087:青い空の下を走って行った #9
アメリカ陸軍と自衛隊が別々に構築中だった暗号通信システムを、いきなりトウヤが木葉微塵にします。
錠前と暗号は破るために作られるモンなんで。インチキフランス人大怪盗さん(孫)やチート地球人宇宙海賊さんとか…。
087:青い空の下を走って行った #9
オレんちまでバイクを取りに行った帰り道。行く当てのない恐竜化症発症者(以下、恐竜。)さんたちの救護のため、江戸川避難所の自衛隊に支援を依頼した行き掛かり上、オレとポールは顔なじみの江戸川避難所へ顔を出すことになった。
事後報告の折に、オレがプライベートで恐竜語翻訳機を作ろうとしていることをポロッと話した所、自衛隊の大隈さんもさることながら、DIA(米陸軍情報局)の情報将校という裏の肩書きを持っているポールが、ものすごい勢いで食い付いてくる。
元々、"コレあれば仕事ラクになるよな"程度の軽い気持ちで考えていたモノだけに、逆にコッチが驚いたくらいだ。
そこへ、ターク隊長(カニンガム大尉)とトロオドンの風見さんが、オスプレイで到着したとのことで、二人が顔を出すまで、この話は一時中断となった。
大隈三佐のオフィスでしばらく待っていると、隊長とマリさんが顔を出した。
挨拶もそこそこに、大隈三佐が今までのいきさつを二人に話し、オレに続きを促した。
「オレがこの恐竜語翻訳機を作ろうと思い至った理由ですが、そちらの秘書の渡辺さんと弁護士の風見さんの一助にならないか、という発想が始まりです」後、オレも使うつもりだ。
「私!?(×2)」オルニトレステスとトロオドンの女性陣が、目を丸くする。
「渡辺さん。兵站を切り盛りする上で、言葉が通じない種の恐竜との意思疎通がもっと楽にならないものか、と思ったことはありませんか?」
「え、ええ。それこそ何度もありました。もし翻訳機が出来るなら、非常に欲しいです」
「風見さん。これからのあなたのお仕事において、言葉が通じない種の恐竜との意思疎通をどうするか、問題視していますよね?」
「ええ。非常に重要な課題ですわ。その、翻訳機の開発は可能なのですか?」
「時間の問題です」実際、専念できるなら作るのに2週間あればコトは足りるんだ。
「そして、人間側の悪用や囲い込みを危惧しているのですよ、オレは」
恐竜による、恐竜への、恐竜のための翻訳機のつもりだったからな。
それに、人間勢の食い付きように、マジでビビった。
なんだか、雲行きが怪しそうだ。
「分かりました。では、大迫さんとカニンガムさんと私とで、運用ガイドラインを今週中にまとめます。もちろん、あなたの意見を反映させた上で。その条件と引き換えに、開発を進めていただく訳にはいかないものでしょうか?」
早速仕事してくれるみたいだな。
「分かりました…」
しかし、海兵隊の上司(ターク&ポール)は二人とも渋い顔。自衛隊の大隈さんも同様だった。
「…あの、オレ、なんかやっちゃいましたか?」
「ああ。オマエ、エニグマとボンベは知っているか?」ポールがDIA少佐モードで訊いてくる。
「ええ、もちろん」よく知ってる。どちらもコンピューター史の古典暗号化テクノロジーでは、メジャーなマシンだからな。
"エニグマ"は、WW2時代に旧ドイツ国内で広く運用されていた電気式の暗号生成器で、ポータブル・タイプライターのようなデザインになっている。もちろん、暗号化設定を行わなければタダの電動タイプライターとしても使用可能なんだな。
"ボンベ"は、エニグマが生成した暗号コード用の電気式復号器で、連合軍側が作った。ただしこちらは、暗号化組み合わせをほぼ総当たりで解析する初期の電磁リレー式コンピューターなので、冷蔵庫並みのデカさになる。元々はポーランドがベースを造り、ポーランドバージョンを元にイギリスが解析精度を向上させた魔改造版を作った。どちらも実質別物なんだけど、ポーランドへのリスペクトのため、同じ名前になったんだそうな。
