学園都市入り2
【学園都市入り2】
『初めて学園の中に入りましたが、圧倒されますね』
入学試験にも護衛を兼ねて二人には付き添ってもらった。
でも、二人は中に入ることができなかった。
『流石に王国中で名を轟かせる名門校のことだけはありますね。広大な敷地、整備された庭園に豪奢な校舎。王城以上ではありませんか』
中でも目を奪われたのは庭園だ。
シンメトリーで幾何学的に区切られた花壇が
ずっと遠くまで続いている。
イメージとしては前世のベルサイユ宮殿の庭園だ。
とはいうものの、僕に正確な知識があるわけではない。
なんとなくフランスの庭園と感じただけであるが。
僕たちは指示された区画に到着した。
立地がいいのかどうかはわからない。
こじんまりとしたお屋敷街、という雰囲気だ。
いくつかは壊されないままのものもあるという。
来客用とか、緊急用とかのためだ。
『じゃあ、ロベルト、側を立ち上げてみる?』
ロベルトはもともと土魔法が発現していたが、
成長できずに、初級魔法しか発動できなかった。
でも、今では中級はおろか
上級土魔法を伺えるところまで実力をあげてきていた。
『やってみましょう』
ロベルトはそういうと、
僕たちと間取りの打ち合わせをした。
『アーススカーボ!』
これは地面を掘削する魔法である。
初級魔法であるが、上達にしたがい、威力が高まる。
『アースウォール!』
次にロベルトはどんどん壁を立ち上げていった。
壁の作成及び硬化を含んだ中級土魔法である。
『どうですか』
汗を拭きつつ、ロベルトがニッコリ笑う。
マダムキラーというのがわかる笑顔だ。
その言葉を本人は嫌がっているのだが。
『ロベルト、上達したよね。じゃあ、開口部を開けていこうか』
開口部の窓や扉は僕が担当する。
特にガラス窓を制作できる魔導師はこの国では希少だ。
僕には前世の記憶があるから、
ガラス窓のイメージを投影しやすいということもある。
『土木会社か建設会社でもやっていけますね』
エレーナも明るく笑う。
実は、彼女にも魔道具師のスキルが芽生えていた。
得意の水魔法を生かし、
上・下水道、お風呂の魔道具を作っている最中だ。
僕はそれに加えて、冷暖房、廃棄物消去の魔道具を作る。
エアコンとトイレ、それにゴミ箱だ。
こうして、1階が広いLDK(50畳ほどある)、
公立学校の普通教室2つと半分程度の大きさだ。
半分は吹き抜けとなっている。
2階は5室ほど。
前世日本基準では大変立派な邸宅が完成した。
なお、地下室は倉庫、熟成室の他に、
魔道具研究室とトレーニングルームを作った。
トレーニングルームはこれまた50畳ほどある。
ここで剣・弓・魔法の訓練を行うのだ。
『じゃあ、ひと仕事終わったから、お昼ごはんにしようよ』
『お坊ちゃま、学園都市のレストランはどうですか?』
広大な魔法高等学院に隣接する形で学園都市が鎮座する。
パット見た感じだと、城都よりも小綺麗に見えるが、
食の実力のほどは。
早速、エレーヌがそのあたりで
おすすめのレストランを聞いてきた。
『お坊ちゃま、あれですかね』
少し高級そうな立派なレストランが見えてきた。
中に入ると、混雑しており少し待つ必要があった。
『流行ってるみたいですね』
『うん。期待できるかも』
20分ほど待って、僕たちは席に案内された。
おすすめは、羊系魔物のステーキ、
ムール貝のような貝のスープ、
そして全粒パンであった。
僕たちは三人ともそれを注文する。
『あ』
サーブされた瞬間に悟った。
これは城の食事よりダメだ。
特に、肉。くさすぎる。
1mmも食べられない。
貝のほうは普通に美味しかった。
普通、貝は新鮮なものを使う。
すぐに傷んでしまうから。
全粒パンも不味くはなかった。
『三人とも同じ評価みたいだね』
『私達、お坊ちゃまの料理で甘やかされすぎてます。それを痛感しました』
『このレベルで評判のいいレストランということになると、この街で外食はできませんな』
『まったくだね。あれだな。いつか、僕たちがレストランをプロデュースするなりして食のレベルを上げる必要があるよね。そうじゃないと、いつまで経っても外食できなくなる』
ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。
励みになりますm(_ _)m