062:シティ・オブ・ダイナソアズ #1-2
ターボ君のお話その2。
皆さん大苦戦。
武術に長けていても戦争には勝てません。
062:シティ・オブ・ダイナソアズ #1-2
恐竜化シンドロームが発症してトルヴォサウルスになった、オレこと石田 貴大は叔母(人間)の森 郁満と一緒に、ようやくデイノニクスの山本さんたちと合流することが出来た。
トウヤさんたちは、翼竜たちから総攻撃を受けて戦闘になったという。
相棒のポールさんと全員返り討ちにした結果、十字路に仕留めた翼竜のクレーターを作っちまった後、しれっとコーラなんか飲んで一息入れていた。
まあ、この恐竜ならやるだろうな。
ラジエーターをやられて走行不能になっているハムヴィーをクルマ屋まで持って行くと、やはりこの工場じゃ修理不能と言われた。
しかしトウヤさんは、ポールさんとドロマエオサウルスの小野さんに手伝ってもらいながら、ラジエーターをツギハギ溶接して直し始める。
オレはと言うと、ジョンソン先生とジェシーさんの身体測定を受け、問診になる。
オレは体長の割に体重が軽く、要所だけ装甲が厚い格闘向きの種になるんだそうだ。それでも7トンあったのにはたまげた。
「Tレックスは、攻撃をキバに一点集中させているのよ。だから、逆に言えば、相手に食い付かれたら、即アウトと思っていた方がいいわね」獣医のジェシーさんの言だった。
ティラノは重装甲重武装。最大サイズの体格とキバでの一点集中攻撃がウリだが、その分体重が重たいため身の取り回しが悪く、格闘戦に持ち込まれると意外と弱い種なんだそうだ。
オレは、子供の頃から故郷の宮城で、近所のおじさんに柔道だと言われて起倒流柔術の手ほどきを受けていた。高校に上がった年の冬、親が両方とも吹雪の日に交通事故で死んで、親戚の森叔母さんの所に引き取られて来るまで。
その後紆余曲折を経て、高校生活は社研(社会科研究部)で仲間たちとプロレスごっこをしながら過ごした。
そんな平和な生活へ手引きしてくれた恩師に、柔術を『なんちゃって柔道』に化けさせる手ほどきを伝授されていた。
柔術は柔道と違い、極端に少ない体捌きで敵を戦闘不能にするために培われた武術だ。それに加え、アレンジ技法を会得したその先に、今のオレがいる。
素のトルヴォサウルスとして、キバだけでティラノと戦っていたら、よくても相打ちが限度だっただろう。
「君の戦術の立て方は、対レックス戦闘に実に有効だ。とはいえ、この体格でこんなことが出来るのは君くらいだろう。他の恐竜には真似させられんな」
こともなげにラジエーター修理を済ませたトウヤさんが、手を振りながら近付いてくる。
オレは、ジョンソン先生の問診の中で、時折自分が恐竜になって野山で狩りをする夢を見ることを話した。
「夢の中で、トウヤさんとそっくりな恐竜とよく狩りに行ったんですよ。ミハルさんもいました」
「そのことは二人には話したかね?」
「いいえ。だってそんなのおかしいでしょう?」
「そうとも限らん」先生はそう言うと、オレに夢を見た時の状況をいくつか質問してきた。
「明晰夢というのは、無意識下で記憶を整理している時に進み具合をモニターしている時に見る場合がある。トウヤにも君と似た質問をしたが、どうも君と似たような体験があった節が見受けられた。人は夢を通じて意識下でつながっているというオピニオンもある。いくら何でも恐竜時代の思い出、というのはあり得ないだろうが、これから起きるであろう予測を夢に見た、という可能性はありうる。
まあ、全てが憶測ばかりだがね」
トウヤさんは、ジェシーさんと話し始め、オレを見上げながら、オレの身体測定のことを話し始めた。
分子生物学がどうとか、構造力学がどうとか、オレにはチンプンカンプンだ。
しかし、オレのことをリスペクトしてくれてることは分った。ちょっと小恥しいが。
そこへ、自衛隊さんから無線が入り、みんな集まってくる。
なんでも、恐竜化シンドロームの発症者が、ケータイ基地局で占拠テロをカマしているので退治しに行くという。
ケータイが使えなかったのはそれが理由か!