で、そのボンベはエニグマ運用開始から大して時を置かずに作られたため、エニグマを使っての暗号通信は、実は意味がなかったんだな。その事実が知らされたのは、WW2が終わった後だったというあんまりな結末。幸か不幸かエニグマ作ったエンジニアは、WW2開戦前の旧ドイツ極貧期に馬車で事故って死んでしまい、国がたどる悲惨な末路を見ずに済んだ…。
ともあれ、エニグマを巡るエピソードはまだまだ色々あるので、興味があるなら文献を調べてみるとイイ。
そしてブツそのものに興味がある場合は、今はパソコン用にフリーのエニグマ・エミュレーターが公開されているので、どんなモノかイタズラしてみるといい。ちなみにオレはこのオモチャにはすぐアキた。
「オマエは、オレたちがエニグマを作ろうとしている所に、1週間でボンベを作るなんて言ってくれたも同然なんだよ」
1週間てそれ、デイノニクス語の翻訳データパターン作成の時間だけなんだけど…。
「あ~、ひょっとして恐竜をウィンド・トーカーにする案でもあったんですか?」冗談めかして訊いてみる。
「そうだ(×3)」ひぃ~!。御三方の顔が怖いよ!。
ウィンド・トーカーは、WW2でアメリカ軍が起用した、ネイティブ・アメリカンのナバホ語と英語のバイリンガリストたちを指す呼称ね。実質、全員がナバホ族だったそうな。
アメリカ軍は、彼らを暗号無線通信要員として編成して、ナバホ語での暗号通信体勢を敷いていたんだな。
アメリカ軍も自衛隊も、今回は恐竜をウィンド・トーカーに仕立てようと目論んでいたようだ。
恐竜語は人間勢にとって未知の言語体系なんだから、ローコストで暗号通信システムを構築するカギと言えばカギになる。
考えてみりゃ、ウチには基地司令ジュニアのマイクという、恐竜語マルチリンガルのボウズもいることだし、ワード・キーパーも多くいるので、有利と言えば有利か。
で、オレはその両陣営の目論見をアイデア段階でツブしたことになる。それも天然で。
あ~は~は~…。
確かに、目くじら立てられるわな…。
「え~と、…それで~?」とりあえず揉み手しながら開き直って話を続ける。
「"それで?"とは?」
「作っちゃダメですか、翻訳機?」
隊長とポールと大隈さんは、互いに視線を交わした後、ガックリ肩を落とし、盛大なため息をついた。
ん~、なんかゴメン。
「作ってくれ、翻訳機。それはそれで欲しい。支援や予算が必要なら言ってくれ」
「気持ちは嬉しいですけど、軍の囲い込みはナシですよ?
GNUライセンスのオンラインソフトと回路使うので、軍事機密にした時点で世界中のネットワーカーやコミッターさんたちから袋だたきにされちゃいますから、元々よりフリーで公開するつもりだったのです」
もちろん半分ハッタリ。
人類文明自体が半死半生になってるこの世界で、国家や組織無関係に法的措置を執行できる機関が運営されている訳ないだろ?
オレは言語や知識を、薄暗い強欲で縛ることに反対なんでね。
もちろん、フェイク・ガードや発展の統制を取るために、管理を行う組織や機関が必要になるのは、百も承知している。
「ぐ!」
「なんなんだ、この…AIかオウムにからかわれたような感じは…」
オウムの先祖はオレら獣脚類なんだし、6700万年前から、天然で哺乳類をからかう素養があったのかもな。
「分かった。負けた。も~好きにやってくれ。ただし、なるべく急いでな」
「気休めかも知れませんが、今生産されているパソコンは、あれだけ色々あったタイプが結局駆逐されて、仕様がオープンにされていた軍用タイプライター用パソコンの派生回路だけになっちゃってるコトですし。抱え込んでクローズドにしてると、コッチが自滅するかも知れませんよ?」
「マジか?」ポールが半信半疑といった様子で訊いてくる。
