人の半分が学生食堂に順繰りに回されるんですが、良し悪しがありますよ』
『ラテンス・ロコはピリピリした環境で息がつげないですが、こちらは量が多いですから肉体的な疲労感はありますね』
『結局、食材業者はラテンス・ロコのを使うわけですね』
『ええ、新たに広く募集したんですが、外部の業者はレベルが低すぎました』
『あたしのところにもどうにかしてくれって畜産業者から頼まれたことがあるんですが、あたしらの扱っている食材を見せたら黙って帰っていきましたよ』
『でしょうな。レベルの差がありすぎて文句をつけるどころか、付け入る隙間が全くありません』
『もともと学院の食堂で働いていた人とか、新たに雇い入れた人はしっかりやってますか』
『もう料理人というよりもサーバー係あるいは機器のメンテナンス係になってますけど、一生懸命やれば“ラテンス・ロコ”の料理人への道ができるとあって、みんな真剣ですね』
『“ラテンス・ロコ”で修行できたら、名誉になるし、自分のキャリアを彩ることになりますからな』
◇
学院食堂の料理はラテンス・ロコには及ばないが、
既存の料理より圧倒的に美味しい。
しかも、今までの食堂価格であるため、
懐の寂しいものでも利用できる。
ただし、こちらは学院生徒と教職員以外は
利用できない。
利用者は月末までに一ヶ月縛りで利用申請する。
それに基づいて材料を仕入れる。
例外を認めるほど、材料に余裕がないのだ。
他の動きとしては、
生産している村から人員を出してもらい、
仕入れ専門の商会を設立することにした。
南国の市場からの産物購入を含む。
この商会はやがて業務をどんどんと拡大していき、
やがては王国一の大商会となっていく。
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