第11話 ベルク
## 2012.11
<回想>
秋雄達のブラックレイン隊は定員数の30人になっていた。
ログインの少ない者、スキル上げをしない者は除隊させる。
今後"廃人"と呼ばれる常駐者と入れ替えを行う方針だ。
少なくとも4チームは常に対戦を廻して
得点を積み重ねていく予定だ。
副隊長の秋雄もついに個人ランキングでサーバー1位を取得。
2位のベルクとは僅差だった。
ブラックレイン隊で1位2位を独占し続けた。
他の部隊員もTOP10入りしており部隊ポイントも
ランキングも1位を継続していた。
常に勝ちに拘り不正ギリギリでの勝利だと批判される事もある。
匿名掲示板では毎日の様に妬みや煽りが繰り返し書き込まれた。
ブラックレイン隊にはスピードハッキングを行う奴がいる。
これは噂では終わらず遂に特定される事になった。
日頃から中の悪い敵軍の部隊員達は此処ぞとばかり騒ぎ立てた。
同軍の部隊からもゲーム内のオープンチャットで批判が相次ぐ。
不正プレイヤーと噂される人のキャラネームは"ALAN"アラン、
古参プレイヤーの1人だが余りボイスチャットには参加しない。
所謂"聞き専"ボイスチャットの指示を聞いて行動をする。
自身は発言しないタイプだ。
噂が書き込まれ日からアランはゲームにログインして来ない。
ソレーユ軍の各部隊隊長副隊長による会議が行われた。
ベルクとオーディンは部隊を代表してそれに参加した。
話合いはアランを除隊した上でゲームからも退会をさせる方向。
ブラックリストの設定のサーバー内に周知済みだ。
これによりアランは対戦への参加が困難になるのだ。
スピードハッキングはオンラインゲームではよく聞く不正だ。
しかし許される行為ではなかった。
常にトップを持続する部隊員であるなら尚の事だ。
会議中、日頃の嫉妬や妬みが合わさって不満を発する者もいる。
しかしベルクは聞き入れない。
「本人に事実確認を取るまで処分は待ってくれ」
ベルクはこの状況で引き延ばしても終息は難しいと判断した。
既に不正行為を録画した動画は掲示板などに掲示されている。
それを元に検証を行っているプレイヤーがいるのだ。
もはや不正は事実と認めざるを得なかった。
認めなければブラックレイン隊と今後は連るんだりしないと
オープンチャットで宣言する者まで出てきた。
余りにも脅迫的だ。
「ならば俺が除隊しこのゲームを引退する」と言い放った。
流石にそれには他の部隊幹部も反対し取り消しを求めた。
隊長は「友は裏切れない」と聞かなかった。
「隊長の引退で許してくれ」
「当人の事実確認が取れればその場で除隊させ引退を促す」
それでその場の一同は納得する事になった。
このままでは部隊の存続に関る処だった。
賢明な判断で防いだと言えた。
数日後
ベルクとアランはゲーム外のメッセージツールを介して話し合う。
アランはスピードハッキングの事実を認めた為除隊処分になった。
ゲーム自体も退会すると言う。
同時にベルクも騒動の責任を取って引退すると言う。
部隊員はベルク隊長の引退には反対した。
理由は他部隊からのブラックレイン隊への不満は大きかった為。
それらを含め公式ブログで謝罪すると共に引退すると発表した。
その時点で3人いた副隊長の中から"ODIN"秋雄を隊長に任命した。
ベルクは自ら持つ機体や装備品を部隊倉庫へ移した。
部隊員ならだれでも持ち出し使う事ができた。
それとは別に秋雄はある物を預かった。
それは"部隊預金"と呼ばれる戦闘報酬だ。
部隊預金は将来、戦艦を購入し運用する為の資金である。
未だに未実装であるが公式は戦艦に寄る海上戦を想定していた。
この預金を100%引き出せるのは隊長のみだ。
引き出した瞬間にメッセージが部隊員全員に飛ぶ仕組みである。
部隊プロフォールのウインドウに総額が表示され全員が見れる。
秋雄はその部隊預金の所有権を知らずに譲り受けていた。
・・チャットウインドウ・・
"ODIN":鯖一を継続します
"BERG":あぁ
"ODIN":ベルクさんの分もがんばります
"BERG":気にすんな
"ODIN":はい
"BERG":ネットは程ほどにな
"ODIN":はい
