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大蛇3頭と戦闘1

【大蛇3頭と戦闘】


 イエローボア。


 以前、学院に向かう途中の峠越えで遭遇した大蛇である。

 Aランクに位置づけられる獰猛な魔獣、それが3体。


 そもそも、この森は平和な場所のはずだ。

 “闇のもの”の襲撃に間違いない。


 僕は、とっさのことで慌てたが、

 まず、僕を狙った2体の大蛇。

 僕は集中すると、周りがスローモーションになる。


 大口を開けている1頭に風魔法エアインパクト。

 口のなかに放り込んでやる。

 空気の衝撃波を相手にぶつける初級魔法だが、

 僕が使うと強力な爆発をもたらす。

 

 1頭目は頭部が消滅した。


 さらに、鎌首を持ち上げる2頭目に対しては、

 やはり風魔法風刃。

 僕のもっとも使い慣れた風魔法だ。


 その風刃をアサルトライフルのように連射。

 2頭目は首を切断される。

 

 2頭とも頭部を失って胴体がクネクネと動き回っている。

 僕はそれらを放っておいて、3頭目に向かう。


 3頭目は、ちょうどカトリーヌに襲いかかるところだ。

 大口をあける大蛇。

 カトリーヌが応戦するが、大蛇には通用しない。


『キャッ!』


 やばい。

 大蛇が液体をカトリーヌにふりかけた。

 毒液だろう。

 イエローボアは毒蛇でもある。


『クソっ』


 僕はとっさにカトリーヌに治癒液を投げつけた。

 彼女は気を失っているのか、地面に伏せている。


 この治癒液は僕とエレーヌが開発しているもの。

 魔石の水溶液と回復薬を調合して、

 効果を強化しようとしているのだ。


 治癒液が彼女の全身に降りかかるのを横目で見ながら、

 僕は魔法を作動した。


『トルネード!』


 竜巻を起こして対象をふっとばす上級風魔法だ。

 僕は少し慌てていて、

 ついオーバーキルの魔法を使ってしまった。


『!』


 大蛇が竜巻に巻き込まれ、

 風の刃で体があっという間に引き裂かれていく。


 僕はすぐにカトリーヌに駆け寄り、

 さらに回復薬を2度掛けする。



『あそこか』

  

 僕の探索スキルにもう一つ小さな赤点が表示されている。

 旗のある小山を向こう側に逃げているようだ。


『させるか』


 僕は瞬時に小山を駆け上がり、

 赤い点を目視する。


 そして、


『ダイヤモンドダスト!』


 鋭い氷の刃を伴う冷気の嵐を発生させ、

 範囲内の者全て凍結させる。

 上級水(氷)魔法である。


 これを使うと、生物は瞬時に絶命する。

 引っ捕らえることもチラッと思ったが、

 僕は急いでいた。


 なお、戦闘開始からここまで数秒程度のできごとである。



『カトリーヌ!』


 僕はカトリーヌに駆け寄ると、無事を確認した。


『ううん』

 

 ああ、カトリーヌは無事なようだ。

 それにしても、喋らないと本当にキレイな子だな。

 特筆なのは、肌がキレイなことだ。

 この世界では珍しい。

 口は悪いが。


『どうだ、体に異常はないか』


『はっ、どうなったの?』


『大蛇3頭に襲われた』


『え?この森、安全じゃなかったの?』


『ああ、そうなんだけど』


 僕のせいだとはなかなか言えない。


『それに、3頭?あんなに大きい蛇を?』


『あれはイエローボアっていう毒蛇だ』


 僕が指差す先には、まだ体をくねらせる大蛇が。


 カトリーヌは迫りくる大蛇の大口と

 自分にかけられた体液を思い出したようで、

 ガタガタ震えだした。


『あなたがやったの?』


 僕は温風魔法で彼女の服を乾かしつつ、

 返答を重ねていく。


『ああ』


『3頭も?あなたって本当に規格外ね』


『はは』


『それと、私に回復薬をかけてくれたのかしら。確か、私は毒液?をかけられたようだけど』


『ああ。僕たちの開発している薬だ』


『あなた、薬師なの?』


『いや、違うけど。まあ、見習いみたいなもんだ』


『そう。命を救われたのね。感謝しておくわ。でも、この薬、製法が甘いわね』


 タカビーな態度を崩さないカトリーヌ。


『甘い?そんなのすぐにわかるのか?』


『私の祝福は薬師よ。この程度、すぐにわかるわ』


 なんだって。

 僕は“料理人”、そしてエレーヌは回復魔法持ちだ。

 その二人が開発している回復薬を瞬時に見抜くのか。


『なんだ、あんたは天才薬師か』


『バカいわないで。貴方に言われたくないわ。それに何よ。あんたって。私はこれでもレディなの。敬いなさい』


 はいはい、タカビーのお嬢様。


『なんだよ。せっかく誉めてるのに』


『その上から目線が腹立つのよ』


『上から目線?』


『頭脳も、魔法も、天才級。王位継承権がある王子様でイケメン。何よ、あんな大蛇3頭相手にして瞬時に退治するなんて、どこの英雄よ』


 お、イケメンだってよ。

 僕の中身は半分前世メタボの日本人。

 イケメンには程遠いから、思わず照れてしまう。


『いや、イケメンッと言われると嬉しいかも』


『えっ、反応するとこ違くない?見るからに王子様フェイスの癖に。それだけ恵まれていて、上から目線じゃないって言われたくないわ』


『よくわかんないな。君は頭も魔法も顔も家柄だって最上級クラスだ。僻む理由がわからん』


『貴方に私の何がわかるっていうの!』


 あー、出た。

 被害者ぶりっ子が。

 ここで何か言おうものなら、泣き出したりして。

 君子危うきに近寄らず


『あー、めんどくさい。君が僕を嫌うのは勝手だけどさ、まあ、お互い冷静な距離をおかないか?』


『貴方って、最低』


 やっぱり、泣き出した。

 こうなると、女に何言っても無駄。



ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

励みになりますm(_ _)m

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