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チョコレート2

【チョコレート2】


『カンカン!』


 ボーっとしていると、緊急を知らせる鐘が。


『出たぞー、クラーケンだ!』


 ああ、イカの魔物か。

 どこにいるんだろう。

 見張り台から望遠鏡で覗いているから、

 海中の魔物も見えるのだろうか。


 そう思っていると、


『坊っちゃん、私の探査に現れました。3時の方向。距離300』


 ロベルトの探査スキルは森だと距離200。

 海だと障害物がないから、遠くまで見通せる。


 すぐに、僕の探査スキルにも赤点が表示される。

 目視でも海の表面にでかい影が見える。

 高速でこちらに向かっている。

 敵が水中だと勝手が悪い。



 こちらは、傭兵が甲板にあがって、

 迎撃態勢を取っている。


 敵はあっという間に距離を詰め、

 とうとう水中から姿を現し、

 船に絡みついてきた!


『雷槍!』

 

 僕は奴の胴体向けて、風(雷)魔法を放った。

 魔法の威力は強く、クラーケンの胴体半分が吹っ飛んだ。


『おお!』


『坊主、助かったぜ!』


『凄い威力だな。雷魔法?』


 クラーケンの手はまだ船に絡みついている。

 破壊された胴体から嫌な臭いがしてくるので、

 みんなで水魔法をぶっかけ、掃除する。


 ◇


『カンカン!』

 

 またか。

 危険をしらす鐘が鳴り響く。


『槍飛魚の群れだ!』


 トビウオに似た、

 口の先端に鋭い槍をそなえた魚だ。

 体長は1mぐらいある。


『奴らが船に穴を開ける前に迎撃せよ!』


 おお、今度は数が多い。

 黒い集団がこちらに高速で接近してくる。

 

『みんなでいくぞ!』


 僕は3人にハッパをかける。

 左側面から、物凄い勢いでこちらに飛んでくる。


『氷槍!』『ストーンブラスト!』『フレイムウェイブ!』


 それぞれが得意の攻撃を仕掛ける。

 それぞれ範囲攻撃なので、

 一度の攻撃で何体も海中に落ちていく。


 僕は、お得意風刃をバージョンアップさせた攻撃だ。

 僕の探査スキルに引っかかる敵をターゲッティング。

 一気に敵を殲滅する。


『イージスの盾!』


 一度に100の風刃が飛び出す。

 あっという間に敵が殲滅されていく。

 戦闘は数分で終結した。



『おまえら、凄いな』


『ああ、クラーケンに引き続き、本当に助かったぜ』


『海のもずくになるところだったわ』


 それにしても、海がこんなに危ないとは。

 周りに聞くと、今回は運が悪かったようだ。

 

 その後は、海も穏やかで魔物の襲撃もなく、

 無事に南の大陸に到着した。

 総行程は3日だった。


 ◇


 南の大陸は、非常に暑い。

 そのせいか、住んでる人は少ないし、

 文明も遅れているという。


 市場には様々な珍しい食材が売られている。

 

『果物の王様だよ。一度食べてご覧よ』


 実は、船上にいる暇な時間に現地人と

 現地語の練習をした。

 僅か3日の間だが、僕は日常的な会話程度なら、

 ほぼ問題なくできるようになっていた。


 前世の僕なんか、いつまでたっても英語が上達しなかった。

 前世では考えられないような頭の良さである。

 

『じゃあ、一切れ頂戴』

 

『あいよ!』


『なにこれ!雑巾のニオイ!』


 カトリーヌは思いっきり顔をしかめる。

 でも、味は濃厚で甘く、クリーミーなカスタードのようだ。

 確かに果物の王様と自慢するだけはある。

 

 あと、アームラ(マンゴー)。

 非常に安い。

 王国からみると、1/10以下で売られている。

 

