ボンズとカトリーナ
【ボンズとカトリーナ】
『ボンズ、ラテンス・ロコ、どうだった?』
『ビビったぜ。両親も陶酔してたよ。まあ、お陰で親孝行ができた。ありがとうな』
ボンズの父親は王国騎士団の副団長だ。
多忙ななか、奥さんとボンズに会いに来たのだ。
だから、特別枠でラテンス・ロコの席を取ったのだ。
『しかし、あれがおまえの“料理人”としての能力か。おまえは色々と能力がとんでもないが、あの料理には心底驚いたぜ。カトリーヌがジュンの家で料理の修行してるってのもうなづけるな』
『あの料理を食べたら、もう他の料理は食べられないわ。だから、食材をわけてもらって、うちのシェフに私が仕込んでいるの』
『はあ、伯爵令嬢様のおまえがか。実家じゃ嘆いてるんじゃないか?』
『最初なんか言ってたんだけど、私の料理食べさせたら何も言わなくなったわ。それどころか、実家のシェフまで私に指導させてるぐらいよ』
『お土産にもらったチョコレートケーキもとんでもない代物だってな。あれ、幻のスィーツとか言われてて、王国中の金持ち垂涎のものだっていうじゃないか』
『うふふ。あれ、私が作ったの』
『なんだと。カトリーヌ、おまえ貴族を追放されてもパティシエか料理人で天下とれそうだな』
『あのさ、君たちに来てもらったのは、来年度のこと話しておこうかと思って』
『来年度か。噂によると、ジュンは2年で学院を卒業して講師になるって話だな』
『あれ、耳早いね』
『学院で知らないものはいないぞ』
『そうなの?先生たち、口が軽いなー。ま、いいけど。でさ、担当するコースは、古代語上級、古代ナード語、実践魔法の3つの予定なんだ』
『新人のやる講座じゃねえな』
『そうだよね。しかも、同級生に授業するんだからさ。学院も少し忖度してほしいよ』
『まあ、少なくとも今の2年生でジュンの実力を疑う子は誰もいないわよ』
『ありがとう。そう言ってくれると気が楽になる。でね、アニエス先生と話しあったんだけど』
『ほう』
『将来を見越して、積極的に人材を生み出していこうかと』
『積極的にか』
『ああ。その対象の1号として、君たち、ボンズとカトリーヌ、それから、アレシア、アデール、ガイルの5人を選んだわけ』
『おお、それは光栄だな』
『ひょっとして、E組の人材育成の秘密、私達にも教えてくれるってことかしら?』
『ああ、そうなんだよ。今までは極力秘密にしていたんだけど、少しずつ開放していこうかと思ってね』
『そりゃ、ワクワクするな』
『君たちはすでに鉄の誓約が済んでいるし、いろいろ秘密も見せてきたよね』
『ああ』
『アニエス先生と僕は考えた。これは、世の中を変革できるって。この学園都市でも閉塞感あるでしょ?』
『そうよね。食品関係のギルドが25もあるって聞いたときは驚いたわ』
『歴史的な経緯があっての25のギルドだから、結構もつれてるんだよね』
『うん、わかるぞ』
『僕たちはそのもつれをほぐす、あるいは破壊したいわけ』
『ほう。過激だな』
『だからね、今後恨まれることも多いだろうし、毀誉褒貶が僕たちに降り掛かってくる。それを理解したうえで聞くけど、更に秘密を覗くつもりある?』
『私は何を今更って感じよ』
『なんだか、禁断の果実って感じだな。でも、のっかるしかないだろ。あの古代魔道具みたら、ジュンの言葉にうなづかないわけにはいかないもんな』
『じゃあ、このジュース飲んでみて』
『?……普通に美味しいジュースだが?』
『自分のステータスを見てご覧』
『なになに……なに、これ。+20って』
『それが、僕の料理の秘密。エンチャント効果』
『ジュンの料理を食べると、ステータスが増加するっていうの?』
『ああ。効果は1週間ぐらいだけど、その間に訓練すれば基礎ステータスも少しずつ向上していく。それと、各種異常耐性もついてくるよ』
『なんと!それでか。元E組の連中が急激に能力を上げたのは』
『最初は隠しておくつもりだったんだけどね。なんだか、話の流れでああなっちゃって。でも、こんなスキルはほいほい見せて良いもんじゃないことはわかるだろ?』
『そうね。いい意味でも悪い意味でも』
『なるほど。城絡みを考えるとよくわかる』
『このスキルは、古代ナード語選択した生徒には公開する予定』
『対象学年は?』
『来年の3年と2年生。3年生は君たち5人。2年生は選別しているところ』
『古代ナード語に興味のある人は多いけど、あの漢字見たらすぐにお手上げよね』
『そうなんだよ。学習意欲さえあれば、なんとでもなるんだけど、普通の学習意欲ではムリだから』
『で、エンチャント効果はどの程度まであるんだ?』
『最大+200』
『え、凄すぎるわ』
『この効果を享受できてるのは、少ししかいないけど。元E組は最大+100まで。それも1年のときの一時期だけで、3年になったら+20にする予定。卒業後のことがあるからね』
『なるほど。いつかは独り立ちすべきだもんな』
『古代ナード語でも最大+100にする予定だけど、研究者になるような人材だったら、+200にする』
『+200?一気に王国トップクラスの能力の持ち主になるわね』
『だね』
『これは来年度が楽しみだぜ』
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