「太ぇヤロウだチクショウめ!」バリオニクスの平さんが吠える。
「ケータイ使えなくしやがって!ツブしたるわ!!」オレの街に手出しするヤツは、タダじゃ済まさん。
オレたちは再び自衛隊さんと合流して、ケータイの基地局まで出張る。
見境をなくした恐竜に襲われて、ボコボコにされたケータイ会社のクルマ。
偵察に赴くトウヤさんたちの班。
そして、トウヤさんがやられたという、報告。
大挙して攻め寄せる恐竜たち。
まあ、なんとかしよう。
夢の中でも何度かあったが、トウヤさんはタマにチコクしてくることがある。
チコクはするが、必ず埋め合わせはする、義理堅い竜だしな。
攻めてくる恐竜勢は、ティラノサウルス3頭、アロサウルス4頭、カルノタウルス2頭、小さいの数え切れないほど。
「ダンナ(平さん)、行きましょう。ミハルさん、脚元頼みます」
「あ、ちょっと待て」小さい恐竜、ドロマエオサウルスと言ったっけ、小野さんが止めてくる。
「何スか?」
「誤射しないようにマーキングさせてくれ」
「マーキング?」
「ボディ・ペイントな。味方だとすぐ分かるように」
小野さんと佐野さんは、オレと平さんの腿と肩に、フェースグリスで『竜』と書くと「よし、頼む!」と言ってきた。
「ターボ君、私が追い込むから、トドメをお願いね」ミハルさんはそう言うと、敵に向かってダッシュして行った。
「分った。ダンナ、ヤツらを押さえ込めますか?」
「おうっ、任せとけ!」
ミハルさんはすごかった。
小さいのをライフルと足技でいなしながら、ティラノを上手いこと追い出して来た。
オレがティラノの気を引き、平さんが脚に食い付いて転ばせた所を、テール・スイングでKOを取る。
これなら楽勝じゃね?、と思っていたら、そこからがいきなり難しくなった。
急に守りが堅くなり、大型恐竜が並んで壁を作り、その陰に小型恐竜を隠してカバーしだした。
その陣形で波状攻撃を仕掛け、人間勢まで迫り寄ると小型竜が一斉に突撃してきて人間勢に襲いかかる。
変だ。
敵は何も声を出していないのに、見事な連携を取り始めた。
前に映画で見た、ローマだかどこだかの戦法でファランクス(突撃密集隊形)とかいうのにそっくりだった。
映画では長槍と盾で武装した兵士が横一列で突撃して来ていたが、今回のは大型肉食恐竜の盾と小型肉食恐竜の槍。
まるで訓練された軍隊のようだ。
突撃してくる小型恐竜たちは、体を蜂の巣にされてもまだ立っていて、ライフルでアタマを吹き飛ばされて、ようやく倒れる。
キモい。吐きそうだ。
あんな死に方するまで向かってくるなんて、正気の沙汰じゃねぇ。
まるで、恐竜のゾンビだ。
敵小型恐竜勢の相次ぐ特攻に、オレたちオフェンスは対処し切れなくなり、人間勢に被害が出始めた。
「しゃあねぇ!バリケードおっ立てるぞ!」平さんが、付いてこいと、オレたちに呼びかける。
オレたちは、トラックと装甲車を横倒しにし、ざっくりとバリケードを作ると、人間たちに待避するよう吠えた。
オレと平さんは、小型恐竜が入ってこれないようにバリケードの脇を固め、ミハルさんは、時折ライフルの弾を取りに戻りつつ、敵がファランクスを組めないよう攪乱に回る。
人間勢も敵の戦法を読み取り、ミハルさんが回りきれない方の塊を崩そうと集中砲火を浴びせる。
クソッ!相手がマズい。
なんで掛け声も出さずにこんな集団戦術が出来ンだよ!
ライフルが当たってんのになんで倒れねぇんだよ!
それに、頼りにしていた虎の子の無反動砲が、全部かわされちまった。
っていうか、今更分ったが、無反動砲ってのは、初速がとんでもなくトロいんかよ。あれなら砲弾がスピードに乗る前なら、オレでも楽勝で避けられる兵器だったってコトだ!