"BERG":じゃ、またな
そう言ってベルクはログアウトした。
しばらくして隊長のアカウントは消えていた。
ログアウトしただけではなくアカウントの削除まで直ぐに行った。
プレイヤーランキング2位からベルク名は消えていた。
その日から秋雄はベルクの残した使命と戦い続けた。
<回想終わり>
## 2013.2
いつしか季節は冬になっていた。
美雪は3学期の期末テストが近づき授業のノートを届けてくれた。
母親が出かけて居なかったので玄関で少し話した。
美雪は秋雄に将来どうするのか聞いた。
秋雄は学校は辞めるかも知れないと告げた。
美雪は目に涙を溜めたがそ以上は何も言わなかった。
秋雄はその夜いつもの様に2階の奥にあるトイレで用を足した。
部屋に戻る途中で階段を上がってくる晴夫と目が有った。
秋雄は久しぶりに晴夫に声をかけた。
「晴夫、PZ4やるよ」
「え、良いの?」
「うん、今やんないし」
秋雄はPZ4の本体とコントローラを部屋から持って出てきた。
箱も何も無くそれを晴夫に渡すと何も言わず部屋に戻っていく。
秋雄と晴夫が言葉を交わしたのはこれが最後だった。
晴夫がPZ4に電源に繋いでドライブを開く。
ゲームソフトのBD-ROMが入っていた。
そのゲーム名は"ミソ3"のPZ4版だった。
晴夫は結局このゲームをする時間は無かった。
"UFO"は正式サービスから半年が経っていた。
廃人と追い上げてきた上級プレイヤーとの差が埋まり始める。
熟成し1番面白い時期に入っていた。
秋雄"ODIN"が隊長になってから部隊内の規律は厳しくなった。
ストイックに勝利のみを追及して行った。
不満を漏らす者は辞めさせ強いソロプレイヤーをスカウトする。
また部隊の中にはお金やアイテムを欲しがる者が多くいる。
秋雄も惜しみ無く部隊のレベルの底上げの為にアイテムを渡した。
良かれと思ってやったが逆にそれが嫉妬に繋がる事も多かった。
楽してアイテムを手に入れようと秋雄に近付く者が増えていた。
女性プレイヤー"YUKIUSAGI"もその1人だった。
昨年の11月頃に都内で公式イベントが開かれた。
参加したブラックレイン隊のメンバーが彼女と知り合った。
それを聞かされた秋雄は仕方がなく入隊を許可した。
キャラ名は"YUKIUSAGI"であった。
早々から常に秋雄達と行動しレベル上げに励んでいた。
オーディンとユキウサギが一緒にいる所をよく見かける。
リアルでも恋人で一緒にプレイしているとの噂が出回る程だ。
秋雄はまだ高校生の引篭もりで大人の女性の扱い方は苦手だ。
正直、彼女がうざかったが中々は離れてくれなかった。
秋雄は彼女の欲しがった激レア機体を昇進祝いとして渡す事に。
その機体は正月に運営が行った大会で貰った報酬品だ。
これでユキウサギが少しでも離れてくれれば良いと思った。
## 2013.3
秋雄にたかり目的で近付いてくる者は耐えなかった。
新たにオーディンに付き纏う1人のキャラが現れた。
余りにしつこいので話を聞いてあげる。
その男は有名なゲーム雑誌の記者だと本名を名乗った。
ゲームファンなら誰でも知っているゲーム雑誌だ。
月刊誌で"UFO"がまだβの時代から記事を載せていた。
次号では"UFO"のアップデート直前特集を企画していると言う。
秋雄もWEB版は毎月欠かさず読んでいた。
サーバーのランキングトッププレイヤーのインタビューは、
人気のコーナーであるのは知っていた。
遂に秋雄にその番が回ってきたのだ。
インタビューと言っても実際に合うわけでなくゲーム内で行う。
今回は古参のベテランプレイヤーが多いオグンサーバーの
その頂点プレイヤーランキング1位。
つまりUFOの頂点のプレイヤーだと煽てられた。
今回は次期大型アップデートについて一早く攻略記事を載せたい。
雑誌社が運営から掴んだ最新情報をメールで提示すると言う。
攻略法をメールでコメントして返信して欲しいと言ってきた。
秋雄もその最新情報は欲しいあっさり釣られ引き受ける事にした。
アップデートの内容が示された資料と画像が数枚送られてきた。
もちろん流出厳禁とは書かれている。
それらの画像は既に公式が発表した物と同じであった。
