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学院講師会議2

【学院講師会議2】


『例の演習事件の最終報告が上がってきました』


『ほう。楽しみですな』


『ジュノーとカトリーヌのペアは課題の3色のボールを集め、ゴールの森中央高台に向かう途中、3頭のイエローボアに襲われた。


ジュノーの一連の行動は次の通り。

そばにいた数名の生徒の証言と現場検証による。

・2頭を魔法で頭部粉砕。

 使用魔法は爆発系の風魔法と風刃と思われる。

・3頭目の大蛇からカトリーヌは毒液を浴びせられる。

・瞬時に、ジュノーは回復薬をカトリーヌにかける。

・3頭目の大蛇をトルネードと思われる風系上級魔法で

 排除する。

・カトリーヌに回復薬を2度かけしたあと、

 高台に飛び移る。

・そこで、ダイヤモンドダストと思われる上級氷魔法で

 大蛇を操るテイマーを倒す。

・ここまでが僅か数秒のできごとであったため、

 事実誤認の可能性あり。

・巨大黒狼を呼び出し、カトリーヌをスタート地点まで運ぶ。


以上です』


『凄まじいですな。そもそも、1頭のイエローボアが出現したとすると、軍隊案件になります。最低でも1個小隊以上、安全を担保するなら中隊で大蛇にあたるとされるものを一人で3頭ですか』


『彼は大隊クラス、兵士千人の部隊に匹敵するということですか』


『しかも、数秒で、とありますが、イエローボアを排除したのは、おそらく1秒程度しかかかっていないでしょう』


『カトリーナに回復薬2度かけしながら、でね』


『まさしく瞬殺ですな』


『トルネードとかダイヤモンドダストを普通にしかも瞬時に発動しているのも凄い。まず、消費魔力が大きい。魔導師軍レベルでも、普通なら一つだけでも発動したら魔力が枯渇するし、発動できない者も多い大魔法だ』


『高台に素早く上り詰めたのも、異常な体力ですね』


『飛んでいったのかもしれません。いや、冗談抜きで』


『そのテイマーは確保できたのですか』


『コチコチに凍った死体を回収しました』


『イエローボア3頭を同時に操るテイマー。相当な手練れですよね。誰かわかったんですか』


『これだけの能力者なら簡単にわかると思ったんですが、まるで該当者が出てきません。周辺の隣国にまで対象を広げたのですが』


『うーむ。例の“闇のもの”所属者でしょうか』


『正体不明なのは“闇のもの”の仕業、とするのは安易ですが、それ以外に答えがありません』


『それと、巨大黒狼とは?』


『牛のような大きさだったそうです』


『黒狼って、体長2m程度ですよね。それよりも遥かに大きい個体ですか。ボスクラスになりませんか』


『おそらくは。そんな存在をジュノーは使役していました』


『彼はテイマーでもあるということですか』


『ですね。しかも、極めて優秀な』


 注 アンガスは勝手にジュノーに懐いているだけ。


『うーん、これほど優秀な魔導師は王国にいるでしょうか』


『魔導師軍の師団長でもムリでしょう』


『彼は頭脳も極めて優秀です』


『数学。10桁の掛け算を瞬時に行います』


『は?私など、1桁でさえあやしいのに?』


『彼は数学部門でも王国でトップクラスでしょう。ビブン・セキブンが最近の興味らしいです』


『なんですか、それ』


『高等数学の最先端ですよ』


『はー。頭が痛くなりそうですな』


『法律の授業なんですが、彼はいつもよそ事をしてるんですよ。で、少し意地悪しようと思って、彼に質問したんですよね。そしたら、ちゃんと授業を聞いていただけでなく、見事な解答をし、しかもですよ、私に逆に質問してきたんですよ』


『ああ、僕もそうだった。その質問がまたえらく高度で僕が逡巡していると、彼が勝手に講義をはじめまして。えらく楽しそうに。僕たちはポカーンとしたまま、その解説を授業の残り時間きくはめになりまして』


『わかったんですか?』


『わかるわけないでしょ。チンプンカンプンですよ』


『ああ、彼は意地悪でやってるんじゃないんですよね。おもちゃを見つけた子供みたいなもんですよ。実に楽しげに話し続けるもんだから、静止もできなくて』


『詳細は省きますが、剣の時間も彼の優秀さは際立ってますね』


『彼の優秀さは、とんでもないですよ。あらゆるジャンルにおいて、優秀なんてもんじゃない。学院レベルじゃなくて、この王国でトップクラスなんですよ』


『正直、彼がこの学院で学ぶ必要はありませんよね』


『ええ。1年のときは図書館に通い詰めていましたが、ほぼ全ての蔵書を読破したそうです』


『数千冊はあるといいますが……』


『彼にとっては、アニエス教授がこの学院にいる唯一の意義なんじゃないでしょうか』


『僕はよくわからないんですが、どうなんでしょう。彼はアニエス教授の共同研究者のような感じですよね?』


『アニエス教授ははっきりいいませんが、そうだと思います。教え子という感じじゃないですね』


『私はアニエス教授に彼の処遇を相談したほうがいいと思うのですが』


『ですね。アニエス教授のように彼を2年終了時で卒業させるか、あるいはもう講師を依頼してもいいんじゃないでしょうか』


『賛成ですな。というか、我々も彼から教わることがたくさんありそうですね』


『それにしても、彼の祝福は“料理人”なんでしょ?』


『“料理人”がどんな祝福なのか。単なる料理関係の祝福だなんて、もはや少しも思えませんな』


『確かに。まだまだ彼が隠しているものがありそうですね』


『それもとんでもないものが』


ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

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