正妻と次男3
【正妻と次男3】
『ユベール、どうですか、政務の方は』
『はい、陛下の秘書をまかせられるようになりまして、忙しい日々を送っております』
『陛下の毎日を学習できて結構なことです。ゆくゆくはこの国をまかせられることになりますから、しっかり仕事に励みなさい』
『はい、母上』
『ところで、あれが学院に入る季節がやってまいりました』
『はい』
『かのものの実力がわからないため、妨害せずに入試はそのまま受けさせたのですが、どうやらギリギリ合格したようです』
『ギリギリですか』
『学科と剣技は満点ですが、魔法がお粗末だということです』
『うーむ。やはり、魔法の才能はないのでは』
『私はそうは思っておりません。欺瞞をくりかえし、自分を無能と見せていると私はみております』
『は(母上のやつへの対抗心は本当に根強いな)』
『貴方が学院を卒業して、ようやく本格的に政治に関われるようになって3年が過ぎました』
『はい』
『それから、あれに対していろいろな行動を起こしました』
『奴の身辺調査。度重なる暗殺。それから噂の流布ですね』
『ええ。どうやら、あれは街をうろついているらしいとのことでしたね』
『はい。確定事項に至っておりませんが、上流階級出身とみられる子供があちこちで目撃されてきました。いつも、長身の男とお付きの女性を連れ、冒険者風の格好をして汚れた格好をしているが、育ちの良さは隠せない三人組です』
『そうでしたね。あの三人に風体は一致しますね』
『村では森猪を見事に熟成させた肉を何度か持ち込んでいます。村ではその度に祭りになるようです』
『暗殺は全く通用しませんでした。“闇のもの”からそれなりに手練れをよこしているということですが、全く通用しませんでした』
『すべての暗殺者が精神を破壊されたということですが、奴の使用人、ロベルトが強すぎるのではありませんか』
『ロベルトは確かに強い。しかし、私は三人がかなりの強さを持っていると見ています』
『三人ともですか』
『ユベール。私はあなたが何かを見落としていると思っています』
『私がですか』
『はい。あれへの対抗心が目を曇らせていませんか』
『いえ、そんな』
『次は“闇のもの”でも最高レベルの戦力を繰り出すつもりです。あれの母親と同じ運命があれには待っています』
『はっ(なんと、母上は“闇のもの”を使ってやつの母親を殺めたというのか?)』
『さて、あれの噂はしっかり広めておりますか?』
『はい。少なくとも城都では、奴が無能で“料理人”なる下賤な祝福を受けたことを知らないものはいないでしょう』
『学院卒業とともに城を追い出されるのはすでに既定路線です。これもしっかりと流布するように』
『は(母上は、奴に最高戦力を向かわせるのではないのか?失敗すると思っているのか?)』
『いいですか、ユベール。あれは相当強い。もし、この襲撃を躱したとするならば、根本から作戦を練り直す必要があります』
『は(母上はそんなに奴を警戒しているのか。警戒し過ぎに思えるが)』
『貴方は警戒しすぎと思っているのでしょう。貴方は顔に出過ぎます。気をつけなさい。城ではすべてが貴方の敵なのですよ』
『はっ(これだから、母上は恐ろしい。私の表情を盗めるのは、母上だけだってーの)』
『まあ、すぐに結果がわかります』
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