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エンド・オブ・ライフ  作者: Motom
6/14

第5話 美雪

## 2013.7.1


 月曜日の昼休み教室で晴夫は考え事をしていた。

 授業が終わったら田所美雪に会いに行く作戦だ。

 そこへ山野と太田がやってきていつもの様に話しかけてきた。


「晒し板見たんだけどさ」

「昨日ブラックレインがカニを出してきたらしいぞ」

「カニ?」

「カニと呼ばれている機体があるんだよ、超レアなやつ」

「クラスタシアEXて名前のマシン」と山野。

「へー」

「へーじゃねーよ」

「カニはサーバーに各2機、両軍に1機づつしか無い」

「年末年始のイベント優勝者の副賞だったんだよ」

「当然、敵軍はオーディンが持ってった」

「オ、オーディンが乗ってたの」

「なんだよ急にどうした」


 晴夫が机から下半身を乗り出し太田にしがみ付く。

 急に大声で聞き返したので2人はびっくりした。


「違うよ」

「落ちつけよ」

「そっか、ごめん」

「乗っていた奴は"YUKIUSAGI"だって」と山野。

「リアル女みたいだぜ」

「晒し板によると、オーディンに貰ったと言っているらしい」

「リアルでも付き合ってたとか」

「ビッチだとかな」と山野。

「どうした、晴夫」

「何黙ってんだよ」


 晴夫は考え込んでいた。

 白いウサギの2本の腕が赤いハサミになったロボットを想像する。

 いやそれだけじゃない、余りに自分の憶測と一致しすぎていた。

 心臓の鼓動が聴こえる程、ドキドキし心拍数が上がっている。

 もはや2人の言葉は聴こえていなかった。


 "YUKI"USAGIと美"雪"余りにも単純で出来過ぎていた。

 しかも現実で兄、秋雄と付き合っていたのは田所美雪だ。

 この情報で更に信憑性が増し、当たっているのではと思った。


 放課後、田所美雪を待ち伏せる事にした。

 山野と太田とは校門で別れた。

 高等部の正門で待つか最寄りの駅前か地元の駅の改札か

 学校近くでは人目に付き噂になるのが躊躇われた。


 晴夫は暗くて大人しいイメージで女子と話す事は無い。

 太田も見た目はスポーツマンだが中身はガチオタだ。

 クラスの女子と普通に喋っているのは秀才の山野くらいだ。


 誰かに見られない様に地元の駅が確実だ。

 改札口が見える駅前のにベンチ座る。

 田所美雪が通るのずっと待つ事にした。

 1時間程でその時がきた。

 改札口に見覚えのある女子の顔が見えた。


 美雪は白い長袖のブラウスと

 制服の様なデザインのグレーのフレアスカートをはいていた。

 紺のソックスに黒いローファーが今時の女子高生のスタイルだ。

 晴夫は「きた」と小さく呟いた。


 美雪は改札を出ると晴夫の事には気が付かず

 目の前を通り過ぎていった。

 晴夫は慌てて後ろから美雪に声を掛けた。


「田所さん」


 美雪はナチュラルな黒髪を後頭部の後ろで一つに束ねている。

 晴夫が葬儀で見かけた時と違っていた。

 学校では束ねているのか思った。

 美雪は晴夫の呼び掛けた声に驚いて振り返った。

 最初は驚いた顔を見せたが直ぐに笑顔に変わった。


「晴ちゃん、どうしたのこんな処で」

「あの・・・この前は兄の葬儀に・・・その」

「あっ」と小さく発する。

「来て頂きありがとうございました」

「いいえ、この度はご愁傷様でした。晴ちゃん気を落とさずにね」

「田所さん、ちょっと聞きたい事が・・・」

「美雪で良いわ、歩きながら話す? それともお店入る?」

「美雪・・・さん」


 と呼んで晴夫は帰り道の方向へ歩き出した。

 兄、秋雄と美雪は同級生で家も近い。

 幼稚園の頃から3人、

 いや他の家の子も含め近所でよく遊んでいた。

 晴夫が小さい頃は「美雪ちゃん」と呼んでいた。

 美雪は歩きながら晴夫に話かけた。


「聞きたい事って何?」

「あの・・・この前ノートを持ってきましたか」

「うん、お通夜の時に晴ちゃんのお母さんに」

「ゲームの攻略が書いてあるのは見ましたか」

「あ、あれゲームの・・・秋くん、難しい勉強しているなと」

「まさか」

「もう大学の勉強かなって・・・秋くん頭良いし」

「美雪さんはゲームやらないのですか」

「うん、やんない。苦手なの、DSなら持ってるよ」

「任〇堂」

「そう流行ったでしょ頭の良くなるゲーム」

「う、うん」

「何その返事・・・うち来る?」

「え」

「おいでよ、お母さん喜ぶから」


