怒涛のお菓子攻撃 ショートケーキ
【怒涛のお菓子攻撃 ショートケーキ】
『砂糖が入ったら、真っ先に作るもの』
『それは?』
『ショートケーキ!』
『え、ショートケーキってなんですか?』
砂糖を手に入れて、すでにクッキーを作っていた。
クッキーだって美味しく作るにはコツがある。
サクサクしっとり、という食感がなかなか出せないのだ。
だけど、僕が本当に欲しいのはイチゴのショートケーキ。
よくわからないけど、日本のショートケーキは、
割と日本オリジナルの物らしい。
西洋のイチゴケーキは、
ふわふわの柔らかいケーキではないみたいだ。
オジリナル論争はともかく、
イチゴのショートケーキの肝はスポンジだろう。
僕はまずケーキの型を作ってもらうことから始める。
“料理人”に鍛冶スキルが発現しないか期待しているが、
無理そうなので、街の道具屋さんで作ってもらう。
スポンジは、ふわふわしっとりに焼き上げるのが難しい。
よくあるのが、卵をしっかり泡立てたのに、
焼いてみると急激にしぼむとか。
卵を泡立てた時に、いかに強い泡を作るか。
ここにコツがある。
泡だて器は魔道具を使う。
ここでガーとやってしまうとよくない。
きめ細かな泡を作りつつ、できる限り速く泡立てる。
これが難しいのだ。
さらに、卵がぬるくなっても良くない。
夏など部屋の温度が高いときは、
卵を冷やしたほうがいいかもしれない。
温度が高くなると、泡の強度が下がるからだ。
他にも泡立て魔道具の回し方とか、
僕の“料理人”はいろいろなコツを教えてくれる。
この辺りは、決して魔道具化できないのだ。
経験値と繊細な注意が必要なのである。
なお、僕は膨らまし粉は好きではない。
あの苦い味が苦手なのだ。
何かまがい物が入っているような気にさせられる。
フワフワしっとりのスポンジにホイップクリーム。
みんな大好き、といいたいが、
これは日本だけかもしれない。
前世では外国人でホイップクリームを好まない人を
度々みかけたような気がする。
まあ、この世界では関係ない。
砂糖をたっぷり使っているから。
また、植物由来のホイップクリームと
動物由来の生クリームもどちらでもいい。
砂糖の前に少しぐらいの風味の違いは
吹っ飛んでしまう。
ただ、大きな問題がある。
イチゴがない。
なんとかベリーはたくさんあるのに。
だから、ラズベリーで代用する。
味は酸っぱい寄りの甘酸っぱいだ。
甘いケーキのアクセントでちょうどいい。
『これがショートケーキですか!』
『白色に赤色でとってもキレイ!』
『それにすごいふわふわで幸せ』
『周りの白いのも美味しいわ。くどくないし』
『身悶えするぐらい美味しい!』
エレーヌの反応が今までで一番大きい。
目が思いっきり輝いている。
『坊っちゃん、私も大好きですよ、このお菓子』
ロベルトも甘いの大好きだから、
喜んでケーキをほうばっている。
いい大人が口の周りの白くしながらケーキを食べる。
ロベルトは凄いイケメンだからいいけど、
普通のオジサンだとどうだろう。
『お坊ちゃま、作り方教えてください!』
エレーヌはさっそくスポンジの特訓コースに入った。
ロベルトも参加している。
何度も何度もスポンジを焼き上げるのだが、
ふっくらふわふわにならない。
冷めるとしぼんでしまうとかそんな感じだ。
実は僕も最初だけフワフワだっただけで、
その後はなかなかフワフワにならなかった。
3人でああだこうだいいながら、
確実にフワフワになるまでに1週間以上かかった。
◇
次にチャレンジしたのは、タルトケーキ。
タルト台はそんなに難しくない。
ビスケットを砕き溶かしバターを混ぜて
それを型に敷いて冷やす。
それだけでも十分においしいタルト台ができる。
売り物にするわけじゃないからね。
タルトにクリームを流し入れ、
いろいろなフルーツを乗せることで、
見栄えのいいものができる。
エレーヌたちも味よりも豪華さに心を奪われた。
そりゃ、色とりどりのフルーツをタルトに並べるだけで、
プロが作ったように見える。
三人で誰が一番豪華に見えるか選手権もやったよ。
三人とも一番を譲らなかったけど。
あと、できればチョコレートが見つからないかな。
スィーツの王様と言えば、やっぱりチョコレート。
前世では熱帯の限られたエリアで生産されている。
この世界にあるとすれば、海をわたる必要がある。
当分先だな。
でも、各種ハンバーガー、肉関係料理といった
メインディッシュに加えて、
おやつの時間やデザートのバリエーションが増えた。
3時にショートケーキなんて、この世界では出色の優雅さだ。
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