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恐竜日和 ウォーク・アバウト  作者: ニジヘビ
ベース・セッション編
88/138

088:ダイナソー・フッド #3-1

ベース・セッション編のシメもシマちゃんのお話。

ジョージがハドロサウルスの女の子にエチケット袋ナイですか?とか訊かれて悩みます。



 088:ダイナソー・フッド #3-1


 私の名前は三嶋みしま 真波まなみ。高2。

 周りからはミシマとか、仲のいい友達からはシマちゃんとかマナミと呼ばれている。


 恐竜化シンドロームを発症した私は、体長7mのシマシマの草食恐竜 ハドロサウルスになってしまい、日本にいるアメリカ軍海兵隊にお世話になっている。


 今回は、私の人間としての人生の終わりと、そして、私自身の出発点になる話だ。


 横田基地に来てから今日で3日目。

 始まりは、いつもの横田基地と変わりない、天気のいい土曜日の朝。


 昨日の超VIP歓迎のため、急遽打ったゲリラ・コンサートに、少し喉がイガイガする。

 けど、あんなスゴい人に喜んでもらえてよかった。

 元気もらえたせいなのか、今朝包帯が取れた。

 ティラノとのバトルで受けたあれだけの大ケガがもう治るなんて驚きだ。

 草食恐竜って、TVや映画では一撃でティラノにやられちゃうけど、あれは完全なフィクションだったのかな?


 私、この姿になった最初の頃、街中のウィンドウガラスに映った姿を始めて見た時、太めで不格好だから、イヤだと思った。

 デイノニクスやトロオドンのように、もっとカッコいい恐竜になれたらよかったのに、と思っていた。

 けれど、この種、ハドロサウルスになったおかげで命拾いしたのだと思うと、そう悪い気はしない。

 私、人間だった時は、クラスの中じゃランクはかなり下の方で、友達と呼べるような付き合いもなかった。それにあのギスギスした毎日がイヤでたまらなかった。

 それが、この姿になってから、恐竜と言わず人間と言わず、いつも誰かしらそばにいる。

 それも、ランキングだの勝ち負けだの気にしないでいい。

 一緒に食事してゴロ寝しながら他愛のないおしゃべりして。

 アレって、人間がそう言うものだったのかな。他の学校でも似たようなランキングの話はウワサに聞くし。

 少なくとも、あんなの、っていうか、ああいう世界に戻るのは願い下げだ。

 けど、海兵隊さんのトコにいつまでいさせてもらえるんだろ?

 何か、ここでやらせてもらえるバイトとかないかな?


 そんなことを考えていたら、以外と早くチャンスが来た。


 包帯が取れた後、ファシャグナトゥスの原田さん(通称、和尚さん)とケラトサウルスのカイさんと一緒に朝ゴハンを食べに外に出ると、格納庫の方からデイノニクスのトウヤさんがやってきた。

 どこか出かけるのか、トラックの点検をしていたようだ。


「やあ、おはようございます、三嶋さん。包帯、取れたんだね」


 一緒にいたポールさんとジョージさんもお祝いを言いに来てくれて、その流れで一緒に食べることになった。

 私も、昨日トウヤさんが気になることを言っていたから、そのことを訊きたかったんだ。

ハドロサウルスは、『白亜紀』では名の知れた歌い手だとかなんとか。

それに昨日トウヤさんが歌った歌。肉食恐竜の声なのに、歌詞の意味が分かる。

今まで和尚さんともカイさんとも恐竜語で言葉は通じなかったのに。

 彼を怖いと思うのは私の感情であって、彼自身はフレンドリー、そして、ミステリアスなんだ。

彼の年は分からないけれど、ポールさんやジョージさんにタメ口で話しているから、多分それなりに年行ってるのかな?


