006:デイノニクスの姿
自分の種を俯瞰して副隊長としみじみするトウヤ。
006:デイノニクスの姿
口はダクトテープでグルグル巻き。腕はタイラップでチキンウィング。脚も同様に体に縛り付けられた状態。目にもタオルを巻かれ、その上からダクトテープでグルグル巻きの目隠し。
仕留めたデイノニクスは惨々たる有様にされて、クタッと転がされている。隊長とジョージとえ~と女性隊員のジェシーが、かなりしっかりとマミー化したのだ。
仲の好いお隣さんを爪にかけようとしたんだ、後でガッツリ話付けんとな。
まあ、それはそれとして、オレはデイノニクスを検分する。
自分と同じ種と言うこともあるし、元々、鳥や動物が好きなんだよな。
デイノニクスは縛り付けられているおかげで、ボディラインが露わになっている。スマート、と言うよりスレンダーな体型だな。全身が鳥の様な羽毛に覆われているので、キジやミチバシリ(ロードランナー。北米の鳥。)の体型に近い。
それにしても、シッポが長い。体長の半分は優にある。
背中越しに改めて自分のシッポを眺めると、確かに長い。家の中で邪魔になる訳だな。
恐竜のブランチが進化して鳥になったという学説があるけれど、こうして実物を前に俯瞰してみると、なるほどな、と納得してしまう。
「ソ・グレースフル(美しいな)」声をかけてきたのはジョージだった。
「ユーラ・ライト(そうだな)」
鳥に似た、けれど違う。ウマやイヌ科の動物に通じる、走る為に完成された美しさがある。
「あーと…。アイ・マスビー・ビューティホ、ディス・ダィナソー・ランニング・フォーム・アト・プレーリー(この恐竜が平原を走る様は美しいだろうな)」
「ハハ、シュア。(はは、そうだな)僕も見てみたい。今度、見せてよ、トウヤ」
「照れるからよして下さいよ」ジョージが日本語に切り換えてくれたのでホッとする。
「恐竜が好きなんだ。特にラプター(ラプトル)の仲間がね。オオカミみたいに、賢いハンターだ。
それにさっきから感動し通しだよ。
レックスに立ち向かった所や、このダイノニコス(デイノニクスの英語発音)をす…シュンサツした所とか」
「我ながらクレージーだと思う」いやホント。ケガなしでよく倒せたもんだ。
「君は勇敢なんだな。
爪と牙があるとは言え、人間サイズの君があのレックスに片膝を付かせるなんて。
君は大ケガすることになっただろうけれど、僕たちがライフルを使わなくても、あの勝負は君が勝っていたと思うよ」
「そうかな?」
「もちろんさ。
なぁトウヤ、僕たちのチームに入ってもらえないかな?
君みたいな勇敢なウォーリアがいてくれると心強い」
「しかし、わたしはエンジニア…。しまった!ジョージ、ちょっと待ってて。オフィスにデンワしなくちゃ!」
大人になったって試験はあるんだからね!
合格しないと受験費ムダになっちゃうんだからね!
ともあれおかげさまで合格しましたよ。