「1990年代からのこの4半世紀(25年)で、どれだけのパソコンメーカーや携帯電子機器メーカーが消滅したか知らないのか?時を同じくして、あれだけあった大所帯の航空会社が、サービスと価格競争の前に淘汰されたのも、アメリカ人なら知ってるだろ?」
COMPAQ(ブランド名だけ一応残ってる、っぽい)やPANNAM(マジ消えた。悪い冗談としか思えない)とか。ヨーロッパならオリベッティ(タイプライターやオフィスファニチャーの老舗)のパソコン市場撤退やNOKIA(世界中にシェアがあった携帯電話メーカー)の実質の身売り、スイス・エアー(LCC攻勢に貪り尽くされ9.11禍起因の"空気輸送"で半死半生になった)の落ちぶれようやら。
日本でも、多くの企業が軒並み不採算部門の尻尾切りでかろうじて生き残っているだけで、その上、海外へ流出した技術のカウンターパンチ喰らって青息吐息。
悪夢どころの話じゃ済まない、大量絶滅の25年間だった。
これだけで本数冊は書けるほどなんだ。
生き残った企業も、この恐竜禍で壊滅的なダメージを受けているはず。この人間文明の大ピンチをどれだけ生き抜くことができるやら。
「帰ったらダン中尉や空軍さんに訊いてみて下さい。ホントなんで」
指揮官御三方も、口々に"そう言えばあったあった…"とかつぶやいている。
モノ作るならヘタに独占なんかしないで、作りやすくアーキテクチャしっかりしたもの設計して、後は知らんぷりするのがベターなのさ。ヘタにデブりすぎて自滅した恐竜は、それこそ数知れないんだ。
サービスなら、接客品質とメニューを始めとしたもてなし内容の定期的な刷新で、顧客に常に好印象と興味のネタを与え続けることだ。これは、中生代から始まる被子植物の収斂進化に通じるモノがある。花が咲けば、虫も恐竜も"なんだコレ?"と見に行くし、旨い実が成れば獲って喰うからな。
以上、大量絶滅生き延びた、大先輩からの忠告オシマイ。
「ではOK出ましたから、マリさん、お願いしましたよ。
後でGNUライセンスの日本語訳送りますから、目を通しといて下さい。組み上がった回路と使うオンラインソフト決まったら、後ですりあわせしましょう」
「喜んで」マリさんの答えは、指揮官御三方の顔色を窺いながらのもので、控えめだった。
ともあれ、マリさんは白亜紀の記憶を取り戻してはいないものの、事の真相を知っている。巧くやってくれるだろう。
「あと、別件なのですが、トルヴォサウルスの石田さんの精密検査が必要と思われまして、ウチのシャルビノ少尉による診察を受けさせる許可を下さいませんか?」
「何か、問題でも?」大隈さんは、アイデアがつぶれたせいか、なんだか気落ちしている。
「1週間食事を摂っていないそうです。明日からの作戦に支障が出ないか、事前にエキスパートの獣医に精密検査を受けさせたいのです。
ワニなどの大型爬虫類の中には、1度食事を摂れば1ヶ月ほど何も食べなくても平気な種が存在しますが、念のためです」
「そうなのか、大迫?」
「ええ。空腹にならないので、食事は不要とのことでした」タクちゃんは平常運転で、ノホホンと答える
「平たく言えば、戦闘中に貧血で倒れたりしないよう、プロに診させておきたいのですよ」
「了解した。許可しよう。
しかし…どうやって連れて行く?」
そこなんだよな。7トンある体長11mのダチを連れてくとなると…。
「搬送なら、オスプレイがある。明日の作戦には合流地点までお連れする。と言う所ではいかがでしょうか?」
隊長、話せる!。
「ウチの隊員をオブザーバーに着けたいのだが、可能か?」
「歓待します」
「大迫、行けるか?」
「私を始め普通科は明日から遠征なので無理ですよ。
三佐殿しか空いている方はおられません」
「…やはり無理か。仕方ない。では、私が行くことにしよう」
「帰りはどうされます?」
