表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

よく見かけない方のプロローグ

ハイファンタジー熱が高まったので見切り発車で投稿します

「結論から言うと、あなたは死にました」


 俺の正面に座る美少女がそう伝えてくる。


「しかしあなたの死は本来もっと先……具体的に言うと93歳で老衰、となるはずでしたがこちらの不手際により事故死を起こしてしまいました、まずはその点をお詫び申し上げます」


 そう言って椅子の横へ立ち、深々と頭を下げる少女……というか俺そんなに生きる予定だったんだ……。


「まぁ頭を上げてください、事故なんて予測できるものでもないですし。特にトラックによる交通事故なんてーーー」

「トラックじゃないですよ?」

「……はい?」


 いやいや、確かに俺は死ぬ直前にトラックを見たはずなのだが。


「あなたが轢かれたのはこちらにて……失礼、神界にて食用飼育されている『流星牛』という牛です」

「食用牛」

「はい、食肉解体業者が運び出す際の転送事故で不運にもあなたが暮らす地域へ誤転送されたようで」

「待って、俺はトラックのクラクションも死に際に聞いてたはずなんだが……」

「転送事故が起きた際に地域を対象とした幻術がかけてあった為ですね、突然トラックとほぼ同じサイズの牛が現れたら大騒ぎになりますから。死に際に聞いたというクラクションは流星牛の鳴き声が幻術によって違和感を感じないように修正されたものかと」

「はぁ……」


 どうも俺は、不思議現象に巻き込まれたようだーーー




 普通の会社員で、普通に暮らして、普通に生涯を過ごすはずだった俺ーーー椎名 悠叶(しいな ゆうと)は、19歳で事故死した。


 向かいの少女は神界の事務処理を担当しているらしい。名前は……ミシェリア、と言ってたか。

 今までの会話通り、俺の死が神界側の事故に巻き込まれた形であり、本来の寿命と比べて遥かに早い死を遂げてしまったことに対しての謝罪と、余してしまった寿命に見合う補填をという事で死後すぐの俺の前に現れた。


 今いるただただ真っ白い空間も条件の擦り合わせのために急遽用意したとか。

 まぁ初対面の最初の一言とか「唐突で申し訳ありませんが、あなたには異世界への転生をお願いしたいのです」とかだったから「ごめんちょっとわけがわからない」としか返せなかった。そして「なんでここまでして分からないかな?」みたいな表情をされた、解せぬ。

 事実として何も知らないまま気がついたら真っ白空間だった訳だからこの反応をしても仕方ないと思う、俺は悪くない。


 結局俺の身に何があったかを確認する事になった……ってのがさっきの会話である。




「では改めて異世界への転生についてのお話をさせていただきます」

「うん」


 そう言えば転生するって話だったな、本題は。


「一応伝えておきますと元の世界……地球に転生できない理由として、生前の記憶を消しても無意識のうちに生前の行動を取ってしまい『あの人は死んだ彼の生まれ変わりでは?』ということでトラブルの引き金になる可能性がありますのでお断りさせていただいております」

「なるほど」


 実際、人格が変わったとか他人の記憶を持っているとかでよくよく調べりゃ既に亡くなってる人物の親族くらいしか知らないような特徴までそっくりな行動をとる、というオカルトじみた内容をTVで見たこともある気がするしな。


「なので必然的に異世界への転生をお願いすることになるのですが……その点についてはよろしいでしょうか?」

「大丈夫、確かに面倒事になるだろうし納得した」


「では次ですね、転生した後の年齢についてですが……」

「あれ、生まれたところからってわけじゃないんだ?」

「……回避不可の赤ちゃんプレイがお望みであれば構いませんが」

「ごめんなさいそこまでメンタル強くないです」


 おかしいな、異世界転生ってワクワクしてくるものだと思ってたら唐突に現実を叩きつけられたぞ?


