領境越え 襲撃1
【領境越え 襲撃1】
『いつ見ても、お坊ちゃまのマジックバッグって、反則ですよね』
エレーヌは、昼飯のテリヤキバーガーを食べながら
そういう。
『だよな、この料理、これでも数週間前のものだもんな』
僕は一ヶ月ほど前から、少しずつ料理を作っては、
マジックバッグに放り込んでいた。
『ですよね。それでも、できたてそのものなんですから』
マジックバッグに入れると、時間が止まる。
入れた状態でずっと保存されるのだ。
6年前に発現したスキルだが、
今ではほぼ無制限にものを出し入れできる。
『領境を越えたから、記念に晩御飯は焼肉にする?』
『焼肉パーティですか。いいっすね』
『私もお肉大好き!』
エレーヌはすでに2個目のバーガーを口にしている。
ああ、ロベルトは4個目をたべ終え、
デザートのブルーベリータルトに移っている。
たわいない話をしながらのんびり馬車に揺られていると、
出ました。山賊。
『へっへっへ。荷物と、そっちのお嬢さんおいていきな』
前方に6人。後方に5人。
『エレーヌ、前方頼める?後ろはロベルトで』
エレーヌはそう告げられると、短い返事のあとに、
得意の水魔法をぶっ放した。
『ご飯中なのに!フラッシュフラッド!』
『ウワー』
洪水を起こして、対象者を飲み込んでいく範囲攻撃だ。
中級魔法に属する。
ロベルトは、火魔法だ。
『フレイムウェイブ』
こちらは、炎の波を発生させ、範囲内のものを焼き尽くす。
やはり、中級魔法だ。
『あちゃー、後ろの人たち丸焦げになっちゃったね』
さすがに僕は殺人にはなれていない。
『ああいう無法者には情けをかけるといかんですよ。魔物並に凶悪ですから』
確かにそうだ。
まだまだ、僕には前世日本の甘い感情が残っている。
情けは人のためならず、っていうのは、
この世界では大抵通用しない。
人に情けをかけたら、甘いやつと判断されて、
つけこまれる。
『私の倒した山賊、どうしましょう。失神してるだけですが』
『めんどくさいけど、冒険者ギルドにもっていこうか。お金になるだろうし』
僕たちは山賊を縛り上げて、叩き起こした。
最寄りの村により、ギルド出張所の人に山賊を渡す。
『あー、こいつら最近暴れてる奴らですね。討伐依頼が出てます。生け捕りが6人、あと5人の討伐証明部位ですか。証明書を書いておきますので、街のギルドで懸賞金と交換してください』
僕たちは村で一泊した。
夕食は焼肉だ。
僕たちの間で焼肉と言えばヘンシェン鳥。
ロベルトはエールを飲んでいる。
村の人から物々交換でエールをゲットしたのだ。
僕とエレーヌは酒を飲めないから、リンゴジュース。
この辺りではリンゴが特産品だ。
日本のリンゴのような甘さはない。
ちょっと酸っぱいので、パイとかによく合う。
もっとも、僕たちはシーナ砂糖を入れるから、
適度な酸っぱさになって、かなり美味しい。
デザートはマンゴープリン。
前世同様、濃厚な甘味でとろけそうだ。
◇
翌朝は早起きした。
黒パンの卵サンドで簡単に朝食を済ませると、
村を出発した。
のんびりいったが、昼前には街に到着した。
昼ごはんのあと、冒険者ギルドに向かう。
今回は絡まれることはなかった。
僕らは窓口で山賊の討伐証明書をわたし、
懸賞金をもらった。
金貨50枚以上になった。
『思ったよりも高額の懸賞金もらえたね』
『だいぶ、悪質な奴らみたいでしたね。強いのか弱いのかサッパリわからなかったですが』
まあ、速攻で倒しちゃったからな。
ちなみに、
鉄貨 10円。
銅貨 100円
銀貨 千円
大銀貨 1万円
金貨 10万円
ぐらいの感覚だ。
庶民は銅貨、
金持ちは銀貨主体
金貨は今回のような高額支払い以外では殆ど使われていない。
山賊の懸賞金は500万円程度となる。
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