 そう言うと晴夫の家の方向へ向かわず

 白い壁の最後の曲がり角を曲がらず真っ直ぐ進んで行く。

 そこに田所美雪の家がある。

 美雪は玄関を開けて中に入る。

 晴夫はそれに続いた。


「お母ーさーん、晴ちゃん来たよ」

「ホント、いらっしゃい」


 エプロンを片手に現れた。


「こんにちわ」

「晴くん、気ぃ落とさないでね、秋くんの分もがんばるのよ」

「はい、ありがとうございます」

「お母さん、お茶持ってきて」


 美雪は階段を上がる。

 晴夫は1回お辞儀すると美雪に付いて階段を上がった。

 美雪の母親は専業主婦だ。

 晴夫はいつも母さんが家にいて羨ましいと思った。

 美雪の家に来たのは小学生以来だが

 高校生にもなると随分と部屋の様子が変わっていた。

 最近まで女の子だったはずが大人の女の人に思えた。

 本棚には参考書などが並んでいた。

 晴夫はドキドキしながら入ってきた扉の前に突っ立っていた。


「これ見て」


 美雪は机の上のノートパソコンを開いて電源をいれた。


「古いでしょ」

「あ、僕のもこん位です」と言って机に近付く。

「秋くんのは凄いんでしょ? 20万もするの買ったって」

「うん、兄はそれを3台持ってて」

「えぇー」


 美雪は凄く驚いた。

 どんなに高性能のゲーミングパソコンでも

 1度に同じ物を3台も持っているのは特別な人に思えた。

 複数のパソコンで複数のアカウントを持ち

 複数のキャラクターを操作するのはオンラインゲームの

 プレイヤーの中では割と聞く事ができる。


「3台でゲームするの? どうやって?」

「うーん」


 腕は2本しかない同時に操作できたとして2台までだろう。

 後の1台はどうやって操作するのだろうか。

 美雪は考え込んでいた。


「ツールを使うみたいです」

「ツール?」

「自動で動かすソフトを使って」


 秋雄が"BOT"と呼ばれる自動ツールを使っていた噂を読んだ。

 真意は解らないが自動制御ソフトを使う人もいると話した。

 もちろん晴夫も山野からの受売りで話したに過ぎなかった。


「ふーん」

「ちょっと触って良いですか」

「いいよ、解る?」


 美雪に代わりマウスを手に取る。


「これ僕のと同じOSだから」


 スタートボタンを押してコンピューターのプロパティを開いた。

 プロセッサ"Celeron"の文字を確認した。

 このCPUでは軽いゲームならともかく

 大規模オンラインゲームは動かない。

 つまりUFOはできない。


「どう?」

「すいません、ありがとうございます」


 晴夫はマウスから手を話した。

 これで美雪が秋雄のキャラクターを取った事実は無くなった。

 いやまだ漫画喫茶からログインしているか可能性はある。

 晴夫はどうやって美雪から聞き出すのか考えていた。

 その時、美雪の母が紅茶とケーキを持って部屋に入ってきた。

 ティーカップをテーブルに置く。


「熱いから気を付けてね」

「晴くんも来年、高等部に上がるのでしょ?」

「はい、そのつもりです」

「美雪の後輩ね、これからも仲良くしてあげてね」

「もう、お母さん」

「晴くんも大学行くの? 秋くんみたいにもっと上の大学?」

「いえ、まだそこまでは決めてません」


 秋雄はもっと偏差値の高い私立大か国立を受験する筈だった。

 その事を晴夫の母から聞いて知っているのだろう。

 美雪の母は「ごゆっくり」と言うと部屋を出て行った。

 2人は床に引かれたカーペットの上に座り紅茶を飲んだ。

 晴夫は話の続きをしゃべりだした。


「兄のノートにゲームのログインパスワードが書いてあったんです」

「ログイン・・・」

「ゲームをやる時に使うパスワードです」

「そうだったの」

「ノートに美雪さんの字が書かれてたので」

「あ、あのノートに?」

「はい」

「前に、秋くんに試験範囲をまとめてあげたの」


 美雪が最初にテスト範囲の要点をまとめたノートを渡した。

 去年の2学期の期末テストの範囲がまとめてあった。

 しかし秋雄はテストを受けに来なかった。

 3学期になり秋雄の進学が心配された。

 美雪は次の3月期の期末テスト範囲をまとめる為

 ノートを返して貰いに行ったと話す。


 秋雄はその時2年に成れなかったら

 高校は退学して高認を受けると告げていたらしい。

 返されたノートの中程には秋雄の文字が書かれていた。

 気が付いていたがゲームのアカウントとは思わなかったと言う。


 学校では教職員会議が開かれ

