2年生に進級
【2年生に進級】
魔法高等学院は、完全な能力別クラス編成をとる。
1学年100名。
成績順に、A⇒Eへと振り分けられるのだ。
2年生になるにあたって、僕はA組になった。
席次は10位である。
E組からは、他に9名の生徒がA組にあがった。
僕と同じ班のアレシアは3位。アデール4位。
ガイルが5位。
他に10位代に6名の元E組クラスメイトがいる。
『ジュンがダントツ1位なのにね』
『いつも言ってるでしょ。僕は目立ちたくないって』
『あのさ、もうみんな気づいているよ。ジュンが力をセーブしてること』
『え、そうなの?』
『クラス別対抗戦をやったでしょ。あれでカトリーヌたちがジュンに負けたっていってるらしいよ』
『あー、わかるか』
『当たり前でしょ。やってる本人たちからすれば、いきなり足元がぐらつくんだから。しかも、抗えない魔力。で、瞬殺されてるんだから、凹むわよ』
『それでかな。僕、カトリーヌに嫌われている感じがするんだよね』
『そう?私達とは普通に話してるけど。フレンドリーな人よ?』
『君たちはそうかもしれないけど、憎しみの目で見られるんだよね』
『気のせいとか』
『違うよ。流石にわかるよ』
『あのさ、俺ちょっとボンズと話したことがあるんだけど。カトリーヌって、アニエス先生の大ファンらしいよ』
『え?それで嫉妬してるとか?』
『ああ、間違いないんじゃないか。アニエス先生の話をしている時にジュンの話題が出ると、顔色が変わるらしい』
『あちゃ』
僕は用事のない限り、
放課後はアニエス先生と討論会している。
だいたい、図書館にくる人は殆どいないこともあって、
誰かが図書館に入ってきても気が付かないぐらい熱中している。
王国で僕たちの話についていける人はいないと思う。
古代ナード語で書かれた古代魔法の解析と、
魔法陣への記述やデバッグ。
ついていける人がいたら驚きだ。
超マイナーな話題でしかも超高度。
◇
席順はE組は自由だったけど、
A組は席次順。
4列5つずつ席がある。
窓側から詰めていくから、僕の左隣はガイル。
右隣はもともとA組の子。
『田舎帰ったら大騒動になったぜ。俺が学院5番だって。ジュンのお陰だよ』
『いや、ガイルの頑張りが全てでしょ。頑張らなきゃ、僕が何しようと、上にはいけない』
『なあ、オレもその話混ぜてくれよ』
そう話に割り込んできたのは、ボンズ。
1年からずっと席次が2番の男だ。
彼は魔法よりも剣技のほうが得意である。
学年でも飛び抜けている。
ガイルも剣技は凄いが、かなりの差がある。
外見は、ちょっとオジサン顔か。
たまにいるよね。
時の経過とともに年齢が顔に追いつくタイプ。
僕は剣では単純に力勝負なら勝てると思う。
しかし、技術は全く問題にならない。
軍が今から彼にアプローチしているというが、
頷ける話だ。
『オレさ、ジュノーの強さにもの凄く興味があるのよ。てか、なんで力を隠してんの?』
『はは。嘘言っても仕方ないか。これさ、黙っていてほしいんだけど』
『まかせろよ』
『僕ね、城的にややこしいわけ。だから、小さいときから目立たないように暮らしてきたんだよ』
『ああ、そうか。推察通りだな。だけど、もうバレてると思うぞ』
『そう?』
『オレのところには軍から話が来るんだが、その時、よくお前のこと聞かれるよ』
『え』
『オレたちと2回対戦したろ。あの時のお前の放った魔法。あれ、みんなにバレバレだぞ。お前はさりげないつもりだったかもしれんが』
『ウソ』
『ただ、どの程度の力かは判別できん。オレたちの間では、カトリーヌよりずっと上かそれともちょと上か、で別れてる』
『下というのはないの?』
『アホか。下のわけあるかい。カトリーヌが手も足も出なかったんだ。ちなみに、魔法に関してはオレはカトリーヌに惨敗する』
うーむ。上手くやってるつもりなんだけど。
でも、ちょくちょくやらかしてるしなあ。
『不思議なことはたくさんあるんだが、お前の周りを強化する力も凄いよな。E組の躍進、先生たちも首捻ってるぜ』
『E組は燃えてたからな』
『気合が入ってたのはわかるよ。でもそれだけじゃ説明できない』
『そう?』
『それと、図書館でいったい何を話しているんだ、アニエス先生と』
『ああ、いろいろ』
『たまに図書館に行くやつがいるんだけど、みんなギョッとしてるぞ。まるで異次元の話だって』
『うーん。先生の専門の古代語が面白くてね』
『オレも古代語は少しわかる。だが、そんなもんじゃないだろ』
『まあ、古代ナード語っていって、特殊な言葉。アニエス先生の特に留意しているジャンルなんだ』
『古代ナード語?まあ、そのうち教えてくれよ。これから一緒のクラスだからな。楽しませてもらうぜ。宜しくな』
ボンズは実に気持ちのいい奴だった。
まさしく、陽キャなんだろう。
羨ましいよ。
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