班対抗戦
【班対抗戦】
班編成がなされてから、2ヶ月がたった。
夏休みを一ヶ月後に控えたある日、
E組の班対抗戦が行われた。
これで優勝すると、夏休み前にクラス対抗戦に出場する。
僕たち班員は、バナナ+マンゴージュスを飲みながら、
対抗戦に思いをはせる。
『ドキドキするわ』
『ほんとに。ただでさえ、みんなの前に立つと上がるのに』
『入学当初は、E組のレベルでさえ俺は圧倒されていた。今の俺がどのレベルにいるのかわかるから、俺は早く対抗戦が始まって欲しい』
『おお、ガイル。その意気だよ。みんな、上る必要まったくなし。普通の実力を出せば、他班を圧倒するよ』
『またまた。そんなわけあるかーい』
『そうそう。だいたいでいいんだよ』
◇
いよいよ始まった対抗戦。
結果を言う。
圧勝だった。
他の班は何もできなかった。
当たり前だ。
僕の強化効果に、この2ヶ月の強化訓練。
A組にいても遜色ないか、下手すると優勝できる。
子供と大人以上の差があるのだ。
これを見た他のE組の連中。
これほど伸びた理由を探り始めた。
そして、朝と夜の俺たちの強化訓練にあると見た
E組の連中は僕たちと一緒に頑張り始めた。
『ほう。いつの間にか、大所帯になりましたな』
『うん。いつまでもつやら』
アレシア・アデール・ガイルの3人は1時間で
1周半する。
だいたい、15kmの距離だ。
E組の他の子たちは、最初頑張るんだけど、
どんどん脱落していく。
夜はもっと酷い。
魔法の使いすぎで失神する子が続出する。
僕たちは、魔石を持っているからすぐに回復できるけど、
彼らは失神したままだ。
流石に、ということで、魔石を渡すことにした。
魔石と言っても、いわゆるスライムサイズ。
小指の先程の大きさだ。
これでも、失神から回復させる程度の魔力を
注入することができる。
『ありがとう。助かるよ』
お礼を言う子、言わない子。
言わない子はチェックして、
次回、魔石を渡さない。
礼儀は守んなくちゃ。
『なんで、魔石をくれないんだよ!』
怒るやつも出てくる。
無料にすると、それが既得権益と思い込むやつが
必ず出てくる。
そういう奴は、拳で教えてあげる。
僕も腹が立つからな。
『悔しいか。悔しかったらやり返してみろ。だいたい、なんで只で魔石がもらえると思った?おまえは乞食か?』
正論を言われて言い返せない。
それでも、こちらを睨むような輩は、
再度、拳で語ってやる。
そうこうしているうちに、どうやら僕がかなり強いことに、
みんな気づき始めた。
うーん。
僕も短気になりすぎた。
目立つ予定じゃないのに。
この辺は、僕も大人になりきれない。
ジュノーが子供だからじゃない。
転生前の僕も大人になりきれていなかった。
『すまん。悪かった。だが、俺も強くなりたい。なあ、俺にも教えてくれないか』
と頭を下げてくる。
そうなると、僕も悪い気はしない。
だいたい、彼らは全員まがりなりにも、
朝晩の僕たちの訓練に付き合っている。
それでも断っていると、E組全員から懇願された。
うーむ、僕はあんまり前面に出たくないんだけど。
僕が逡巡していると、僕を決心させることが起きた。
僕たちが毎朝走っていることに気づいて、
他のクラスで僕たちを茶化す馬鹿者が出てきたのだ。
いや、気にもしていなかったが、
このところ雑音が耳に届くようになってきたのだ。
『ドベクラスが』
『学院の腐れクラス』
『お荷物』
『そばに来るな。バカが移る』
『必死に走っても這い上がれるわけ無いだろ』
僕は怒髪天を衝いた。
『許さん』
またしても、短気な僕が出てきた。
いや、僕が言われるのならいいのだが、
(決して良くないが)
他のE組の子たちが唇を噛みしめるのを見るのは
堪えた。
前世の僕を見ているようだったからだ。
僕は朝の朝礼が始まる前に、
『強くなりたいもの。放課後、覚悟をして訓練室にこい』
とアナウンスした。
勿論、全員来た。
◇
『いいか、おまえらを3ヶ月だけ見てやる。ただし、訓練内容は鉄の誓約をしてから教える。誓約をしたくないものは帰っていいぞ』
帰るものはいない。
『よし。じゃあ、誓約を』
一人ひとり、血判をしつつ、鉄の誓約を進めていく。
これは、契約内容を厳守するための魔道具だ。
主に、守秘義務契約で使われることが多い。
守秘項目を口にできないよう、強い魔力がかかるのだ。
『これからは鉄の掟で僕たちはつながった』
ごくりとつばを飲み込む音が聞こえる。
そして、部外秘の魔力測定器を、
アニエス先生から借りてきた。
『では、まずマル秘その1。おまえらの魔力を測定する。これは、僕とアニエス教授とで開発したものだ。入試時のものよりもずっと性能がいい』
みんな、驚きの顔をする。
僕が図書館に通い詰めていることを知っている人は
何人かいた。
しかし、その内容が規格外なものだったとは。
『これは、僕が卒業したら公開する予定だ。だからこれも内緒にすること。まあ、鉄の誓約に含まれるけどね』
僕の魔力は50000。
アニエス先生が約20000であった。
彼らは。
トップは、アレシアの約3500。
次がアデールの約3200、そして、ガイルの約2800。
他のひとたちは、最高で約1500、最低で約900だった。
『次に、マル秘その2。僕のスキルの一端を教える。みんな、これを飲んでくれ』
僕は人数分のジュースをマジックバッグから取り出した。
マジックバッグを初めて見るものが多く、
珍しそうな目を僕に向ける。
ジュースは、クリームチーズ・バナナ・ミルクを
ミキサーで粉砕。
さらに、レモン果汁と砂糖で味を整えたもの。
『『『『なんて、おいしいの!』』』』
みんな、大絶賛だ。
『よし、飲んだら自分のステータスを見てみろ』
『?……!』
『おい、+20ってなんだ』
『わかったか。それが僕のスキルの一つだ。僕の料理にはステータス強化効果がある』
『『『『!』』』』
声にもならない絶叫が室内にこだまする。
『まずは、クラス対抗戦まで朝と夜の訓練を続行すること。対抗戦後に、本格的な訓練に移行する』
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