君に届け!?
2人の胸の鼓動は早くなっていた。
油断したら弾けてしまいそうな程の心臓の動きと戦いながら伝えたい言葉を頭で整理する。
言わなきゃ、言おう、言えないを右往左往する。
先に伝える決心をしたのは拓海だ。
2人を静寂がが包む頃、青年は想いを言葉にする。
「遥、好きです!」
ラブコメアニメの主人公はもっとカッコいいセリフを言っていたような気がする。
昔見ていた恋愛バラエティ番組では告白の言葉はもっと長かった気がする。けれどこの言葉以外は発音できなかった。
一応用意したセリフも意味を持たなかった。
「わ、私も!拓海が好き!」
全身に力を込めて、昔から声が小さくてよく聞こえないとみんなに言われた。
だけどこの気持ちだけは絶対に伝えたい!
変わる勇気をくれたのは拓海だから。
「やったぁ!!」
拓海の体は勢い良く遥の体を包み込んだ。
小さくてか細い体だ、この体から振り絞られた好きが胸を熱くさせる。力一杯抱きしめる。
「私、嬉しい。絶対離れないっ!」
遥の両腕も拓海を包み返していた。
男の人の体ってこんなに暖かいんだ。
今は引っ付いていたい、ぎゅっと、ぎゅっと強く。
「あれ?冷たい。」
「雪だね。」
白い雪が2人を祝福するように降り注ぐ、出会った頃の桜吹雪は雪へと姿を変え、一つ一つ蓄積された想いのように積もってゆく。
二人は忘れているけれど今日はクリスマス。
ちょっとベタかもしれないけど二人の記念日はホワイトクリスマスになったのだった。
ー
「百合!本当にごめん!!」
「私が悪いんだよ。それに· · ·」
「それは無しよ!二人が付き合ったのは私も嬉しい!それだけ!」
「ありがとう!百合大好き!」
「私もよ!」
拓海を巡る二人の確執も雪解けした。
百合の大きめの胸が遥の小さな顔を受け止める。
拓海の胸には百合に対する罪悪感が少し残っていたけれど、二人の仲直りを見て少しだけ安心した。
安心した、それは束の間で直ぐに凛子の追及を受けることになるのだった。
「おい!私の子猫ちゃんになんて事を〜!」
「わー!辞めてください凛子さん!2人とも助けてよ!」
「私たちは苦しんだんだもん、ちょっとくらいは、ね?遥!」
「そうだね!ははは!」
ちなみに二人が結婚するのは10年後、スピーチを務めるのが百合になるのはこの時点では秘密の話だ。
次回、最終話です。




