表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/122

ルオハンの実1

【ルオハンの実1】


 僕が重曹を売りにいく薬師と話していたときの話。


『重曹持ってきてくれて大変ありがたいんだけど、それだけの腕があるなら、砂糖はどうかな』


『砂糖?』


『ああ。森の奥にルオハンの木というのがあってね。その実がもの凄く甘いんだ。場所はわかってるんだが、何しろ魔物が強くてね。簡単には採れないんだよ。持ってこれたら、超高値で買い取るよ!』


 ほう。そんなものがあるのか。


『お坊っちゃま、いくっきゃないですね!』


 甘みと言えば、エレーナだ。


『坊っちゃん、砂糖の木、シーナ糖よりも甘そうですよ!』


 ロベルトもかなりの甘党だった。

 シーナ樹林は春先しか収穫できない。

 砂糖の採取に不安があったところだ。


『場所はわかってる。学院から近いし一度行ってみよっか』



 場所は学園都市の西の方角にある森。

 その中に流れる川を辿っていくと、滝がある。


 その滝を登れば、ハオルンの群生地がある。

 ここからは200kmほど離れているそうだが、

 僕たちの脚なら1日でたどり着けるだろう。

 帰りは転移魔法陣だ。

 1泊2日の行程を組めば、週末に楽々やれそうだ。


『ただ、そこに巣くってるのが、亜竜なんだよね』


 亜竜、別名ワイバーンである。

 二本の脚、コウモリのような翼を持ち、翼の先に鋭い爪、

 尻尾の先は矢印のようなトゲがあり、そこに毒がある。


 体長5m程度、翼長は10mほど。

 空をとぶため、非常にやっかいな魔物だ。

 街に現れれば、軍隊出動案件になる。


 勿論、A級レベルの魔物になる。

 カトリーヌも行きたそうであったが、

 遠慮してもらった。

 薬草採取とはわけが違う。



『ワイバーンさ、空を飛ぶから攻撃は僕、二人には守備担当でいいかな』


 僕の風攻撃は対象を追尾する。

 太い柱も切断するから、

 おそらくワイバーンにも通用するだろう。


 盾係の二人のために、新しい盾を作成した。


 これには風魔法ソリッドエアを組み込んである。

 防御系の中級風魔法で、

 盾を持ったものを空気の壁で覆う。

 防御するというよりも、攻撃力を吸収する。


 盾自体は土魔法でガチンガチンに防御力を上げてある。


『それでいきましょう。というか、それしかないですな。ワイバーン相手だと私らは分が悪いです』


 ◇


 準備万端、森に向かう。


『お坊ちゃま、この案件でよく冒険者パーティが壊滅したっていう話ですけど、理由がわかりますね』


『だね。凶悪な魔物・魔獣が多すぎる。どんどんとつっかかってくるんだもんな』


『めんどくさいのが、森狼・グレイウルフですね』


『集団戦で絡んできますもんね』


『ロベルトの探査範囲が200Mあるから事前に察知できるけど、僕だと100Mぐらいしかないからかなり際どいね』


『100Mですと、探知したと思ったら、直後に目前に現れますもんね』


『ですな。100Mだと3秒ぐらいで接近してきますね』


『囲まれると、波状攻撃で攻めてくるから、盾の防御もそのうち効果が切れちゃうんだよね』


『その前に木に登るが肝心ですよね』


 囲まれないならば、木に登って、そこから攻撃。

 こうなると、一方的に排除できる。


 しかし、囲まれてしまうと、やっかいなことになる。

 三方を盾で防御して、襲ってくる敵にチマチマ対処する。

 

 相手の数が少なければ、二人が盾、一人が攻撃、

 というふうになるんだけど、

 相手は10匹以上いるうえに、連携も上手い。


 そして、ボスは少し離れたところで指揮する。

 波状攻撃で襲いかかられて、防御で精一杯になりがち。

 こうなると、数十分は戦闘しなくてはならない。



『あと凶悪なのが、グリーンスネーク』


『大きさなら、王国随一、イエロースネークより大きいですよね』


『しかもグレイウルフより素早いときている』


『ロベルトが探知したら、もう目の前にくる感じで、退避できないよね』


『こいつは単独行動なのが幸いですな』


『うん。大慌てで盾を構えても突っ込んでくるだけだから防御はし易いね』


『まあ、あの大口に飲まれたら即死ですけど、その前に魔法をその大口に叩き込めるかが勝負』


『一撃必殺ですね』


『これは三人とも対処可能な敵だな』


『イエロースネークがA級で、グリーンスネークはB級でしたっけ』


『強さの選定は確かだね』


 

『いやらしさで言うと、ビッグ・タランチュラ』


『体長3Mはありそうな黒蜘蛛ですな。非常にぞわぞわします』


『蜘蛛族はみんなそうなんですけど、こいつも吐いてくる糸が面倒』


『本当に身動きとれなくなるもんね』


『麻痺効果もあるそうですが、我々には耐性がついているから一安心ですな』


『普通の人なら、糸を浴びせられたら一発退場ですね。私達、お坊ちゃまの料理で耐性がついているから平気でしょうけど』


『うん。糸に絡まれて蜘蛛にチューチューされるなんて、想像したくない』


『ですね。身震いがします』


『蜘蛛は木の上に登ってきますから、攻撃もしにくいですね』


『というか、木の上で待ち構えてたりするからな。時々、気配消してるし』


 蜘蛛は蛇と同じだ。

 とにかく、如何に素早く相手を察知するか。


 ◇


 そんなこんなで、強敵を排除しながら、

 ようやく滝の麓までたどり着いた。


 ここまで来ると、ワイバーンが飛んでいるのが見える。

 森は茂みで空が見えないから、川の隙間からだけど。


 

 ただ、この滝の裏には洞窟がある。

 この中には強い敵はいなくて、

 盾と魔法で防御すれば大丈夫な敵ばかり。


 だから、交代で見張りを立てながら、

 ここで一晩を明かす。


 ◇


 さて、早朝。


『太陽がのぼりきらないうちに滝を登ろうか』


『登っている間に攻撃されると動きがとれませんものね』

 

 ワイバーンは日中しか活動しない。

、その前に滝を登ってしまう必要がある。


 

 滝は20m程度だろうか。

 ほぼ垂直に切り立った崖を登っていく。

 登り方はフリークライミング。

 道具無しで登っていく。


 僕たちは体力が常人を遥かに上回っている。

 猿なみといってもいい。

 岩を掴みながら登っていく。


 落ちても、盾を装備しているので、

 多少のショックは感じるけど、怪我はしない。

 20m程度の岸壁ならば、数分で登りきれる。



ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

励みになりますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