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007:オフィスにデンワしなくちゃ

トウヤが会社に電話報告を入れます。



 007:オフィスにデンワしなくちゃ


 業務開始ギリギリの時刻。プロジェクトのリーダーさんに電話をかける。

 リーダーさんは、オレが恐竜になったと告げると声のトーンを下げ「朝からふざけないでもらいたい」と返して来た。コイツ若手でマジメなのはいいけれど、ウィットに欠けるのが現場でも問題になっている。

「じゃあ、ビデオトークに切り替えて下さい」オレはスマフォの通話モードを切り替えて相手を待った。

程なくして相手もモードを切り替えたのか、毎日顔を合わせるリーダーの顔が映った。

 リーダーは絶句していた。

 オレは手短に状況を説明し、隊長にドナドナされて行く(連れて行かれる)ことを説明した。どのみち後は納品フェーズだからオレが居なくても何とかなる。

 こいつが理解出来たとは思えんけど、説明義務は果たした。


 次に社に電話。

「ヤマちゃんどしたの?カゼでも引いた?」営業のミヤ姉こと宮原女史が出る。

「ううん。恐竜になった」

「…え~、うん、ヨコちゃんに代わるね」さすがに辣腕営業のミヤ姉も少し絶句したか。おまけに社長に振られた。

ウチは小規模な派遣会社なので割と風通しがいいんだ。で、オレも10年ちょっとご厄介になっているので、それなりに話を通せる立ち位置にいる。

「横囲です。山本さん、恐竜、ですか?」社長の横囲さんが電話に出た。

「社長、TVとかでニュースになってると思いますが、わたし、恐竜になってしまいました」

「分かりました、すぐ掛け直します。電話を切って待っていて下さい」

 すぐに横囲さんから着信が入った。ビデオ通話モードだった。

「横囲です。ほぉ…」

「横囲さん。面白がってますね?」

「初めて見ました、恐竜。カッコいいですね。スーツ、似合います」

「あ~の~ぉ~」

「ニュースはラジオで流れているので聞いているのですが、どうです?危険はないですか?」

 オレはフロントカメラをティラノに向けた。

「わたしのクルマをスクラップにしてくれたのでボコりました。幸いアメリカ軍の兵隊さんが手伝ってくれたので退治出来ました」

「分かりました。ケガはしましたか?」

「?いいえ?」

「確約出来ませんが、労災の手配しておきます」

「ソコですか!?」社長は敏腕で回転が早いのはいいけれど、オレでもタマに付いていけない。

「ええ。すみませんが、クルマとティラノの写メと山本さんの自分撮りをメールで送って下さい。そうだ。手伝って頂いた軍の責任者の方に代わってもらえますか?」つまりオレら恐竜の写真が欲しい訳ですね。

「あの、ウチの社長から話があるそうなので代ってもらえますか?」オレはケータイを隊長に渡した。


 隊長は何やらウチの社長と長い間話し込んでいた。

 別に横聴きする気はなかったけれど、恐竜になったおかげか、耳がかなり良くなっていたので聴こえてしまう。

 なんでもオレの処遇の事で移動先の連絡やら隊長のコトやらあれこれやりとりしているようだ。

 結局、後で隊長から報告書が送られる事になったようだ。


「トウヤ」ケータイを切ると、隊長が申し訳なさそうに話しかけて来る。「手間を取らせるが、長期滞在の準備をしてくれ」

「そうですね。…持って行ってはダメなものはありますか?」

「そうだな…、国外に旅行する程度なら問題ない。出来れば貴重品は持って行った方がいいだろう」

「分かりました」

 オレは家の中に入り、バイクツーリング用の大型バッグを用意するとあれこれ詰め込んで行く。お泊まりセットと着替え、服の直し用の裁縫セット。他、ノートパソコンと銀行の通帳と印鑑、まだ半分以上残っているウィスキーとお気に入りのショットグラス、いくつかのアウトドア用のアイテム。お気に入りのいくつかのパイプとタバコとパイプ喫煙用のいくつかのアイテム。旅にいつも持って行くラジオ。

ああそうだ、冷蔵庫の中身はもったいないからお隣の中川さんに引き取ってもらおう。

 そうこうする内に、遠くからヘリの爆音が近付いて来た。

 なんだか、バイクで事故った時のように悲しくなり、涙が出て来た。いままで一人で面白おかしく暮らして来た楽しい毎日。それが、前と同じく、いきなりなくなった。

 前の時は、信号無視のバカ女がクルマで突っ込んで来て、リハビリに4年かかった。

今は、少なくとも5体いや6体満足なんだ。声も出せるし目も見える。

あの時は耳は聞こえたけれど、人の言葉が理解出来なくなっていた。

今は日本語も英語も分かる。

 なんとかやってみるか。


次回はなんかスゴイのがお迎えに来ます。


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