秋雄は騙されたと思いながらも回答をメールで返信した。
インタビューの内容自体は部隊内やプレイヤーの間では好評。
特に長距離レーザー兵器の実装による戦い方と
スナイピングビームライフルに合うスキル調整の考察は受けた。
しばらくして秋雄はメールの中に特殊なメールを見付ける。
日本語では使われない漢字が混ざっていた。
中国のRMT業者からのダイレクトメールだ。
"RMT"リアルマネートレード、会社名は"RMT-JANK"と言う。
ゲーム内のアイテムや通貨を買い取りますと言う内容。
RMT業者からのダイレクトメールは毎日複数届く。
何時もの如く削除ボタンを押してメールを削除する。
メールにウイルスであればウイルスチェッカーが
動作し検疫される筈だ。
UFOプレイヤーを狙ってダイレクトメールに紛れウイルスを送る。
時間は掛かるが間違いなく感染させる事は可能だといえた。
メールを開いただけで感染するウイルスも多数ある。
キーボードで入力した文字情報を盗み取る"キーロガー"と言う
スパイウエアの一種を自動的にインストールされていた。
## 2013.4
季節は春になっていた。
秋雄は1年生の2学期から不登校引き籠りを続けている。
既に8カ月が経っていた。
担任先生とスクールカウンセラーの取り計らいで
なんとか2年には進学ができた。
しかし秋雄には正直もうどうでも良かった。
今年は高校卒業検定を受けるつもりでいた。
そこから大学へ進学する事は完全には諦めてはいない。
母親には反抗心で「大学へはいかない」とは言ったが
本心では大学へ行かずにやりたい仕事に就けるとも思えない。
しかしそんな事よりも今はUFOの世界の方が大事だと思えた。
## 2013.6.5
ゲーム内では相変わらずオーディンが個人ランキング1位だ。
もちろん部隊ランキングも1位であった。
その日は午前中から正午に掛けて定期メンテナンスの予定である。
メンテの時はいつも先に昼食を食べる事にしている。
1階のキッチンへ向かった。
カップラーメンや食パンなど直ぐに食べられる物を探す。
棚を開いて見たが買い置きが無くなっていた。
仕方がなくパスタの乾麺を取り出しパスタを茹でる事にした。
鍋に水を入れて火を付けた。
茹でたパスタにレンジで温めたミートソースを掛けて掻き込んだ。
食事を終えて部屋に戻ってきた時はメンテナンスが開けていた。
既に30分程が経過していた。
ゲームランチャーを立ち上げログインパスワードを入力する。
"IDまたはパスワードが違います"と表示された。
秋雄は早打ち過ぎて誤る事は良くある。
今度はゆっくりとタイプした。
しかしまた"IDまたはパスワードが違います"と表示された。
「おかしい」
秋雄は原因をサーバー側だと判断して公式HPを見た。
「定期メンテンスは終了しました」
少し前の時間で書かれていた。
「メンテは終わっている」
「無線LANは正常」
秋雄は一人言を口にした。
秋雄は3台のパソコンの内の右の置かれたパソコンを開く。
メールを確認した。
先ほど運営会社から【メールアドレスを変更しました】と言う
メールが届いていた。
「あぁーー」
「やられた」
と叫んだが声にならなかった。
そのメールで悟ったのだ。
確信はないが過去に聞いた話や読んだ記事に類似していた。
アカウントハッキングだ。
誰かが秋雄のアカウントでログインしている。
個人情報を書き換えて奪い取ったのだ。
アカウントを盗む方法は
アカウントIDとパスワードを取得しログインする。
設定から個人情報のメールアドレスを変更する。
次にパスワードを変更する。
メールで変更確認を受信してOKを押す。
キャラからアイテムやマネーを盗むだけなら
ログインすれば良いだけでアカウントを手に入れる必要はない。
アカウントを盗む場合は手間が掛かるしバレやすい。
盗まれた事に気が付かれて停止される前に犯行を終える。
秋雄は心臓の音がドクドクと聞こえてきた。
初めて味わった恐怖だ。
少し目まいと吐き気がした。
秋雄は震える右手でマウスを握り
左手で口を押さえながらパソコンの画面を見つめていた。
しばらくして少し落ち着きを取り戻した。