「ですよね、でも転生先の歴史や地理を理解したりする期間はやはり必要だと思いますし、15歳になれば成人として扱われるような世界なので3歳での転生をこちらではお薦めしております」

「3歳……まぁいいか、それで」


 3歳でもかなり幼いと思うが……まぁお薦めという事ならば妥当なところだろう、多分。


「容姿についてはどうされますか?強く希望されるのであれば転生の際に女性に性別を変えることも」

「しないから。顔は……絶世の、とまでしなくていい。親しみやすさが目立つけどよく見りゃ美形で、良質な服でも着られてる感じが出ないように頼みたい。体形も痩身だけど健康的で整った感じが良いな」

「……やけに拘るんですね?」

「悲しい事に生前は容姿体型が優れているとは口が裂けても言えなかったから……」


 異性の友達なんて小学校低学年過ぎたらまるでいなかったし、バレンタインなんて校内が気持ちチョコレートの匂いが強いだけの日だったからな……うん、泣いてないぞぅ。


「体形については今でも仰った体形に近いと思いますが……顔はともかくとして」

「顔はとか言うのやめて。体形は……平均身長より高くって事で」

「175は平均から見て充分高い方では?」


 確かに平均身長から見たら高い方だけどさ。


「周りもそれくらいだったから……」

「心中お察しします」

「慰めかは分からないけどその一言でも充分つらい」


「それと、転生の際に身につける優れた能力についてなのですが」

「あー、ネット小説とかで見かけるチート的なアレ?」


 実は結構気になってた。せっかくの異世界転生だし素敵能力はやはり欲しい。


「そうですね、先程の"優れた容姿"程度では事故の賠償としては無いに等しいので」

「優れた容姿を"程度"って。"無いに等しい"って」


 俺の約10年に渡る悲しみを何だと思ってやがる……とまでは言えなかった。

 ……言えなかった。


「紛れもない事実ですよ。文字通り神々の所在地であり理想郷にも喩えられるような場所で起きた……生前で例えるならは『超有名企業の起こした業務上過失致死』です、しかも被害者に落ち度が微塵もなく本来の寿命から遥かに短い生涯となってしまったとなれば"転生先で優れた容姿を与える"なんて億の賠償金を5万で済ましてしまうようなものですよ?」

「……そこまでか」


 そこまでの意識がなかったとはいえここまで重大案件だとは思ってなかったな……。


「えぇ、なので思う存分希望を挙げてください。ちなみに魔術師の放つ魔法やら神官の起こす奇跡やら平然とある世界へお送りするので『魔法が使えるようになりたい』とか言われなくても付いてます」


 魔法は普通に使えるような所か……それならば。


「……大前提として、多才にして欲しい。芸術家なのに歴史の教科書に載ってるあの人物……より多才な『万能の天才』に」

「まぁ問題無いですね、チートにありがちな一点特化ではないんですね?」


 一点特化も別に悪くはないと思うよ、けれども。


「行った先で何をやるべきかは状況次第だからね……『一点特化で行ったはいいけど対応出来なくて詰みました、もう死ぬしかねぇ』とかなったら笑えないだろ?」

「命あってこそ、って事ですか……生存能力に関連するものも足しておきましょうか?」

「お願いします……まだ追加できたんだ?」


 割とぶっ壊れと思えるような指定をしたと思ったんだけどな。


「『万能の天才』にあたる能力は用意が無いみたいなのであらゆる才能系の能力を放り込んでも……いやこれ思ったより多い、けど……まぁ大丈夫だと思いますよ?いずれもチートと言うほどチートしてる能力では無いですし、多才な人なんて皆無というわけでもないですから」

「そんなもんなんだ……」

「そんなもんですよ、ついでに言うと補填が5万だったのがやっと桁が揃った、くらいですよこれ」


 これで充分かと思ってたから他を考えてなかった……まぁありきたりな所でいいか。


「……『アイテムボックス(嵩張らない荷物入れ)』でも足してもらうか」

「容量と出し入れ可能なサイズの制限が無く、時間経過は任意のものでいいですかね」

「むしろそれだけ高性能そうな代物を選べることに驚きだよ」


 ぶっちゃけ財布代わり程度のものでも充分とか思ってたのに。


「最近の転生者には定番すぎて値崩れしだしてるんですよ」

「値崩れ」


 ちょいちょい現実的な表現ですごく調子が狂う。

 というかチートの相場的なものがあるのかよ、むしろそっちが気になるわ。


「さて、能力も決まりましたし後は転生するだけですが……今のうちに聞いておきたい事とかあります?」

「あー……いや、特には」

「そうですか、では良い生涯を」


彼女がそう言うと、俺の意識は周回の白色に融けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