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美味しい食事を1 学園都市とギルド

【美味しい食事を1 学園都市とギルド】


 かねてから、僕はこの国の食生活を変えたいと思っていた。

 転生に気づいて初めて食べた城の肉。

 臭くて食べれたものじゃなかった。

 あれでは、不味いうえに健康にも良くない。


 それと、大きなことを言えば、

 食文化は一人だけでできるものじゃない。

 文化はみんなで育てていくものなのだ。


 食のバリエーションは“料理人”だけでは

 いつか限界がやってくる。


 “美味しい食事を”

 この名のもとに、少しずつでもこの世界に貢献していこう。



 そこで、焼肉屋開店について、

 アニエス先生に相談することにした。


 お土産はデザートはチョコレートレアチーズケーキ。

 レアチーズケーキとチョコレートレアチーズケーキとで

 ケーキを2層にし、

 トップにグラサージュ(コーティング)用の

 チョコレートを流し入れたもの。


 飲み物は紅茶。

 チーズケーキにはコーヒーだと思うんだが、

 この世界では見つからない。


 ただし、ミルクで直接紅茶を抽出する。

 最近はこの方法でミルクティーをを飲んでいる。

 紅茶のエグみがなくなるからだ。

 そこにレモンを垂らしている。



『焼肉の食堂を出したいって?うーん、ちょっとおすすめできないわ』


 アニエス先生にこう説明された。


 学院に隣接する学園都市。

 自由を標榜するわりに、食品関係のギルドが

 なんと25も!ある。


 各ギルドは以下のような職能で分けられる。

 肉を焼く、鶏肉を売る、内臓肉を扱う者、ソースを作る者

 煮込み料理を売る者、酒を売る者など。


 このようにまるでひと動作ごとにギルドがある。

 そのような細かすぎる職能でギルドを作り

 自分の領分を守り合っていた。


 学園都市は自由都市である。

 表向きには、王国直轄の都市であるが、

 莫大な金を城に貸し付けていた。

 そのかわりに自治権と税免除を勝ち取っていた。


 誰が治めるかといえば、現代日本のように、

 学園都市に市議会があった。

 この市議会、当初は商人ギルドであった。


 商人が相互扶助も目的で組合を作ったのだ。

 それがやがて学園都市の中核を担うようになり、

 市議会として学園都市を治めるようになったのだ。


 市議会の代表は、5人の大商人であった。

 5人の大商人が商人ギルドを作り、

 政治を牛耳っていたのである。


 これに対して、職人たちが不満を持つのは当然である。

 自分たちも政治に参加させろ。

 そこで職人たちは職能ギルドを作り始めた。

 それが嵩じて食品関係でも25のギルドができたのだ。


 自由を得たのに、自分で自分を縛り上げてしまう。

 自縄自縛であった。


『25の権益を突破するのは大変よ。最悪、命を狙われるわね』


 僕でも簡単に想像できた。

 どういう抵抗に遭うか。


『こうしたらどうかしら。学院の食堂を改革していくのは』


『学院の食堂ですか』


『ええ。学院ならギルドの力は及ばないわ。それに、私も少しだけど力があるし』


 僕はこのときにははっきり理解していなかったのだが、

 アニエス教授の学院での地位は影の統率者、

 と言ってもいいぐらいだった。


 学園都市の収入は、

 学院の研究に基づく道具やノウハウの販売で拡大した。

 学園都市は、学院によって成り立っているのだ。


 そして、その貢献の半分がアニエス教授によって

 もたらされたと言われている。


 アニエス教授は、年齢不詳、

 噂によると、100年以上この学院に在籍している。


 数百年の歴史があると言われる学院において、

 彼女は開校以来の才能と謳われ、

 数々の伝説を作ってきた。


 生徒のときに、魔道具防具を壊した唯一の存在であり、

 2年終了時に飛び級で学院を卒業、

 そのまま学院の研究者となった唯一の生徒である。


 それ以来、毎年画期的な研究成果を発表。

 ただ、政治に興味がないので、学院長にはならない。

 が、学院長よりも権威がある。


 一節によると、アニエス教授が関わると、

 即座に学院が倒れるとの噂もある。

 彼女の持つ経済効果故のみではない。


 普段は、彼女は政治嫌いの研究バカである。

 が、ときどき台風のような猛威をふるう事がある。

 彼女は政治的に音痴ではない。


 的確に淀みをついて、

 状況を根本的にスクラップビルドしてしまうことが

 過去に何度もあったそうだ。


 それが数十年おきに行われる。

 現在の学院・学園都市の中枢メンバーは、

 彼女の荒ぶる姿を一度は見ているのだ。


『それとね、これはアフレコなんだけど。実は学院から貴方の処遇について相談されてるのよ』


『僕の?なんか、やっちゃいました?』


 思わず、前世の流行り言葉で反応する僕。

 心当たり、ありまくりだけど。


『やっちゃいすぎなの。貴方が方々で優秀さをみせつけているから、先生方が貴方を扱いかねてるのよ』


『うーん、目立たないようにしてるつもりなんですけど』


『まあ、確かにそういう努力は認めるわ。でも、殆ど効果なしね』


『ははは』


『学院としては、2年生で卒業案が出てるわ。私もそうだったし、過去に結構いるのよ、2年生で卒業する生徒』


『正直言うと、僕はアニエス先生と討論するだけが学院での楽しみです』


『卒業案どころか、現状で講師やってくれないか、とも言われているのよ。私が受け持っている古代語講座、貴方が引き受けてくれると助かるんだけど』


 ああ、アニエス先生は研究に没頭したいからな。


『いや、突然言われても』


『まあ、そうよね。でも、来年は引き受けてよ。ちゃんと整理しておくから』


『はあ』


『で、今年度は学校の食環境を改善する。どう?』


『それは、是非ともやりたいです』


『じゃ、決まりね。それとね、学院にお菓子屋さんを作って欲しいわ。これは私の単純な希望よ』


 

ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

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