 けれど、話は思いっきりそれて、何気ない日常的な会話へ転がって行く。

 それに海兵隊員のジェシーさんと看護士のアニーがやってきて、仕事の話になる。


「みんなで、マナミたちとブレックファースト?」ジェシーさんがトウヤさんに訊いてくる。

「ああ。これ喰ったら三嶋さんたちのメシ調達に行ってくる」

「メシ調達って?」

「ああ。そろそろ野菜がなくなりそうなんで、あのトラックで買いに行くんだ」トウヤさんは、格納庫の方を指差す。

「私も行っていいですか?」何かお手伝いかバイトのネタになりそうなのと、ずっと基地の中でカンヅメだったんで外に出たかったんだ。

「危ないからダメ。

 ケガ治りかけなのに、またティラノに食い付かれたらど~すんの?」トウヤさんはトサカのハネを立てながら速攻でNGを返してくる。

「ねえ、私がいれば、草食のえ~と自我無し?さんたちとも話が出来るけど。どう?」私はジェシーさんとジョージさんにも食い下がった。

「確かに。うちの子たちは全員セロポーダ(獣脚類)ばかりで、草食竜のワード・キーパーがいないわね」ジェシーさんはヘルプしてくれるようだ。

「連れて行こう、トウヤ。

 臨時のインタープリター(通訳士)とオブザーバーだ」ジョージさんもなんだか嬉しそうに後押ししてくる。

 ジョージさんは、トウヤさんとポールさんと一緒に、少し離れたトコで何やら作戦会議を始めた。

 トウヤさんは、私たちが行くことに関しては、すぐに納得してくれたようだった。

 けれど、どうやら恐竜になった人には、人間が介助に付いて行く決まりがあるようで、それをどうするのか問題を出してきた。

 ジョージさんは、すぐにスマフォを出して、どこかへ電話しているようだ。

 しばらくすると3人は戻ってきた。

「三嶋さん、通訳を頼むよ」

「やったぁ!」

「そして、原田さん。出来たらオブザーバー兼買い物の交渉に立ち会ってもらえませんか?」

「え?ええ、構いませんよ」和尚さんは意外そうな感じだった。

「そしてミスター・カイ。頼みづらいのですが、用心棒に一緒に着いて来ていただけませんか?」

「いいでしょう」カイさんは立ち上がると身震いした。


 しばらくすると、顔なじみの兵隊さん、今まで名前を知らなかったけれど、私たちの歌のファン1号になってくれたおじさんたちがやって来た。

 私にはダニエル・カーチス軍曹。

 和尚さんにはマケイン・バーンズ軍曹。

 そして、カイさんには、いつもカートで野菜やお肉の塊を運んできて給仕してくれるケント・タカシマ中尉が付いてくれることになった。


 そうして買い出しチームが揃った。

 チームの中には、トウヤさん以外にも恐竜の隊員がいるようで、一人はトウヤさんと同じデイノニクスで坂月さかつき 美春みはるさん、通称ミハルさんと言った。もう一人は、デイノニクスよりも二回りほど小ぶりな恐竜-ドロマエオサウルスの男の人で、小野おの 敏生としきさん、こちらもトシさんと呼ばれていた。


 この3人とカイさんの戦闘力のすさまじさは後で知ることになる。


「買い物ってどこに行くんですか?」私は早速カーチス軍曹に訊いた。

「ああ、サンタマまで君たち草食恐竜用の野菜を買いに行くそうだ。キャベツとかそう言ったモノを調達するらしい」

「サンタマってなんです?」

「基地の南にある市場なんだ。私も、家でバーベキュー・パーティーをやる時に食材を買いによく行く」

「ショッピングセンターなんですか?」

「いや。若い子が行っても、あまり見るものはないだろうね。う~ん、市場マーケットに行ったことはないのかい?」

「商店街みたいなモノなんでしょうか?」

「またちょっと違うな。日本だと数が少ないのだが、隣の中国にいくと結構ある。日本語で説明するのは、私にはムリそうだ」

 カーチス軍曹は日本語ペラッペラだけど、それでも難しい表現はムリみたいだ。

「ともかく、行ってみるといい。

 やっているようなら、中を案内しよう」


 始めて基地の外に出れる!

 それもお買い物だよ!


 江戸川の河川敷でサバイバルやってた時は、仕方なくツケ払いでコンビニで食べ物だけ買ってた。(そう言えば、この払いもなんとかしないとだけど。)

 それがフツーにお店に入れる!


