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2年に進級2 頭の痛い演習

【2年に進級2】


 さて、数日後。

 ようやくクラス編成が少しなじんできた頃。


『ボンズ、ちょっと聞いていいか』


『なんだ、ジュン。いいぜ』


 クラスの連中にも僕の愛称ジュン呼ばわりが浸透してきた。


『カトリーヌだけどさ。僕、目の敵にされてるみたいなんだ』


『ああ。おまえがアニエス先生とべったりだからだよ』


『その話は聞いたことがあるんだけど、彼女そんなに先生に入れ込んでるの?』


『うーん、これは半分以上推察なんだけどさ』


 ボンズは次のような話をした。


 カトリーヌは有名な魔法一家の生まれ。

 伯爵家の長子であり、

 生まれた時からそりゃ期待されていたのだそうだ。


 ところが、彼女の授かった祝福は“薬師”。

 

 薬師だって立派な祝福だが、

 伯爵家にとっては残念な結果だったわけだ。


 しかし、カトリーヌは猛烈な訓練を自分に課し、

 今の力を身に着けた。

 薬師が学院でトップを維持する。

 努力が半端ないことはわかるだろ?


 でだ。

 彼女は伯爵家に疑いも持ち始めているわけだ。

 なぜ、自分は家の都合にふりまわされるのか。

 もっと自由な人生を歩みたい、とな。


 その彼女の理想がアニエス先生というわけだ。

 類まれな魔法力の持ち主。

 頭脳も王国でトップクラス。

 そして、周りに左右されず自分の研究に没頭する。

 それでいて影の学院校長とか呼ばれて。

 しかも、エルフらしくあの美貌だしな。

 

 王国随一のスーパーレディさ。先生は。



『だからわかるだろ。本来なら毎日先生と討論すべきなのはおまえじゃなくて自分のはずだ、とカトリーヌは思っているわけだ』


『なんだか、僕と境遇が似てるんだけど』


『うーん。お前の“料理人”って祝福も、今や誰もおかしなもんだって思ってないぞ。少なくとも、この学院ではな。むしろ、本来の中身はなんなのか考察する人が多いぞ』


 あー、周りはそこまで行っているのか。

 でも、なんだかとばっちりのような気もする。

 もっと楽になればいいのに。


『カトリーヌは優秀だが、その分周りをみないところがあるからな。まあ、配慮してやってくれ』


 おー、ボンズは見た目だけじゃなく、中身も大人だな。

 僕、人生経験だけは長いんだけど、

 未だにコドオジ気分がぬけない。


 ◇


 さて、2年になっても座学は相変わらず退屈だった。

 しかし、今日は楽しい野外演習がある。

 学院の裏にはこじんまりした森がある。

 といっても、縦横30km程度はあるのだが。

 危険な獣は出て来ない。


 そこが本日の演習会場だ。

 内容はこうだ。

 森には様々な色のボールが設置してある。

 2時間以内に3色のボールを集める。

 森の中央あたりにちょっとした小山がある。

 その頂上に旗が立っており、ボールを集めた後、

 旗に向かう。

 そこまでのタイムを競うのだ。


 生徒は各々が防護服で駆け抜ける。

 防護服は班対抗戦で使用したもの。


 敵として、同じく防護服に身を固めた学院講師が

 襲ってくる。

 20名ほど配置されているらしい。


 講師を避けて向かうのがもっとも賢いルートであろう。

 タイムアタックだからだ。

 中には講師に出会わない場合もある。

 運も絡んでくる。


 ◇


 さて、これは個人戦ではない。

 いくら安全の確認されている森とはいえ、

 森を一人で歩くのは推奨されない。

 ましてや、僕たちは大切な学院の生徒だ。

 安全面は最大限担保されなければならない。


 今回はペアで攻略することになった。

 ペアは抽選である。

 ちょっと嫌な予感がしていたんだけど、

 予感はあたった。


 僕の相方はカトリーヌだった。



『フン!』


 おお、僕がペアとなると分かった途端、

 思いっきり顔をそむけたぞ。


 本日は見事なぐらいの快晴。

 でも、僕の気は重い。


『いい、私に付いてくるのよ。邪魔しないこと』


 はい、はい。

 お嬢様の言う通り。

 女は下手に扱うとヒスる奴が多いからな。


 何、セクハラだって?

 ま、当社調べだってのは認める。

 

 ◇


 さて、お嬢様についていく。

 時々、講師が現れるが彼女は即座に魔法で排除する。

 学年主席様の腕は確かだ。

 もっとも、講師も力をセーブしているのだろうけど。


 3色のボールはかなり目立つ。

 すんなり獲得し、30分も走ると、山が見えてきた。

 頂上の赤い旗。あれがゴールか。



『カトリーヌ、止まれ!』


『何を偉そうn、えっ?』


 僕の探索スキルに巨大な赤い点が3つ。

 突然表示されたかと思うと、

 僕たちの目の前に突進してきた!


 イエローボアだ!



ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

励みになりますm(_ _)m

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