第十八歩目「いけませんわッ!」
いつも通りの一ノ瀬大学、いつも通りの授業、いつも通りの学生食堂。
しかし今日は、否、今週から一つだけ拓海の悩みの種が、彼を襲っていた。
「おい、千秋。いい加減にしてくれよ。」
「駄目ですわ!拓海の秘密を暴くまで私は帰れませんわッ!」
週が始まった昨日から拓海の母である時枝の差し金で拓海の内偵を依頼された千秋。
登校、講義、帰宅、全ての行動に密着されていた。
「やめなさいよ、拓海から離れなさい。」
「そうだよ、嫌がってるよ。」
拓海に引っ付く千秋を強引に引き剥がそうとする百合と心配そうに様子を伺う遥だが、千秋の底なしのエネルギーに全く歯が立たない。
「オーッホッホ!!無駄ですわッ!」
ー
部室では上回生会議が行われていた。
拓海は母にオタク同好会の事を知られたくないが故、千秋が付き纏う間、オタク同好会としての活動を自粛している。
「それにしても拓海のやつムカつくわね。なんで母親に同好会の事隠すのよ!」
「まぁ、そう言うな。お前にも隠したい事の一つや二つくらいあるだろう。」
「そうだよ。凛ちゃんが心配するのも分かるけど大丈夫だよ☆彼はちゃんとしてるから☆」
「うっさい!アホ!」
凛子は拓海の煮え切らない態度にイラついていたが、裕美と光国は事態を静観するスタンスをとっていた。
「よく出来た後輩よ、トゥルーエンドを目指せよ。」
ー
「いい加減尻尾をお見せになって!拓海!」
「何も隠してないよ。もう明日からこないでくれよ。」
遥は尻尾を振りながら拓海にくっつく千秋が何故か気に食わない。この釈然しない気持ちはなんだろう、とにかく拓海君が可哀想だ。
「いい加減にしなよ!千秋さんがくっつくから拓海君オタク同好会にも顔出せないじゃない!...あっ!」
いつになく逆上してしまう遥に秘密を隠し通せる余裕はなかった。慌てて引っ込めた言葉も千秋は目敏く拾い上げる。
「オタク同好会...ですって!詳しくお話を聞かせて頂こうかしら?」
「遥...くそっ。」
「とりあえずその同好会とやら、見せてもらいますわね。」
遥は今にも泣き出しそうになったが、百合から励ましを受け、拓海からもお咎めの言葉はなかった。
ー
部室を訪れた千秋はオタク同好会を偵察する。
「まぁ、一応見せて頂きましたわ。私としてはオタク文化は別に何とも思いません、けれど拓海が部員なのは承服できません。お母様はそのような趣味をよくお思いになっていません。」
淡々と、先程までの騒がしさから一転して事情だけを説明する千秋。今にも飛びかかりそうな凛子を裕美と百合は必死に食い止め る。
「拓海!!あんたはどうなのよ!!」
凛子が投げ掛けた怒りの問いに拓海はすぐに答えを出すことが出来なかった。
彼にとって親は母たった一人、それに歯向かう事がどういう事か、それを理解している。
結局の所、回答する事が出来ずに逃げ出すように部室を後にした。
ー
その日の夜は激しい後悔の念にかられていた。
いつもならすぐに返信をする遥からのメッセージも返す気にならず、ベッドの上で項垂れていた。
耳元のスマホが振動する、いつもより五月蝿く、疎ましく感じる着信をとった。相手は光国だ。
「もっしー☆イマドコ?部屋でもしかしてエッチな事でも?」
「茶化さないで下さい。今そういう気分じゃないです。」
「俺っちはさ、拓海っちがどういう決断をしても尊重するよ。拓海っちが何をしたいかよく考えてみてネ☆」
光国はいつも何かを見透かしている、その何かが分からないけれど、拓海は深く考えた、そしていつの間にか眠りについていた。
ー
翌日拓海は決心した。
そしてオタク同好会のメンバー、そして千秋を集め部室を訪れた。
更新が滞った際に、一泊二日の旅行に行ってきました。
色々とリフレッシュに繋がりました!