ミニガン(ハムヴィー車載の7.62mmガトリングガン)もタマを使い果たしていた。
ジョンソン先生のグレネード・ランチャーも、小型恐竜たちは着弾点から簡単に逃げちまうからほとんどダメージが入ってねぇし、大物の方には直撃でもほんのちょっとしかダメージ入れられなかったし、数発で弾切れになっちまった!
頑張ったが、人間側の兵隊が半分近くに減っちまった。
敵の方もそれなりに数は減っているものの、大物は弾傷を大量に受けているくせに、まるで利いているように見えない動きっぷりだ。
敵もバリケード脇を固めているオレたちを見て、ファランクスの両脇に力押しが利くティラノを配置し、中央に装甲が硬いカルノを置くようになった。
クソッ!クソッ!!クソクソクソッ!!!
この状況、オレだけじゃティラノを倒せねぇ。
平のダンナも防戦一方。
ミハルさんも補給時の休憩が長くなり始めた。
ライフルの弾も残りわずか。
やることが端から裏目に出ちまう。
その時だった。
何かが爆発したような音がして、中央のカルノが倒れた。
何が起こったんだ?
しんと静まる中、バリケードの中央から、気味の悪いうなり声が立つ。
ギャリギャリギャリ…
夕日の中に立ち、羽毛を膨らませ、殺る気満々で威嚇している、デイノニクスの姿。
トウヤさんだった。
ぶっ倒れたカルノは起きようとするが、脚をふらつかせている。
何をやったんだか分からないが、敵は警戒して固まり始めた。
トウヤさんは何か作戦があるのか、人間勢に色々と確認を取り始める。
「平さん、ターボ君、あのライトバンをヤツらの上に投げ上げることが出来るかな?」
「まあ、二人で力を合わせれば。多分40m位はいけるかな。どうよ?」
「積み荷を降ろせば、もう少しいけそうかな?」
「じゃあ、小野さんたちに手伝ってもらって、ブン投げる準備を頼んます」
オレと平さんは、負傷して動けなくなっている人間勢を抱えて、バリケードの後ろを守らせていた無傷のハムヴィーの周りに運ぶ。そして、ドロマエオサウルス・コンビに手伝ってもらって、何に使うのか分からないまま、ライトバンをひっくり返し荷物をガラガラとあけて軽くする。
トウヤさんが戻ってくると、何か作戦の説明を始めた。オレには何のコトやら理解できなかったが、なんとなく雷を落とすらしいことは分かった。
自衛隊さんがぶっとい電線を持って来て、ライトバンのフレームにくくりつけた。
そこからはあっという間だった。
下準備に敵の頭上に何かを撒き散らした所へ、平のダンナと一緒にライトバンを咥え上げ、敵の真上にブン投げる。
そして、敵が眩い光に包まれる。
その一瞬が過ぎた後、赤く灼けたライトバンの周りに恐竜が黒焦げになって倒れていた。
本当にカミナリを落としちまった。
オレたちが、あまりの惨状に呆然としている所へ、トウヤさんは隊の再編成を切り出してくる。敵のボスを仕留めに行くのだという。
狩りでもしてるように情け容赦ない恐竜だよ。
オレも、隊長さんたちと一緒に、敵のボスを仕留めに付いて行くが、相手は逃げた後だったようだ。
相手のニオイは、よく知っているんだが、初めて嗅ぐニオイ。
なんて言ったっけ、初めてなのに前にも体験した覚えがある錯覚…、デジャブ(デ・ジャ・ヴュ)か。
自衛隊さんも半分以上が重傷で戦闘不応になっている今、深追いは危険だという判断が下され、引き上げることになった。
日が沈むまで掛かって、どうにか帰り支度を整えることができた。
そして、トウヤさんとミハルさんが、電池が切れたように倒れた。
トウヤ:お前、オレとくっちゃべりながら、ナニえげつないことやってたんだ?
ムカリ:そう言う君には、同胞を黒焦げにした感想を、是非聞かせてもらいたいものだが?
ミハル:どっちも怖いわよ!
ターボ:ええ、どっちの攻撃もマジ死ぬかと思ったっス。