 担任教師達が秋雄の進学について話し合われた。

 その結果、秋雄は1学期に行われた「全統高1模試」の結果が

 学年トップであった事とスクールカウンセラーによる

 定期訪問の報告書と担任の配慮と診断書の届け出により

 2年への進学は許される事に決定した。


 美雪はその事を母同士の会話から伝わって聞かされた。

 3学期の期末テストの時にはノートを渡しには行かなかった。

 それ以来、秋雄と美雪は合っていないと言う。

 そして渡しそびれたノートはお葬式の日に秋雄の母に渡された。


 美雪は制服の様な格好のままでケーキを食べていた。

 ふと手を止め、立ちあがるとノートパソコンを操作した。

「これ見て」と言ってパソコンの画面を晴夫に見せる。

 モニターに開かれたウインドウに1枚の画像が見えた。

 それは高等部の正門前で並ぶ1組の男女の姿だった。


 晴夫はこれに似た画像を見た事がある。

 2人が入学式の朝に高等部の正門前で記念に撮影した画像だ。

 それぞれの両親がデジカメで撮ったのだ。

 可愛く笑う美雪と照れて視線を右に反らす秋雄。

 兄らしいと晴夫は思った。

 美雪はあの頃より女ぽく感じられた。


 視線をパソコンから外すと美雪の横顔を見た。

 美雪は急にポタポタと大粒の涙を零した。

 頬を伝い手やテーブルの上に落ちる。

 声を殺して泣き出した。

 晴夫は掛ける声が解らず慌てる。

「ごめんね」と美雪は言っている様だが声に成らない。

 晴夫も釣られて目に涙が溢れてきた。

 美雪は今も秋雄のことが好きだったのだろうと考えた。


 晴夫は自分の涙を手で拭う。

 美雪が落ち着くのを待った。

 美雪は秋雄のアカウントを盗んだりはしない。

 そう確信した。


「ごめんなさい、僕もう帰ります」


 晴夫は切りだした。


「え、ごめんね」


 傍にあったタオルを手に取り涙を拭く。


「ごめんね」

「ううん」


 晴夫の方が悲しいはずなのにと美雪は責任を感じる。

 階段を下りると玄関先で美雪の母に合った。

 晴夫は「ごちそうさまでした」とお礼を言って靴を履いた。

 美雪の母は「また遊びにきてね」と晴夫に声をかけた。

 美雪も遅れて玄関先まで見送りに来た。

 もう泣いてはいない元気よく手を振る。

 晴夫は振り返りもう一度軽く頭を下げてお辞儀をした。

 晴夫も美雪を余計に悲しませる結果になった事を悔やんだ。



## 2013.7.10


 晴夫が美雪に会ってから約1週間が過ぎた。

 その間に1学期の期末テストも終了していた。

 もう直ぐ中学最後の夏休みだ。

 晴夫にはゲーム三昧になる事が予想された。

 午後は授業が無いので直ぐに帰宅しゲームをしようと思う。


 帰宅後、兄の部屋に篭る。

 両親は留守なので問題ない。

 UFOにログインするとメッセージが届いていた。

 封筒の形をしたメールマークのアイコンが右下隅に出ている。


 インフォメーションカウンターに向う。

 いつも笑顔の受付の女性NPCをクリックしした。

 メッセージを送る知り合いはエイダしかいない。

 メッセージはエイダと運営からだった。

 運営は夏休みイベントの告知だ。

 エイダからのメッセージを開く

「直ぐに返事をよこせ」と書いてあった。

 同じ内容のメッセージが毎日届いている。

 相当焦っているか怒ってい筈だ。

 晴夫は恐る恐るwisで直接チャット打った。


 ・・チャットウインドウ・・


 "MARU2":こんにちはーADAさん


 しばらく待つとエイダから返事がきた。


 ・・チャットウインドウ・・


 "ADA":おせーよ

 "MARU2":ごめんなさい期末テストが

 "ADA":おお、そうか高校生ならしぁあない

 "MARU2":中学生です

 "ADA":まじかwふざけんな!

 "MARU2":本当です

 "ADA":まあいい

 "MARU2":すみません


 晴夫は謝りながらホントに乱暴な言葉使いな人だなと思った。


 ・・チャットウインドウ・・


 "ADA":この前、オデンのレア機体に乗った奴がいた

 "MARU2":カニですか?

 "ADA":おお、知ってるなら話が早い

 "MARU2":友達から聞きました

 "ADA":誰だ

 "MARU2":同級生です晒し板で見たとか

 "ADA":おう、それだユキウサギって奴を知ってるか?

 "MARU2":知りません

 "ADA":ユキナってやつのサブキャラだ

 "MARU2":ユキナ?

