自分の心なんて解る人いるかね?
なんとなく書き始めました。
ノロノロやります。
・・・・・・のテスト
まぁ良いや、初めまして。俺の名前は蓬莱秋夜と申します。
秋の夜なんて洒落た名前をつけた両親には感謝したいところだが、自分の名前が好きなんて奴はあまり居ないだろう。
ところで、俺の名字である蓬莱家なんだが、これがまた厄介な家でな。先祖代々鬼を封じ鬼を滅し鬼を断つって酔狂な家柄なんだわ。
本家であるウチはな、そんな酔狂が祟って、鬼がうじゃうじゃ生まれる鬼門ってのがある場所に居を構えやがった。馬鹿じゃねぇのウチの祖先……。
まぁ、今更生まれを嘆いても仕方がない、生まれちまったからには長男としては家を継がにゃならんと来る日も来る日も刀を振り続けた訳だ。
そうそう、家は蓬莱幻刀流って流派の剣術指南役であり、総本山なのがウチなわけで、そりゃガキの時分から期待され続けて鍛え続けられた。
十にもなる頃には、木刀ヒュンヒュン鳴らして親父様にガンガン殺されかける一歩手前までが日課だったな。
今思えば、アレは鍛錬というなの洗脳だったのではと、結論を出さざるを得ないな。我ながら良く生きてたもんだ。
さて、この蓬莱幻刀流なんだがこれまた一風変わったというか、人間離れしたことが出来てようやく一人前と言われるようになる。
その名も『幻刀顕現』
まぁ、これは簡単に言えば自分にあった武器や防具など、他にも色々あるそうだが、心から望む武器を生み出す能力ってやつだ。
原理もわからんし、理論も知らん、できる奴はできるし、出来ないやつはできない。
でだ、この蓬莱幻灯流の流派での門下生達は12歳になると、この幻刀顕現が行えるようになるよう二年間の修業というなの拷問を受けることになる。
そしてこの拷問に耐え抜き幻刀顕現できたときに、晴れて鬼門の鬼退治という名のさらなる苦行に迎えるようになるのだ。
さてさて、その拷問に耐えきっても幻刀顕現出来なかった奴はどうなるかと言えば、他の国へ島流しされ諜報活動を行ったり、この世界を冒険する者たちになる訳だ。
そりゃ温くない苦行をした訳だからそんじょそこらの十四才とは強さが違う、各国挙って出来損ないを雇うという寸法だ。やったね。
でわでわ、その幻刀顕現できなかった出来損ないが本家の跡取りとなったらどうなるんだろうな?
そう、蓬莱秋夜。・・・・・・俺のことである。
「・・・・・・秋夜よ。何故、お前が顕現できぬのだ。剣術しかり、気術しかり、全てが歴代当主に比べても高い水準を満たしておるにも関わらず・・・・・・だ」
まるで巌のような男。太い腕、長身で筋肉質な体躯に鋭い眼光。目の前に座る気迫は、気を抜けば気絶しそうなほどの圧を感じる。
この恐ろしい存在が、俺の親父様である。ガキの頃から何度も殺されかけたせいで、今でも前にすると心胆が凍えそうになる。
「心に向き合えとか言われて、滝に打たれたり一日中蝋燭の火を見て座禅したり、他の門下生たちと変わらない努力をしたつもりだったんですけどね。まぁ、結果駄目でした。あはは」
「あはは、では無いわこの戯が!」
「ひぃ! ごめんなさい、ごめんなさい。生まれてきてすみませんホントすみません」
必死に土下座する。怖いよこの人まじで人間やめてるって、この人が鬼だよ。ホント誰か退治してくんねぇかな。
「まったく、妹である凜夏は、十の頃には既に顕現できたというのに・・・・・・」
蓬莱凜華、今年十三になる俺の可愛い妹様であり、蓬莱家史上最強と目される天才である。
正直、妹様と比べれば俺なんて虫みたいなものだ。ありゃ駄目だ強すぎる。現役バリバリの門徒達すら相手にならないくらいだからもうどうにもならんな。
「凜夏に家督は譲りますので、俺は他と一緒で島流し・・・・・・追放って感じで良いんじゃないですかね?」
「お前を世に解き放って良いのか、親として判断に困る。半端に強い上に、悪知恵だけは一級品・・・・・・いっそ一思いに」
なんだか、最後に剣呑な声がブツブツと聞こえた気もするが、とりあえず正座の姿勢のまま爪先を立たせ一瞬で逃げられる準備だけはしておく。
「あ~親父様、思案中に申し訳ないんですが、婚約も破棄してやっぱり追放ってのが一番穏便じゃないですかね?」
「・・・・・・そうであった。遠野家にもこちらの愚息のせいで婚約を破棄せねば・・・・・・気が重いな」
苦労をかけます親父様。ちなみに遠野家とは蓬莱幻刀流の重鎮である。ぶっちゃけ、コイツラの家に全部投げても良いんじゃない? ってくらい優秀な一族である。
先祖代々蓬莱家に尽くしてくれるその家のあり方は、良く言えば蓬莱家の従臣だが、影では蓬莱家の犬とまで言われている。
その忠誠心は留まることを知らず、蓬莱家に尽くし尽くしてくれる。正直怖いくらいであるが、これまでの歴史で蓬莱家との婚姻は無かった。
恐れ多いと遠野家は蓬莱家からの婚姻その尽くを断り続けていた。
しかし、時代は進み血も記憶も薄れ、ようやく俺と同じ歳に不運にも生まれてしまった遠野家の遠野華月と言うなの娘との間に婚約が行われた。
十の頃に決まった婚約は、門下一同挙って喜び祝福されたものだ。それを破棄か・・・・・・あぁ、恐ろしい。
「正直、婚約者の華月には悪いとは思いますが、あ、そうだ、俺が失意の結果、暴走して勝手に鬼門に行って死んだってことにするとか!」
「ぶつぶつ・・・・・・やはり・・・・・・いっそ・・・・・・」
親父様は遠い目をしてぶつぶつと何やら仰っておる。恐ろしい。あぁ、恐ろしい。
「とにかく、明日の卒門試験で幻刀顕現ができないことが解り次第、俺は島を出ていくんで一先ずそれで手を打ちませんか?」
「・・・・・・るか・・・・・・いや、しかし・・・・・・捨て・・・・・・」
「はぁ・・・・・・」
完全に話を聞いていない状態になったので、俺はため息一つ落とし立ち上がると、そそくさとその場から立ち去った。
読んでくれていたらありがとうございます。