「石田君…は合流地点に行くことになるか。では仕方ない。パラシュート持参で、帰りはここの上空で降りることにする」
さすが空挺部隊。やることが違う。
「こちらへ寄り道して着陸するくらい構いません」ターク隊長も、大隈さんの空挺部隊気質に片頬をほころばせる。
「では、よろしく頼む。
さて、ささやかだが会食の用意をさせてある。召し上がっていってくれ給え」
大隈さんは立ち上がり、校長室脇の応接室へとオレたちを案内する。
「私も時間があったら横田基地へ行きたいものだが、なけなしのパジェロ乗って来ている手前、ウチを長い間空ける訳に行かないからなァ」竹井一尉が、小さくため息をつく。
「そうだ。隊長、例の体力測定の件、その折りに竹井一尉も来ていただいてはいかがでしょう?」
「そうだな。この時勢だ。協力を築く上で親睦を深めるいい機会になる」
「体力測定?(×2)」大隈さんと竹井さんが訊き返してくる。
「ええ。多種の…発症者の体力測定を横田基地で行う予定なのです。
横田基地でも、こちらと同じように、協力して下さる発症者が多くおりまして、その能力やスタミナを測り、より活用する筋道にするのが目的です」マリさんが説明を始める。
「それは名案だな。何かと暗くなりがちな避難所が盛り上がりそうだ。
食事をしながら詳しく聞かせていただきたい」
そしてようやく遅いランチにありつく。
招待者の大隈三佐始め、席に着いた全員が、供された皿に驚いていた。
大輪の白菊を模した、川魚のお造り。
そして、ほのかに香り立つ椀。
「恐竜が…これを作ったというのか?」竹井一尉が目を見張りながら、誰にともなく訊いた。
「主に監督指導を行わせていただきました。お口に合えば幸いです」平さんはべらんめぇ調を押し隠して応対する。人間用の応接室ということもあり、バリオニクスの巨体はドアから半分廊下に出ている。
オレ、仕事関係で割烹のご相伴に預かったことはあるけど、ここまで芸術的な盛り付けは初めてだ。
単に切り身を並べているのではなく、花びらの反りまで模しているため、本物の菊花が飾られたように見える。
特に、アメリカーナの隊長とプエルトリカンのポールは、目が飛び出そうな程驚いていた。
「やはり、自衛隊は脅威だ」ポールが少佐モードでうなる。
気持ちは分かるケド、自衛隊、と言うより平さんの手腕なんじゃないの?
「OTSUKURIか、どうやって作ったのだ?」ターク隊長が平チームに尋ねる。
「自分はペーパークラフトが趣味なので、平さんの指導でピンセットでチャッチャッと。身は曹長が手際よくさばいてくれました」成畑一曹が少し照れながら説明する。
「成畑は細かいの得意なのです。私は料理が好きなので魚をさばくのは慣れております」岩田曹長も照れているようだ。
「素晴らしい、眼福だぞ。4人とも好くやってくれた」大隈三佐が満面の笑みを浮かべて、チームを激励する。
「ありがとうございます(×4)」平さんはたちはそう言うと、室外に退がった。
しばらくすると、4人の"やったな"と手を打ち合わせる音がかすかに聴こえてくる。
身はよく〆られていて歯ごたえもよく、デイノニクスのオレの鼻でも、目立つ青臭さはなかった。
それに、椀のお吸い物も、香りも味もインスタントでは出し得ない素晴らしいもので、つゆも限りなく澄み、お造りの味を引き立てる。この時期にどうやったのか、大将入魂の一品だった。
平チームの手腕には、いつも感心させられる。
それに、どうやらラーメン円山の大将も仲間に加わったみたいだしな。
またここに来るのが楽しみだ。
オレたちは江戸川避難所のおもてなしに舌鼓を打ちながら、体力測定プランの話を再開した。
もっとも、ターク隊長がお造りに心を奪われているので、マリさんが主に説明を務める。
「…日程や搬送プランはまだ煮詰める必要がありますが、いかがでしょうか?