 "ADA":知らねーか


 隊員がネットで調べてユキナのブログを見つけたらしい。

 素人顔だがオタク受けのする幼い顔立ち

 身長160cm未満と小さくその割りに胸は大きい。


 次に彼女自身が立ち上げたブログをみる。

 アニメやゲームの女性キャラクターに扮した

 コスプレ画像を多数掲載していた。

 いわゆるコスプレイヤーもしている様で

 少し肌を露出したコスプレの衣装は魅力的だった。


 ブログに載せる画像は全てアマチュアカメラマンに頼んで

 無償で撮って貰っているモノだ。

 その画像をブログに載せてたり売ってお金にしている様だ。

 レイヤー好きの間では少々認知されていそう。


 彼女のプロフィールでは19歳学生となっている。

 何年も前から年齢は更新されていないとの噂。

 過去にはゲームショウなどのイベントでコスプレしたり

 ビラ配りや売り子のバイトもしており一部の運営とは親しい。


 そんな彼女のプロフィールは全てが事実とは限らないが、

 販売元の"ebisuya/EBS"TVCMに起用している有名アイドルが

 UFOをやっている情報は全く無く彼女よりは高感が持てた。


 ・・チャットウインドウ・・


 "ADA":オデンしか持ってないカニに乗ってた

 "MARU2":はい

 "ADA":調べてみる価値あるな

 "MARU2":はい

 "ADA":お前はパソコンのメール調べろ、全部な

 "MARU2":はい

 "ADA":じゃぁな

 "MARU2":お疲れ様です

 "ADA":後なお前早く准尉になれ


 と言い残しエイダはチャットを終了した。


「おつかれさま」は会社員のサヨナラの挨拶の決まりだが

 オンラインゲームもそれに倣っていた。

 会話は最低限「おは」「よろ」「あり」「おつ」の4つだけだ。

 目上の人や上位の人に対して丁寧に言う場合は

「おはです」「よろです」「ありです」「おつです」となる。


 晴夫の"MARU2"もソロミッションを重ねて軍曹になっていた。

 レベルも18でもう直ぐ20になる後2日で准尉になれる予定だ。


 夕方18時になっていた。

 秋雄のメールを確認する時間が無かった。

 晴夫はパソコンの電源を切り部屋に戻った。

 ついでに美雪が秋雄に返したノートを持ってきた。

 晴夫は考えた。

 このノートを手にした人物は自身の母だ。

 母親がログインし秋雄のキャラを消した事は考えられる。

 晴夫は頭の中で再び時系列を整理してみた。


 6月05日 ODINがBR除隊

 6月10日 ODINがログインしなくなる

 6月13日 秋雄の死

 6月21日 サブキャラも消される


 死の1週間前6月5日

 何者かが秋雄のIDとパスワードを使い

 秋雄のパソコンからUFOにログインした。

 何者かが別の場所から秋雄になりすましログインした筈だ。

 そして秋雄のメールアドレスとパスワードを変更する。

 犯人はODINと言う名のキャラを自分の物した。


 その後、その人物か別人かは解らないが、

 今度は秋雄の第2、第3のアカウントにもログインする。

 それぞれに居たサブアカウントのキャラも削除している。