 喉が乾いたら、ヤシの実ジュース。

 穏やかな甘さだ。


 その他、初めて見る果物にあふれている。 



『カカワトルの実はないか?』


 売っていた。

 ただ、あんまり評判は良くないようだ。

 一個大銀貨1枚。だいたい1万円ぐらい。

 人気がないのに、あんまり安くない。

 まあ、王国だと金貨5枚、約50万円だけどな。


『珍しいし、好きな人には受けるんだよ』


 なんだそうだ。


『じゃあ、10個頂戴』


『へい、毎度!』



 このあと、少し市場や街をぶらついたんだが、

 興味深いストリートパフォーマンスをしていた。

 南国のダンスシスターズである。


 ダンスはともかく、音楽が強烈だ。

 前世にヌスラット・ファテ・アリ・ハーンという歌手がいたが、

 ああいう感じで、手拍子が熱狂的だ。

 聞いているとトランス状態になってくるのだ。


 周りの聴衆も合わせて手拍子をしたり、踊ったりし始める。

 独特の熱狂空間となる。


 ◇


 カカオの実を買ったら、

 あとは目につく果物とか買い漁って、

 僕は郊外に出て、森に入った。

 拠点を作るためだ。

 

『お?』


 森に入った瞬間、植物の枝が伸びてきた。


『食肉植物?』


 噂には聞いていた。

 南の島には人を食べる植物魔物がいるってことを。


『ファイアフレーム!』


 僕はとっさに火魔法で焼き払った。

 山火事になるから、僕は森での火魔法は

 あんまり使わない。


 でも、いいよね?

 僕たちはうっかり食肉植物の群れに迷い込んだようだ。


 

 それからは4人で必死に火魔法で周囲を焼き払った。


『はあはあ』


 あんまりの突然の出来事だったため、

 みんな精神的に疲弊したようだ。



 ちょうど森を焼き払って、適度な広さの空き地ができた。

 ここに拠点を作ることにする。

 拠点作りは数分でできる。

 それから、周囲に食肉植物がはびこらないように、

 空き地の地面を硬化魔法でガチガチに固めておいた。


 それからは、拠点に転移魔法陣をしき、

 転移して家に帰ってきた。



『転移魔法陣なんて、きいてないわ!』


 あっ、カトリーヌには話していなかったか。


『うっかり忘れてたよ。これがアニエス先生と僕の超弩級の研究成果さ』


『以前話してたのって、これ?ホントね。魔素バッテリーの話もすごかったけど、これには度肝を抜かれたわ。こんなの世間に広まったら、戦争が始まるわよ!』


『うん。だから、黙っていてね』


 鉄の誓約をしているから、しゃべることはないと思うけど。


『しゃべるわけないわ。こんなの危なすぎる』


 ◇


 さて、家に帰るなり始まった、チョコレート作り。

 魔道具が準備できているから、

 カカオの実をペースト状にするまでは難しくない。

 でも、次のテンパリングがやっぱり難しい。


 慣れるのに、1週間はかかったのだ。

 その後もほぼ毎日チョコレートを作り、

 腕を磨いていった。


 大量のチョコレートはどうしたか。


『うむ。今日の分、待っておったぞ』


『『『ワフ!』』』


 アンガスと彼の仲間たちが、

 尻尾を振りながら待っているのである。

 彼の仲間、体長2m強程度の通常サイズの黒狼たちだ。

 千を越える仲間がいるらしい。


 アンガスはそのうち見込みのあるのとか、

 何かの成果をあげたものを僕の家に呼んでいる。

 表彰式みたいなものだ。


 アンガスから“下賜”されるもの、

 つまり褒美が僕たちの料理なのには少し引っかりを感じる。

 でも、黒狼たちが盛大にしっぽを振って料理を食べるのは、

 癒される光景だ。


 黒狼たちもアンガス同様、当初は肉に大喜びだったが、

 そのうち風呂に目覚め、炭酸ジュースを飲むようになり、

 今はチョコレートが一番のお気に入りだ。


 ちなみに、お風呂については黒狼専用のものを用意してある。

 露天風呂のほうでだ。

 さすがに、石鹸やリンスは用意できない。

 


ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

励みになりますm(_ _)m

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