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大ピンチ!

【大ピンチ!】ジュノー9歳


『お坊ちゃまも、段々と陛下に似てこられましたね』


 僕がこの世界に来たのに気づいてから、

 すでに3度年を越していた。

 

 エレーヌからそんな言葉が度々出るようになった。

 当初、僕はエレーヌのその言葉をスルーしていた。

 親子なんだから、似るのは当たり前。


『ほんと、体も大きくなられて』


 これも、当たり前だと思っていた。

 だって、僕は子供なんだ。

 成長して当然だろ?

 服だってそれに合わせて大きくなるさ。



『?』


 けど、久しぶりに僕は全身を鏡に映してみて驚いた。

 

『メタボだ!』


 ああ、体がふくよかになっているのには気づいていた。

 だけど、僕は顔が太らない。

 それと、顔はともかく、全身を鏡で見る習慣がない。

 前世だと、顔さえも見なかったからな。



『なんだよ、やばすぎるぞ。何が健康的なジャンク・フードだよ』


 転生後、僕史上最大のピンチだ。


『やばい、このままじゃ前世の二の舞いだ』


 うーむ。

 思ったより賢くなかった僕。



『エレーヌ、僕、太り過ぎ?』


『お坊ちゃま、だから陛下に似てこられたと』


 父上は実に立派なタプンタプンの体をしていた。

 もっとも、父上はこの世界の人らしく、

 元は痩身の美男であったらしい。


『どうしよう』


『お太りになられるのがお嫌いですか?貴族はたいてい太ってますけど』


『嫌すぎる。なんとかして』


『うーん、食事制限と運動ですかね?』


 エレーヌは、全然太っていない。

 体質なんだと。

 それに、メイドの仕事は意外と重労働なんだと。


『ロベルト、痩せるには?』


 ロベルトも痩身だ。

 これも体質もあるが、彼は日々精進に忙しい。


『そうですな、魔法の練習をされては?』


『いつもしてるじゃん』


『いや、そのレベルだと痩せません。追い込まないと』


 ロベルトが言うには、

 毎日、気を失うぐらい魔法を使うといいらしい。


 ああ、それは魔力増進方法として有名だよ。

 でもなー、もの凄く辛いんだよ。

 魔力がなくなると、気を失う。

 その直前に酷い乗り物酔いのような不快感に襲われる。



 そんな不平不満を言っていても仕方がない。

 何しろ、緊急事態だ。


 僕はその日から、魔法の鍛錬に励むことにした。


 流石に城では無理。

 誰かにバレてしまう。

 だから、森の中に入り込んで、修行だ!


 ◇

 

 修行にはロベルトとエレーヌもつきあってくれた。

 というか、彼らも修行をしたいみたいだ。


 魔法を満足に使えなかった彼らは、

 僕の料理強化を機に、

 どんどん魔法の実力が上がっている。


 しかし、このところ停滞気味である。



『ただですね、森の真ん中で気を失うわけにはまいりません。だから、魔石を拾ったら訓練開始ですな』


 魔石は、魔力の補填にあてることができる。

 気を失っても、即座に回復できるのだ。


 魔石は魔物が落とす。

 魔物とは、魔素溜まりが生んだ怪物だ。


 もっとも、最弱の怪物はスライムである。

 指の先程の小さい魔石を落とす。

 僕たちはいくつか魔石を集めつつ、

 順番に魔力増進に努めた。



 僕はそろそろ上級魔法が使えるところまで来ている。

 ロベルトとエレーヌも中級魔法を使い始めている。

 そんな僕たちが魔法練習を行うと。


『ファイアフレイム!ファイアボム!』

『ウィンドブレス!ウィンドインパクト!』

『アイスランス!ウォーターカッター!』


 などという中級魔法から


『ファイアストーム!』

『サンダーボルト!』

『ブリザード!』


 などという上級魔法が森の真っ只中で繰り広げられる。

 僕たちの練習場はあっという間に荒野になってしまった。


 遠くから眺めると、異様な光景が見えるわけで。

 そりゃ、大爆発、炎の柱、暴風雨、雷、

 それらが森の一点で荒れ狂っているのだ。


『魔神様が森で荒ぶっておられる!』


 と付近の村人たちが一心に祈りを捧げるようになった。



 僕たちはそんな周りの反応に気づかずに、

 毎日のように魔法の鍛錬に励んでいた。

 お陰で、僕はみるみるうちにシュッとし始めた。

 ロベルトとエレーヌも魔法の実力が向上してウキウキだ。


『お坊ちゃま、毎日の鍛錬が必要ですね』


『うん。お互いにね。それに僕は両親の性質を受け継いでいて太りやすいみたいだ』


『坊っちゃん、以前食事療法って話したことありますよね』


『ああ、食事で病気を直していくって話ね』


『肥満に効くのもあるんですかね』


 あることはある。

 だけど、それは僕の好きな料理じゃないんだ。


 僕の好きなものは。

 マヨネーズ。焼肉。パン。あとお菓子。

 これでは痩せるはずがない


 肥満に効くのは。

 糖質制限とか。

 野菜中心とか。

 脂肪を減らせとか。


 いろいろ言われてる。

 でも、前世でダイエットに励んだ僕が断言する。

 

 ダイエットには、運動とバランスのいい食事制限。

 これがないと、小手先をひねってもダイエットは無理。

 むしろ、栄養バランスを崩してしまいがちだ。



『食事は減らしたくないし、運動も嫌だし……』


『お坊ちゃま、覚悟を決めましょう』


『うーん』


 ということで、少なくともこの魔法ダイエット、

 その後も毎日続けることになった。


 嫌だけど。



ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

励みになりますm(_ _)m

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