 そちらはキャラを盗るのでは無くてキャラを消したのだ。

 おそらく対してキャラが育っておらずアイテムとマネーを強奪

 証拠隠滅のためにキャラは削除したと考えられる。


 ODINを盗った人物とサブキャラを消した人物は別人だろう思う。

 ログインが出来ない上にサブキャラまで消されたのだ。

 それに気付いた秋雄は愕然した筈だ。

 キャラを取り戻す為によりゲームに没頭し過ぎた。

 そして根を詰める過ぎ、過労死に至ったのではないのか。


 兄のパスワードを知る者。

 晴夫の母だ。

 晴夫は1階に下りる。

 既に母は帰宅しており夕食の用意を初めていた。

 晴夫は母に近付き話しかけた。


「お帰り、母さん」

「ただいま」

「今日、暑かったわよ、もう真夏ね」

「クーラー付けて良い」

「良いわよ」


 晴夫は食卓に置かれたクーラーのコントローラーを持つ。

 電源ボタンを押した。

 室内温度は27度になっている。

「27度じゃぁ全然涼しくないな」と思いながらも

 ここ数年の節電ブームで母親から温度を27度以下にする事を

 きつく禁止されていた。


 以前の母親は割りと小言が多かった。

 秋雄の死後は余り喋る事が無くなった様に思える。

 兄の死に家族は相当堪えている様だ。


「母さん」

「なに?」

「兄ちゃんのパソコン触った?」

「触って無いわよ、どうして?」

「別にぃ」

「おかしな子ね」

「ねぇあのパソコン売れるの?」

「そうね、お父さんがパソコンは処分するって」

「え、いつ?」

「その内に・・・不用品回収業者に持ってて貰るとか」

「うん、解った僕も調べてみるからちょっと待って」


 母親は否定し嘘では無い様だ。

 一旦信じる。

 次はもっと突っ込んで聞いてみようと思った。

 それにもう時間が無い急がなくてはと思った。

 明日は秋雄のメールをすべて調べるつもりだ。


 秋雄が引き籠りを始めてしばらくたった昨年の秋

 持っていたパソコンの他に同しパソコンを追加で2台購入した。

 お金は自身の貯金を使ったと思われた。


 学校を休んで部屋ゲームばかりしている。

 秋雄に怒りを感じた父が秋雄を怒鳴ったのだ。

 しかし秋雄は部屋から出る事は無かった。

 父親が母親に「パソコンは捨ててしまえ」と言っている。

 それを晴夫は何度か聞いた事があった。


 母はどうするべきか学校に相談する。

 その後、スクールカウンセラーが訪問する様になった。

 アドバイスを貰い、余り怒るのは逆効果だと言われた。

 今はそっとして置く事になった。


 母はゲームを消せばプレイを諦める切っ掛けになると話す。

 部屋から出てくる可能性だってあるのではと話していた。

 カウンセラーの解答は「それだけは絶対止めて下さい」だった。


 そんな事して命に関る事態になっても僕は責任は持ちません。

 若い男性からキツく言われたと言っていた。

 秋雄は学校側の配慮で2年へ進級できた。

 しかしこのままでは3年への進級には出席日数が足らない。

 母は焦っている様に思える時が度々あった。


挿絵(By みてみん)

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