 これだけでもワクワクしてくる。


 普段はあれこれ言ってくる和尚さんも、この時は、何も言わず、ニッコリしただけだった。


 しかし、基地の外に出た途端、そのワクワク感はブッ飛んだ。

 放置されたままになっている人間や恐竜の……ゴニョゴニョのオイニー(臭い)がすさまじいのよ!。


 隊員さんたちは、バンダナやタオルで鼻を覆っている。カーチス軍曹は「気休めにしかならないだろうが」と私の鼻にツンとするミントの歯磨き粉みたいなモノを塗ってくれた。

 ハドロサウルスになった今の私にとっては、ホントに気休めにしかならなかったけど、ちょっとはガマンしやすくなった。


 道々、気を紛らわせるのにトウヤさんとダベる。

 この人の年のこともそうだけど、なんだか、ポールさんを避けているみたいだったから、気になったんだ。

 そうしたら、なんだか仕事のことでカチ合ったみたい。

 でも、あんなに気が合ってたみたいだし、ポールさんの方が年上なんだからゆるしてあげたら、って言ったら、なんとビックリ。

 トウヤさんは、アラフォー・オヤジだった。

 絶対ウソ。20代前半だよ?

「礼を言うべきか、引っぱたくべきか、迷う所だな」そう言うトウヤさんは、何か嬉しそうだった。

 そうして、みんなの年の言い当てっこになった。

 しっかりトウヤさんに逆襲された後、だんだんマジな重たい話になった。

 そうしたら、和尚さんがさすがというか、良さそうな解決策を出してきた。

 和尚さんは役所の出張所所長さんだとは聞いていたけど、家庭向けのカウンセリングもやっているという。

 江戸川でサバイバル生活していた時もそうだったけれど、本当に和尚さんは、何かと頼りになるなぁ。


 その頃から、エンカウンターが何度も私たちに襲ってくるようになる。

 そのたびに、武装トラックのマシンガンで追い払う。


 どうにかやり過ごしながら、ようやくサンタマに付いた。


 残念なことにシャッター街(?)みたいな状況になっていて、管理人さんらしき人が出てくるなり、私たちを見て悲鳴を上げる。


「傷付くなぁ(×4)/傷付くわねぇ(×2)」恐竜みんなで思わずハモる。


 実際、これはかなり傷付いた。


「ちょっとオジさん待ってよ。私たち、野菜を買いに来ただけなのに、何で悲鳴を上げるワケ?」ムカついたので、ドチビの人間に文句言いに出て行く。

「あーマナミ、ちょっと待て。私と代われ」和尚さんが割って入った。

「だって、悔しいじゃない!」

「まあ、見ていろ」


 ファシャグナトゥスの和尚さんは、人間の膝くらいまでしか体高がない。顔を上げても腰には届かないくらいだ。

 クソ管理人は、そんな和尚さんをバカにした態度。


 マジで踏み潰してやろうか?


