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第2話

 これはさすがに紹介された訳ではない。

 きっかけは彼が参加した学生時代の友人の結婚式だ。

 これがまた、たいそうな客人を迎えたものだった。

 新郎新婦どちらも人脈が広い家同士だったので、友人知人の数が半端なかった。

 そしてそこに居た花嫁側の友人の一人がシェリーだった。

 そしてスティーブンスもまた、そこで現在の嫁さんに一目惚れしたのだという。


「いや本当にびっくりした」


 当時彼は言ったものだった。


「僕の理想がそこに立っていたんだ」


 理想ってあっただろうか? と俺は当時思ったものだった。

 俺の理想は、言えば。

 あまり多くはなかった。

 俺は碌な家の出ではない。

 その碌でもない家とは縁を切っている給費生上がりということを話しても平気で陽気で、萎えない程度の容姿があればまあ、という程度だった。

 無論それでもハードルは高いのは知ってはいたが。

 だが何となくその場で退屈そうにしていた女がシェリーだった。

 何でも。


「せっかく美味しい料理が味わえると思ったのに」


と身も蓋もないことを嘆いていたのだ。

 その時の花嫁も、学校時代の級友ではあっても、さほど知った仲ではなく、数合わせ程度だったらしい。

 それでも参加したのは、両親の「出会いがあるかもしれないから行ってきなさい」という後押しと、「きっと今まで食べたことのない美味しいものが出るから」だそうだ。

 ところがなかなか色んな大物達があれこれやっている中では、ずらりと並んだ美しい料理になかなか手をつけられない、という訳だった。

 実際、その時皆出会いに必死になっていた様だった。

 それは男女だけではない。

 お偉いさん達に顔を売ろうとする奴も多かった訳だ。

 俺はさほどそこまで上昇志向が強い訳ではなかったので、彼女の気持ちも良くわかった。

 そこで、せっかくだから二人で協力して料理を食べないか、という話になった。

 そこで目をきらきらさせた彼女が実に面白かったのだ。

 それから何度か一人では入りにくい店に行くという食事のデートを(果たしてどちらがメインか判らないが)通して交流をはかった。

 彼女は陽気で美味しいもの好き。

 そしてとうとう実家に呼ばれ、お手製の料理を御馳走するという。

 緊張しながら赴いた先で、俺は料理に感動して涙を流した。

 家庭でこんな美味しいものが食べられるなんて、と。

 そんな俺の姿に何やら向こうの両親が妙に感動してくれて、とんとんとん拍子に結婚に至ったのだ。

 俺がそうしている間にスティーブンスも一目惚れしたという女性に地味ながらアタックしていったらしい。

 相手の彼女は何やら自分が地味なことにコンプレックスを持っていたらしい。

 なのに彼には珍しくぐいぐいと迫ってきたことでほだされ、結婚に至ったそうだ。


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