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正妃最後の呪い

【正妃最後の呪い1】


『スタンピードが正妃の第2の策ということか』


『間違いないでしょう。魔物はまっすぐこちらに向かってきました。周囲の村々の被害は驚くほど小さい模様です』


『村には僕たちの結界が張られているから少々の攻撃は受け付けないはずだが、それでもあのスタンピードにさらされたらあっという間に崩壊していただろう』


『それだけに今回の事件は人為的な操作が濃厚ですな』


『正妃の拘束は変わりないのだろうか』


『ええ。黒狼偵察部隊によると、相変わらず予断を許さないようです』


『正妃の力は強力な拘束魔法でも押さえきれていないということだな』


『はい。正妃の拘束されている地下室を中心に城の三分の一ほどが立ち入り禁止になっています。緊急的に城を放棄する方向で動いているようです』


『じゃあ、次の手は?』



 正妃の呪いは3つ。

 2つは発動された。

 さて、残る一つは。


 ここは王城の地下。

 本来は正妃の居室の地下にあたる場所だ。


 多数の犠牲者を出した末に封印された場所。

 結界でがちがちに固められていた。


 その中心にいるのは、正妃。

 いや、元正妃といったほうがいいか。


 それはすでに人の形をなしていなかった。

 見るからにおぞましい怪物に変貌していたのだ。


 王妃とて、ここまで醜い姿になるつもりは毛頭なかった。

 だが、暗黒魔法と嫉妬により狂気が増幅、

 王妃の内面が王妃の姿をも変えてしまった。



『父上、母上の件は何かの誤解です!私を地下室に向かわせてください!』


 健気にも、次男は母親を心配して

 王に掛け合っていた。


 次男は冷酷で黒い性格の持ち主ではあるが、

 母親に対する愛情はずっと変わらずに持ち合わせていた。


 だが。


『グワワワッ!』


 突然、次男は宮中で喉を掻き毟って

 苦しみ始めた。

 次男からは黒い霧がにじみ出し、

 次男の体をすっぽりと覆い始めた。


『ユベール様!』


 次男の名を叫びながら、

 お付きの者が次男を助けようとする。 


 しかし、その黒い霧に触れた瞬間に

 次々と霧に飲み込まれていった。


 急速に黒い霧は宮中に広がっていった。

 それは謁見室で政務をとる国王や宰相を飲み込み、

 やがては城全体を覆うまでに成長した。



 これが王妃の3つ目の呪いであった。  

 城に存在する全ての生命体から生体エネルギーを奪い、

 それを自分のものとする醜悪なものであった。


 しかも、触媒に自分の息子を指定するという、

 残忍な選択を行っていた。


 まだ正妃に理性の残っていたときに、

 その選択がなされたのだ。


 哀れな次男よ。



 城のほぼすべてのものは息絶えた。

 国王など、死体さえ残っていない。


 次男は。

 僅かに息は残っていたが、命は風前の灯火であった。



 城を覆った黒い霧は。

 禍々しさを増し黒い瘴気となったかと思うと、

 城を溶かし始めた。


 やがて瘴気は黒い渦を形成し始め、

 瘴気が王都に溢れ出す。

 目的は城から王都に拡大したのだ。

 

 瘴気は次々と住民や建物を溶かしていった。

 半径1kmに達しようとしているが、

 依然として勢力は衰えていない。


 ◇


『みんな、聞いてくれ。黒狼からの緊急報告だ。王都が大変なことになっているらしい』


『大変とは?』


『王都が黒い瘴気にすっぽり覆われているらしい。瘴気に触れると黒狼でさえも溶かされるといっている』


『ということは……』


『ああ。王都は全滅かもな』


『恐ろしいことに、勢力が拡大中です』


 王妃の最終目的。

 王国を黒い瘴気で覆うこと。


 ◇


 とりあえず、現場の近くまで来てみた。

 そばの森に転移魔法陣が設置してある。

 ドワーフのときに設置したやつだ。


『アニエス先生、どうでしょうか』


『なんと、禍々しい瘴気の渦。暗黒魔法でも相当高位な呪術ね』


『心当たりがあるのですか』


『断定はできないけど、おそらく暗黒魔法モルス・マカブレ。“死の舞踏”と呼ばれるものだと思うわ。書籍にしか載っていない伝説の魔法。数千年前に発動されたという言い伝えがあるものよ』


『どうすれば』


『文献によれば、この呪いは王国を覆う規模になるはず。対抗策はわからない。ただ、呪いの一種だから、アンチ・カースをぶつけるしかないわね』


ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

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