 けど、落ち着いた話しぶりをする和尚さんに、管理人のヤツは中腰になり、次第に普通の人間の大人と話をするような態度になっていった。


 オッサン、命拾いしたな。


「それが、この恐竜禍で農家さんを始めどこも外に出れないので、品物が入ってこないのですよ。

 申し訳ありませんが、農家さんへ直接行ってくださいな。これ住所です」管理人は和尚さんにメモを渡してくる。


「これが大人の話し合いというものだ」和尚さんは、戻ってくると、受け取ったメモを私の顔の前でヒラヒラさせた。

 メモには、道順を書き込んだ簡単な地図と住所が書かれていた。

「通訳をする上でも、感情を抑える能力は重要だぞ。しっかり磨け」


 和尚さんはそう言うと、買い出しチームリーダーのジョージさんにメモを渡し、トウヤさんとポールさんと一緒に作戦会議を始めた。

 結局、武器もあるし用心棒もいるので、青梅市の農家さんまで行くことになった。


「しょうがないな…(×12)」みんなでため息付いて、トラックに乗り込む。


 農家さんに向けて走り出したけど、暑くなってきたせいか、臭いがひどくなってくる。


 私、もう限界。吐きそう。


「うっぷ、すみませぇん~。

 ハドロサウルス用のエチケット袋なんてないですよね?」

「ふまないね。ひんへんひょうもほーいしてらいんだ。このりょーきょーはほーてーしてらかった。あんれんに休へる場所までひどーひたら休憩するから、もう少ひ辛抱してもらへるはな?(すまないね。人間用も用意してないんだ。この状況は想定してなかった。安全に休める場所まで移動したら休憩するから、もう少し辛抱してもらえるかな?)」ジョージさんは、バンダナマスクを押さえながらなんでフガフガ言って来た。

「はににへよ、一休みひよう。あなみひゃんがうろっきーだ(何にせよ、一休みしよう。マナミちゃんがグロッキーだ)」


 そうして、コンビニで一休みすることになった。


 静かになったトラックでポールさんとカーチス軍曹に付き添われてグッタリしていると、トウヤさんがやって来て、やたら苦いお茶みたいなモノを飲まされる。

 そうしたら、あれだけアタマグルグルお腹ムカムカが、次第に収まってきた。


 小さなゲップをすると、起きられるようになった。


「なんかすっきりしました。ありがと、トウヤさん」

「ん、よくなったみたいだね。コッチはハズレだった」トウヤさんは、残念そうにアイスの棒を振ってくる。

「当たったけど、食う?」トシさんは、当たり棒を出してくる。


 なんだ?

 デイノニクスの仲間(ドロマエオサウルス科と言うんだそうだ)ってこんなフレンドリーなの?

 人間たちが逆に「くれ!」と一斉に言い出してくる所を「え~、これ恐竜チームの取り分っしょ?」とか返してくる。

 私はまだ食べられる感じじゃなかったから辞退したので、アイスは結局和尚さんに行くことになった。


 面白いヒトたち。


 体も気分も大分落ち着いたので、ストレッチをしていると、ティラノサウルスがノシノシやって来た!


 けれど、ティラノは、私に微笑んでシッポを揺らせただけで、ジョージさんと話しに行った。


 ティラノさんは、まだ人間語が回復していないようで、トウヤさんが通訳に入る。

 けれど…。

「そうか。この辺りでデカいクビナガがツルんで荒らし回ってるんだ。近場なら案内してやるけど…。あれ?」

 ティラノさんは突然人間語を話せるようになった。女性のようで、少しハスキーな声。


 人間語回復に、店から家族も出てきて大喜びだ。

 そのおかげで、農家まで道案内すると持ち掛けてきてくれた。


 ティラノさんは瀬野せの 友加里ゆかりさんといい、頼れるお姉さんだった。

 農家さんまでの残りの道を、トラックが通れるように障害物をどかして道を開けながら、先導してくれる。

 

 ユカリさんは、前に見たティラノと全然感じが違う。

 前のは、いかにも恐竜というか話の通じないモンスターみたいだった。

 ユカリさんは、背中の羽毛がボア付きのジャケットを羽織っているみたい。それに、目の後ろから耳の方にうっすらと赤いアイラインが伸びている。

 何て言うか、バイキングかバーバリアンの戦士ウォリアーみたいな、野蛮だけど話が通じる相手という雰囲気。

 カッコいい。

 同じティラノでもこんなに違うものなの?


 天敵の肉食恐竜とは言え、ファンになってしまいそうだ。


 ユカリさんのおかげで、農家さんまで襲撃されることもなく、無事到着した。


ジョージ:近所の買い物にそんなモノ用意しないでしょ、フツー。

ポール :トシさんが持ってないか、ちょっと期待した。

トシ  :オレ、乗り物酔いしないんで。メディック・ポーチもさすがに持って来てないですし。

ユカリ :別にその辺ですりゃイイんじゃない?

トウヤ :アータ、もチっとオブラートにくるむとか…。

ユタカ :ムダですよ。コイツ、昔っからこうだから。

ミハル :も~、女の子相手に~。

カイ  :マナミ、いじられキャラが定着しつつあるな。

マナミ :シドイ…。


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