怒涛のお菓子作り チョコレート・スィーツ
【怒涛のお菓子作り チョコレート・スィーツ】
『さーて、チョコレートを使ったお菓子。無限にレシピが沸いてくるぞ』
『最初に作ったチョコレートより美味しいのがあるの?』
『あれはあれで美味しいんだけど、もっと凄いのがあるよ』
『じゃあ、それ』
僕は、カカオから分離させたココア粉を
水牛ミルク・シーナ砂糖で練りながら、
メニュー案を考える。
『このココアはテカりが出るまで練って、ホットミルク投入』
『チョコレート飲料ね。飲み物の中で一番好きかも』
『冷やしてもいいよ』
ちなみに、水牛ミルクは、
お祖父様の領でとれたばかりの製品だ。
魔石飼料・魔石肥料が上手く稼動している。
『じゃあ、早速いってみようか、“ザッハトルテ”』
チョコレートケーキの中でも最も見栄えのいいケーキ。
チョコレートケーキがつやつやのチョコレートで
コーティングされている。
シルクのような艶は高貴ささえ感じられる。
作り方は、チョコレート・スポンジケーキを焼き、
スライスして上下に分ける。
この間にアプリコットジャムを塗るのが本当らしいが、
僕は南の島で買ってきたマンゴスチンのような果物を
ジャムにしてみた。
砂糖を大量に投下したせいか、それとも加熱したせいか、
りんごジャムみたいな味だ。
そして、コーティング用のチョコレート。
溶かしたチョコレートに生クリームを投下。
気泡が入らないように、慎重に。
そして、スポンジケーキに豪快に流しかける。
『うわっ、なんてゴージャス!』
『つやつやの見た目に吸い込まれそう』
『こうなると暴力とさえいえるわ』
『はやく我に食べさせんか』
『『『ワフ!』』』
黒狼たちよ。
涎を垂らさないでくれ。
1作めが上手くいったので、
他の3人にも作ってもらった。
すでにスポンジ作成で基礎はできている。
あとは、如何にキレイにコーティングできるか。
応用編で、ココアパウダーをふりかけたり、
粉砂糖をふりかけたり
赤いラズベリーをのっけたり。
◇
こうなると、包装にも凝りたい。
つまり、人様に贈り物として渡す時の見栄えにも凝りたい。
王国では紙は貴重品である。
だからこそ、見栄えのするコストのかかった紙も多い。
贈り物文化も盛んであるからだ。
まず、箱には白色を選び、
包装紙にも純白の紙をわざわざ作ってもらった。
純白の紙の製造には高い技術力が必要だ。
その分、非常に高価な紙になる。
そして、赤いリボン。
シルク製で色艶がいい。
これで図書館へ突撃だ。
『私に贈り物?あら、豪華なラッピングね!』
そして、中身を取り出すと、
『まあ、なんて素敵な色艶』
『チョコレートっていう僕が開発したお菓子を使いました。別名ザッハトルテって言います』
勿論、チョコレートは僕が開発したものじゃない。
前世の人たちが長年に渡って大変な苦労をして、
あのような形にしたのだ。
『ちょっと、この美味しさ尋常じゃないわね。ジュノーくんの持ってきてくれるお菓子は全部美味しすぎるんだけど、これは甘さに苦さが加わってとろけるわ』
『自信作です』
『これ、命令よ。毎日、このケーキを持ってくること』
『はは、ドリンクにホット・チョコレートもありますよ。今は暑いから、アイスにして飲みましょうか』
『まあ。ぴったりね!』
◇
ザッハトルテは我が家の定番となった。
ただ、最高のものでも毎日では飽きる。
『飽きないわよ!』
『我には毎日1ホールをよこせ』
『『『ワフ!』』』
カトリーヌとアンガスがずうずうしいのは
今に始まったことではないが、
黒狼軍団もますます親分に似てきている。
カトリーヌも明らかにアンガスに似ている。
言葉がきつかったり、
オープンな物言いで敵を作りそうなものなのに、
不思議と憎めない。
人徳か育ちの良さか。
他にビスケットにチョコレートコーティングしたもの。
フルーツグラノラのチョコレート味。
グラノラ・チョコレート味をバーにして固めたもの。
スフレチョコレートケーキ。チョコバナナ。チョコプリン。
などと様々なレシピでチョコレートスィーツの
バリエーションを増やしていく。
◇
超弩級お菓子はチョコレートだけではない。
牛乳、卵黄、生クリーム、砂糖で作る冷たいお菓子。
アイスクリームである。
素材はばっちりだ。
魔石飼料で育てた水牛または魔牛のミルクと生クリーム。
ヘンシェン鶏の卵黄。
シーナ糖。
前世でもこれだけの材料は揃えられないだろう。
そして、製作上のポイントの一つは、
いかに冷凍中にかき混ぜて、
アイスクリームに滑らかさと空気を含ませるか、である。
ここをしっかりやると、とろけるような軽さを持った
アイスクリームが出来上がる。
『あまーい!とろける!』
『この季節にぴったりね!』
『ふふふ、夏だけじゃないよ。冬の凍てつく寒さの中、暖房の効いた部屋で食べるアイスクリームは最高だよ』
『ああ、上級国民って感じする』
『これにさ、とろけるチョコレートをかけると……』
『うわっ、ゴージャス!』
『黒白のコントラストが素敵!』
『果物もいいよ』
『ああ、ラズベリーとか映えそうですね』
『桃、バナナ、マンゴーなどのねっとりとしたフルーツも味的には相性が良さそうですな』
『ロベルトのために、とっておきがあるんだ』
『なんでしょう』
『ラムレーズン。砂糖から作った蒸留酒ラムでつけこんだレーズン。これをアイスクリームに』
『おお、確かに大人の味ですな!』
『ええ、私も欲しい』
『子供はダメ』
『子供って、貴方も私と同じ年でしょ!はやくよこしなさい!』
『ちょっとだけね』
『ケチ!……ああ、ホント。これも美味しすぎる。もっとよこしなさいよ』
『酔っ払うぞ』
『こんなので酔うわけないでしょ!ワインなら12歳ぐらいから飲んでるわよ』
『え、早すぎない?』
『みんなだいたいそれくらいの年齢でワイン飲み始めますよ。お坊ちゃまもドワーフのところへ行ったの、10歳のときですよ』
『ああ、そういえば』
前世の記憶があるし毒(酒)耐性があるから飲酒は平気だけど、
この国では格別早すぎる、というわけではなかったんだな。
だから、僕がエールとか飲んでも何にも言われなかったわけだ。
エールやワインは質の低い水かわりに飲まれているからな。
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