第三十二歩目「木津遥のユウウツ」
体育館近くの広場に拓海と遥は向き合っていた。
オレンジ色の空が辺りを包み、気温は少しだけ下がり、心地よくなってきた。
優しく吹いた風は二人の髪を揺らす、前髪が少し伸びたのだろうか、拓海の片目が見えづらくなっている。
遥は一歩を踏み出すように、その想いを伝え始めた。
「私ね、拓海君が好き。」
「えっ。」
「百合が好き、光国先輩、康弘先輩、凛子先輩、裕美先輩が好き 。」
「ま、まぁそーなるよねぇ。。」
拓海はある程度予想出来た事だが、それでも別々に好きと言われるとやはり3秒間は期待してしまう。
「みんなの事が好きだから私もみんなに追い付きたい。百合は自分で一歩を踏み出した、先輩たちはそれぞれ何か持ってる。私には何も無いんだ。だから私にも出来ることはして行きたい。」
遥の頬には涙がつたっていた、一生懸命、こぼれ落ちないように拭いながら、伝える。
遥は俯いてしまったが、優しい声を聴いて再び顔を上げる。
出会ったあの日と同じような笑顔で拓海は手を差し伸べていた。
「ごめんね遥。そんな苦しんでるなんて思いもしなかった。でもこれだけはわかって欲しい。遥は何も持ってないなんてありえない。遥には何より仲間の事思う気持ちの強さがあるじゃないか。成長したいのは俺も一緒だよ。だから、一緒に歩こうよ。ね?」
「た、拓海君。ありがとう!ごめんね!」
拓海は胸の中がスっとして、世界が広がった気がした。自分の選択に間違いはなかった、遥と出会えた事、オタク同好会に入った事。遥の事は好きだけれど、この件については焦らないでおこう、少しずつ、少しずつでいいからいつかは遥と手を繋いでこの桜並木を歩きたい。
「ねぇ、遥!せっかくだからアニメカフェでご飯食べていこう!」
「うん!」
二人は足並みを揃えて、踏み出した。
遥は少しだけ胸がチクリとした。つかえが取れたはずなのに、どこか息苦しいような気がする、さっき走ってきたから疲れたのかなと気にしなかった。
こうして2人の喧嘩も収束し、再びオタク同好会に平穏が訪れた。
ー
定期考査を終え、オタク同好会にも夏休みがやって来た。
とはいえ、部室のクーラーが故障しており、今週は部室が使えない。
一行は室内型プールパークへと訪れていた。
「プールよ♡遥たん行きましょっ!さぁさぁ。」
真っ赤なビキニに身を包んだ凛子は自慢のスイカを遥に押し付けるが、これは女性のプライド革命だ。遥はそっぽを向いた。
「嫌ですっ!ぷぅー。裕美さんあっちで泳ぎましょう!」
「うむ。凛子は来るな。焼きそばでも食べてろ、牛。」
「う、うぅ。なんか二人とも当たり強くない?百合ちゃんは?あれいない?み、光国ってなに男同士でいちゃついてんの!もう知らないもんね!」
光国と康弘はガチンコ対決、水鉄砲を購入し、FPSごっこに講じていた。
凛子はブツブツ文句を言いながら屋台の列へと参加して行った。いや、食うのかよ。
その頃、百合は拓海と行動していた。
百合は康弘からの命を受け、作戦を実行に移そうとしていた。
ー
「いいか?デカリボン。お前胸がでかいんだよな?プールならこれを活かさない手はない。ただ乳女のようにあからさまはいけない。さり気なくアピールだ。」
いつの間にか康弘は百合の恋愛サポートを買って出ていた。ギャルゲーしか知らない彼に何がわかるのだろうかとツッコミたいところだがここは割愛。
ー
「やってやるわよ!」
百合は気合を入れ、ボーッとしていた拓海を捕まえて、皆の見えない所まで走っていった。
さてさて僕オタの世界では夏真っ只中!
次回はプール編です!!