秋雄は対処方法を考えていた。
警察には届けるべきだろう
しかしその前にする事がある筈だ。
先ずは運営にメールだと思った。
公式ホームページを開き"サポート"から
"アカウント調査"の項目を開き"現状調査"を依頼した。
時間が掛かるがアカウントを一旦停止させる事ができる。
秋雄はフォームを申請し終える。
隊員に連絡をして置く為にボイスチャットのソフトを起動した。
平日の昼過ぎなので戦闘中のパーティがいなかった。
今頃はみんなソロ狩りで強化アイテムを収集している筈だ。
このまま待っていれば誰か入ってくるだろう
秋雄はそのまま待った。
アカウントが無いので他にする事も無かった。
しばらくすると
1人のプレイヤーがボォイスチャットにやってきた。
「ちぃす、あれーー隊長いたんだ」
「あ、ブルさんこんにちは」
「ん、なんか元気無いすねログインしないの?」
「やられた・・・」
「殺られた?誰に?」
「違ぅ、たぶんアカハック・・・」
「まじっすか?」
「うん、メアドも変えられてる」
「やばいすね、運営に言わないと」
「うん、申請は出した」
ブルーザーも他のゲームでアカウントハッキングにあった。
しばらく対処法などのアドバイスを秋雄に聞かせた。
ブルーザーは落ち込む秋雄を責める言は無い。
親身になって気遣った。
ブルーザーは性格は軽いがもう良い大人だ。
若い秋雄に厳しい事を言う事は無かった。
部隊でも兄貴肌で頼りになった。
「あーダメすね。隊長、除隊されてるわ。サブキャラも」
「そうですか・・・」
ブルーザーは他の被害にも気が付いたが何も言わなかった。
秋雄は泣いていた。
しばらくゲームができない事や費やした時間よりも
見えない誰かの悪意に対する悔しかった。
「うーん、キャラクターは一覧から消えてないすね」
「そう・・ですか・・・」
「まぁキャラデリには1週間は掛かるから大丈夫でしょう」
「はい・・あり・・・がとう・・・ます」
「運営に申請したんであれば、その内戻って来るよ」
「はい・・・」
「あ、コアタイムに幹部ミーティングやろう」
「はい・・・お願い・・・します」
「じゃあ、また後で」
そう言ってブルーザーはボォイスチャットを抜けた。
秋雄もボイスチャットを切った。
涙を拭きながらベットに倒れ込んだ。
弟の晴夫が帰ってきた様だ。
物音で秋雄は目を覚ました。
部屋の中央に置かれた3台のパソコンは常に電源が入っていた。
メールボックスを確認したが運営からの返信は無かった。
匿名掲示板を見てオーディンの垢ハック情報が無いか探した。
その情報はまだ洩れてないみたいだった。
夜21時が過ぎた。
秋雄はボォイスチャットで開かれる幹部会議に参加した。
幹部と言うのは隊長オーディンと3人の副隊長の事だ。
今後について話し合う事になった。
副隊長の1人ブルーザーが簡単に事の成り行きを説明した。
そして浮いていた隊長の権限を他の副隊長の同意を得て
一旦ブルーザーが引き継いだ。
他の副隊長は"SILAS"サイラスと"ALBERTA"アルバータだ。
2人とも後ろに数字が付かないキャラだ。
その名から古参である事が窺えた。
サイラスはシラスと呼ばれていた。
サイラスは論理派タイプで情報収集には長けていた。
自身でブログを開設し独自の攻略サイトなどを作成していた。
秋雄から見ても頼りになる同朋だ。
ブルーザーと並び戦闘では小隊長として部隊を指揮した。
黙っていたもう1人の副隊長アルバータが秋雄に噛み付く。
アルバータは最近副隊長に任命したばかりだ。
しかし武闘派のアルバータは20代前半の男性らしく
現在ニートの真性廃人を名乗っていた。
スキルも近距離攻撃型に特化しその火力が半端なかった。
秋雄は見方で良かったと思う場面も多かった。
「隊長、いやオーディン!お前、部隊預金どうしたんだよ!」
「え?」
「空だぜ!幾らあったと思ってんだよ!」
「ま、待って、アルさん」
すかさずブルーザーが止めに入った。
事が大き過ぎるのでまだ秋雄に話して無かった。
「こいつ垢盗まれたとか言って、本当は売ったんじゃねーの?」
「売ってない、本当に盗られたんだ」
