夏休み
【夏休み】
前世日本と同じように、7月下旬から夏休みが始まる。
ただ、9月中旬まで夏休みが続く。
故郷を往復するのに、一ヶ月ぐらいかかる子もいるからだ。
もっとも、僕は帰省しない。
まず、アニエス先生との研究がある。
これは何れにも代えがたい。
帰省するとしたら、母上の実家だが、
かなり遠い。
往復一ヶ月かかる子の仲間入りしてしまう。
それと、E組のうち帰省しない子の面倒を見るためだ。
クラス対抗戦で僕たちが他クラスを圧倒したのは、
他のEクラスの子たちに大いなる刺激になったようで、
『帰省せずに夏休みは頑張るので、お願いします』
とみんなからお願いされてしまったのだ。
半分くらいは帰省するかな、とおもったら、
全員残っていた。
いや、こんな暑い日々は家に帰れよ、
と思うのだが、鉄は熱いうちにたたけっていうしな。
可哀想だから冷風魔道具を貸してやった。
やっぱり、夏は冷房なしではバテる。
あと、寮の食堂が閉まってしまう。
寮の食堂を利用している子も多いので、
彼らの面倒も見ることにした。
僕たちの借りた敷地に、彼ら用の食堂を建てたのだ。
料理人はエレーヌとロベルト。
僕が交じると強化が大変なことになるから、
迂闊に手を出せない。
ただ、食費は実費を出してもらう。
だから、当番制にして、
食事係と食材当番を割り当てた。
前に5つの班を編成しているので、
1班が食事係、2班が食材担当、2班が当番休みとして、
ぐるぐる回した。
食材担当は主に一角兎を狩りに行く。
僕はつきそい。
最初はビビリ、盾の高性能さに安心し、
しかし、攻撃しても魔法が当たらない、届かない。
結局、僕が狩りをする。
でも、1週間ほどすると魔法が強化されてきて、
そろそろ兎を狩る子も出てきた。
そして、一ヶ月経つ頃には、
全員がそれなりの魔法の腕を持つようになった。
料理には、僕特製のジュースを供給している。
これらは強化効果が+20しか上がらない。
しかし、異常耐性のつくものが多い。
バナナ 異常耐性全般
ブルーベリー 冷気耐性
ラズベリー 熱気耐性
クランベリー 毒耐性
マンゴー 混乱耐性
リンゴ 魅了耐性
こんな感じだ。
特にバナナはあらゆる異常に耐性のある優れフルーツだ。
(その代わり、各々の耐性力は弱め)
美味しいこともあり、
ジュースの基本にはバナナを入れることが多い。
これらフルーツをうまくローテーションしているため、
E組のクラスメイトたちは、
異常デバフに強い抵抗を示すことができるようになった。
また、僕の“料理人”のもう一つの効果。
これらの効果は、
少しずつ各人のステータスに影響を与える。
つまり、基礎ステータスも少しずつ上昇するし、
これらの異常耐性も永続的に付き始めるのだ。
たとえば、僕・エレーヌ・ロベルトの三人は、
何も摂取しなくても、
ほぼあらゆる異常に耐性ができている。
僕たちにデバフをかけて効果を出させるには、
相当な強い魔導師でない限り無理だ。
それと、ジュースの健康効果。
もともと、果物にはビタミン・ミネラルが豊富だが、
それが僕の“料理人”で強化される。
だから、みんな肌が段々キレイになってきた。
夏休みが一ヶ月終わる頃には、
みんなの魔法の実力が明らかにランクが上がった。
具体的には、魔力測定器を使うと、
以前は、概数でアレシア3500、アデール3200、
そして、ガイル2800。
他の生徒たちは、最高で約1500、最低で900。
それが、今ではアレシアが3800、アデールの3500、
そして、ガイルの3100。
他の生徒たちは、最高で約2000、最低で1400だ。
朝晩の訓練も文句も言わずに続けている。
こいつらはエリートでもあるが、
優等生でもあるんだな。
さすが、王国中から選抜されてきただけはある。
当初は三ヶ月だけ、と期限を切っていたが、
気持ちが切り替わった。
僕は料理のグレードを少しずつ上げていき、
夏休みが終わる頃には、全員がハンバーガーメニューを
食するようになった。
つまり、強化効果+100である。
最終的に、アレシアたち以外は、
最高で約2800、最低で2200にまで上昇した。
こうして夏休みを乗り切ったのだが、
クラスメイトからは懇願された。
『頼むから、料理を続けて欲しい』
『もう、領の食堂に戻れない』
『このままでは、餓死する』
仕方がない。
引き続き、獲物を狩ってくることを条件に、
夕食だけ出すことにした。
朝・昼もとなると大変すぎるし、
領の食堂に人がいなくなってしまう。
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