渡辺さんもいかがです?坂月さんも乗り気でしたよ」仲のいい白亜紀レディーストリオらしく、マリさんはエミさんに水を向けた。
「ええ、参加したいです!…その、許可いただければ、ですけど」
エミさんは、タクちゃんと大隈さんに代わる代わるお伺いを立てる。
彼女は人間だった時、走り高飛びの記録保持者だったそうだ。
そして、白亜紀でオルニトレステスだったときでもかなりのハイジャンパーだったけれど、人間だった時に重ねた訓練が、能力にさらに磨きを掛けている。
「参加したまえ。我が隊の底力を見せてやってくれ」大隈さんは力強く頷きながらOKを出した。
「チームワークでは、我が隊も負けていませんよ」隊長は不敵に笑う。
ウチは確かに、連係プレーは強いけど、個々の能力は江戸川勢ほど高くないんだよなぁ。
何せ江戸川勢には、トップに肉体派のトルヴォサウルス他、メンバーにティラノ2頭を抱える上山チームがいるからな。
ターボ君持ってかれてるのはイタいね。
マリさんはどっちに付いてくれるんだろ?トロオドンの俊足は出来たら欲しいんだけど、彼女、江戸川住民だからムリっぽいな…。
オレは、運動会や陸上大会みたく、待ってる時間が多いのは苦手なんだけど、今回は興味がある。
ひととき恐竜禍を忘れての会食は、有意義で楽しいものだった。
竹井一尉も、参加者は出せそうもないものの、観戦に来られるよう、避難所の態勢を整えると意気込んでいた。
気が付くと、もう大分陽が傾いていた。
もう基地に戻る頃合いだ。
オレとポールがいとまを告げると、会食はお開きになった。
今日一日であちこちの避難所を回り、図らずもある程度の状況見聞が出来た。
猟友会や消防団と自衛の協力関係を構築できた地域は、以外にも恐竜と穏やかな関係を取り持つことが出来ているようだった。
逆に、恐竜禍当初から敵対したコミュニティはジリ貧に追い込まれ、干上がる寸前まで追い込まれている。
湾岸戦争での自衛隊と平和維持軍のエピソードが、そのまま今回にも当てはまっているように感じる。
もっとも、今はサンプルが少ないこともあり、断言は出来ない。
明日から、人間殲滅派のブラキオサウルス、ムカリの追撃作戦が始まる。
その際に、通過する地域のコミュニティと少しでも多くコンタクトを取り、状況収集をして行く必要がありそうだ。
地域が壊滅しかかり、その後の方針転換で持ち直した江戸川避難所は、運に恵まれたレアケースと言えるだろう。
また、白亜紀からの"渡り"を始めとした真相が人間たちに漏れる危険性もある。
その場合どうするか、そろそろ段取りを練っておく必要がありそうだ。
オスプレイにターボ君とリモさん、そして付き添いの大隈さんが搭乗を始める。
オレは、見送りに出てきたマリさんに、持ち帰った荷物の一つを渡す。
「マリさん。これ、プレゼントです。行き違いにならなくてよかった」
「まあ、スマフォ?あなたが使ってらしたのと似てるのね?」
「前に使ってたヤツなんでお下がりで悪いんですけど、バッテリーの持ちがよくて、20時間ぶっ続けで通話可能です。これからのあなたに必要でしょう?」
「20時間って、それ普通のケータイより持つじゃないですか」
「スマフォが携帯ゲーム機に成り下がる前、出来るビジネスマンの武器だった時代の名品です。
バッテリーも新品に変えてありますし、SIMチップとメモリーカードも入れてあります。
あ、ただ、SIMはまだレジストしてないんで、登録はタクちゃんか大隈さんに手伝ってもらって下さい」
「ありがとうございます、助かります!」
「じゃ、ガイドライン、お願いしますね」
オレがバイクのエンジンを掛けると、マリさんは離れた。
代わってターク隊長が、マリさんに名残惜しそうに別れを告げる。
二人ともスマフォを取り出し、早速番号を交換し合っているようだった。
空はいつの間にか茜が差し始めていた。
オレとポールは一路横田基地へ向け、アクセルを開けた。
ハラハラしていたが、途中襲撃もなく、無事横田へと帰ってこられた。
オレたちが基地に着くと、格納庫の方からいい匂いがしてきた。
そこでは、鉄骨に串刺しにされたディプロドクスが丸焼きにされている所だった。
実にウマそうな匂いだ。
そこから少し離れた所で、アロサウルスがうずくまり、その周りにターク・チーム全員、それにオスプレイでやって来たターボ君が集まっていた。
どうしたのか訊いてみると、ハドロサウルスのシマちゃんと一緒に保護した、アロサウルスの中崎 梨音が自ら命を絶つべく、着陸してきたオスプレイのプロペラに走り込もうとしたと聞かされた。
トウヤ:骨付き肉だ!!
ミハル:も~、コッチは朝から大変だったんですよ?
マナミ:途中まではお祭りみたいだったんですけど。
ポール:コッチも構築中だった暗号通信システムがパーだ。モグモグ。
大隈 :自衛隊はまあ、江戸川だけで考えてたことなので、それほど損失はないのだが…、イタい。
トウヤ:オレの業務契約はリーダー支援業務なんで、イイじゃないですか。翻訳機、あったら便利ですよ?モグモグ。
ターク:年明けそうそうから壊し屋っぷり大暴走だな。