「あれだけあれば数百万になるだろー、お前もニートだしな」
「ちがう・・・」
「やめなよ、責めても始まらないよ。運営には申請上げたんだろ」
サイラスも止めに入る。
「オーディン、金返せよ!持ってんだろ!」
「持って・・・ない・・・」
「先に金返せよ!じゃねーと、復帰は認めーからな」
アルバータはボォイスチャットをログアウトしてしまった。
秋雄は混乱し無言でいた。
ブルーザーが声を掛ける。
「部隊預金は運営がログを見れば解る心配無い」
「・・・」
「キャラが戻ってくる迄は新規でログインして欲しい」
「はい・・・」
サイラスも同じ意見だった。
その後、部隊チャットで報告が行われた様だ。
そこでの部隊員の反応は秋雄には聞かされなかった。
部隊預金への入金は部隊員なら誰でも出来る。
戦闘賞金の数パーセントも自動的に貯金されるのだ。
出金は隊長が100%を持出しする権利を持っていた。
それ以外の部隊員には持出し権利は無かった。
秋雄は知らなかったとは言え落ち込んでしまう。
## 2013.6.6
次の日、新たにアカウントを申請してID"Akiy"を作成した。
そして新キャラクター"ODILON"を作った。
秋雄は最初からプレイを開始した。
サブとして持っていた2つのアカウントは無事だったが
強化素材を入れる倉庫キャラだけなので放置してある。
幸いこのゲームのアカウントは無料である。
4人目のキャラだから慣れた物だ。
スキル上げの為にソロミッションを次々に行った。
また次の日もその次の日も。
"ODIN"はランキング1位に表示されたままだ。
しかしアカウントはログインできない。
運営からの返事は今日もない。
強化素材などアイテムはゲーム内で転売する。
機体は転売できないので他のキャラに譲渡してからRMT。
権限を持っていれば部隊内アイテムや預金もやられる。
キャラクターはアカウントに付けたままRMTされるらしい。
## 2013.6.13
1週間が過ぎた。
運営からの連絡は未だに無かった。
ひたすら新キャラのスキル上げを行っている。
部隊に復帰する事を目指していた。
レベル50カンストして階級は大尉。
1週間でここまで上げるのは大変な労力だ。
しかしまだ一般プレイヤーレベルだ。
まだスタート地点に立っただけだ。
戦闘スキルの調整と機体の強化が本当に大変な事なのだ。
秋雄は今日はやけに視界がボヤけると感じた。
この3日間は布団に入っての睡眠は取っていなかった。
眠気が限界にきたらパソコンの前に座ったままで仮眠を取る。
目が覚めたら直ぐに続きを行う為だ。
普段の食事は手が空けば廊下のワゴンから取って食べるが
この3日間はそれも出来ていなかった。
ソロミッションを開始した。
次々現れるNPCの敵機を撃破して行く慣れたものだ。
時々意識が飛ぶがゲームをしながら寝落ちなんていつもの事。
意識が飛ぶと夢を見ている様な感覚に陥る。
夢に美雪が現れた。
幼馴染の黒髪の美少女だ。
「一緒に大学行こうよ」と誘っていた。
返事をしようとした処で目が覚めた一瞬の事だ。
次の敵機を破壊した。
また次の敵機が迫った。
母親が現れた。
「秋雄、学校に行きなさい」と言ってきた。
返事はしない。
敵機は撃破した。
次は中ボスだ。
晴夫が現れた。
「兄ちゃん、ゲームしようよ」と言ってきた。
小学生の姿に戻っている。
ポータブルゲーム機を持っていた。
秋雄は懐かしく嬉しかった。
思わず「いいよ」と答えていた。
すると秋雄も小学生の姿になった。
その時、目の前で中ボス機が大きく爆散した。
銀色の光の渦だ。
秋雄の開いた目、眼球に光が映り込んでいた。
秋雄の意識は光の渦の収縮に吸い込まれ消失した。
右手にはマウスを握ったままだ。
深い睡魔に襲われそのまま頭をうな垂れる。
キーボードに顔を埋める様に前かがみになった。
敵機は次々に現れ秋雄の機体を囲む。
秋雄の機体にマシンガンを撃ち込んでくる。
連続で爆発のエフェクトがきらめいていた。
秋雄の機体はやられてしまった様だ。
ミッションは終了し"LOSS"の文字が浮かんだ。
秋雄はフロアルームの格納庫前に転送され佇んでいた。
プレイヤーが現れるのを待っているのだ。




