057:JOYS
ハムヴィー1号ようやく修理してもらえます。
なんだか書いている間にリアルではシャレにならんハプニングが起こりましたね。
057:JOYS
クレーターの稜線から顔を覗かせた巨大な獣脚類へのショックが収まると、自衛隊勢も発症者(以下、恐竜)勢も戻ってくる。
トルヴォサウルスになってしまったター坊こと石田さんと、彼の後見人(仮)のリモさんこと森さん。今作戦の目的である相手にようやく会うことが出来た。
「コレ、どかしていいっスか?」ター坊は翼竜のクレーターを鼻先でつつきながら訊いてきた。
「気になって様子見に来たんですわ」
「悪い、ちょっと忙しかったんだ。
それは、ええっと、出来たら人が通れるようにしてもらえると助かる」
ター坊はクレーターを見回すと「大入りですね」と苦笑しつつリモさんを下ろしたようだった。
そして、両前肢と鼻先でクレーターにラッセルを掛け、瞬く間に十字路の隅に寄せてしまった。
暴虐竜の名の由来になる、このダイナミックなパワーがいいんだ。
それにしても、やはり前肢が丈夫でかなり使える。
オレの世代だと、ゴジラやガメラと言ったデカくて強くてカッコいいモンスターが常識。
その腕力で敵を組伏せ、ビルを叩き潰し、街を焼き払う、圧倒的なパワー。(街を焼き払える恐竜はいないけどな)
今まで何度も見たティラノは、アゴがデカいだけの不格好な姿で、それはそれでレギュレーションとしてはアリなのだろうけれど、その多様性の無さが逆にウィークポイントにもなっている。
ティラノがF1マシンなら、トルヴォはインディ500やWRCのマシンといった多様性のある種なのだと改めて知り、実に感慨深い。
「初めまして、山本さん」
トルヴォサウルスと連れ立ってやって来た女傑が微笑みながら会釈してきた。
腰にクイーバー(矢筒)を下げ、片手にアーチェリーを携えるリモさんは、ビデオチャットでの印象よりはるかに存在感があった。
そして、なによりター坊とかターボ君とか呼び名がブレているけれど、石田さんは圧巻だった。
文字通り人間を一口に出来るオオアゴ。
Tシャツでも着ているように薄っすらと身を包む、落ち着いた緋色の羽毛。
あの翼竜クレーターを切り崩す腕力。
鼻先に感じる二人の体温と息遣いは、黒砂糖を溶かし込んだ淹れたての珈琲のようだった。
「はじめまして。山本です」敢えて官位は付けずに自己紹介し、デイノニクス式の敬礼をする。首が長くて額まで前肢が届かないもんだから10度礼(肘を上げない略式敬礼。グリーティングなどかしこまった場では、肘を真横に上げて行う45度礼が正式。)になるだけなんだけど、US海兵隊ではオレとミハルだけ特例で認められてるんだ。
「お待たせした上に迎えに来て頂いてスミマセンね」
「クルマ屋で待っていたら銃の音が長いこと続いて、ケータイも通じないから心配してたんスよ。
しかし、コイツはまた凄いモンですね」ター坊もオレたちと同じく10度礼で返礼すると、片付けた翼竜の山を鼻先で指す。
「ちょっと大変だった。もう少し早かったら流れ弾がヤバかったよ」
「ホントに海兵隊だったんですね。ジャケット、それワンオフっスか?いいなあ、似合いますよ」
「こんにちわ、石田クン、リモさん」
「いやぁ、ようやくお会いできましたな、御二方」
オレと同じデイノニクスのミハル(坂月少尉)がジョンソン先生(少佐)と一緒にやって来た。
「はじめまして、ミハルさん、ジョンソン先生。って言うのもおかしなモンですね」
「はじめまして、本日は遠い所をありがとうございます」
「見事な出で立ちですな。巴御前(ともえごぜん。木曽義仲の実質奥さん)みたいですぞ」
「あら、お上手。この歳になってもお転婆なものでして」コロコロと笑うリモさんは、薄いベージュのスリムパンツにブーツ、ライトピンクのカットソーの上からネイビーブルーのタイトなレザージャケット。
なんか隙がない。
ネイビーブルーのレザーなんて珍しい。それを着こなしているなんて、やりますナ。
なによりアーチェリーなんてものを携えているのに全体的に野暮ったく見えない。
傍らに立つ大型セロポーダを従えた、洗練された女狩人。
ノーブル・サベージ(高貴なる未開人)、というフレーズが否応なく思い浮かぶ
。
過酷な生存圏に生き、根付き、その上で独自の文化を発展させるに至ったコミュニティや民族を指す時に使われる。
または異質ながらも紳士的なコミュニケーションが確立出来る場合などもそうだ。
この暴虐の世界を闊歩出来るだけの力を持ちながら、他を威圧することなく泰然自若とした二人。
一言で言えばカッコいいのだ。
「それにしても、こんなにたくさん、どうしたんスか?みんな喋れるんスか?それに自衛隊さんまで…」
「思えばおかしなもんでね。行き掛かりでこんなに大所帯になったんだ。紹介するよ」
ターク隊長(カニンガム大尉)を始め海兵隊のメンバーと自衛隊の大隈三佐と大迫二尉に、リモさんとター坊を紹介した。
始祖鳥の藤沢先生。
バリオニクスの平さん。
トロオドンのマリさん。
ドロマエオサウルス・コンビの小野さんと佐野さん。
相変わらず大迫さんとべったりのオルニトレステスの渡辺さん。
ここにはいないけれど、ハドロサウルスの三島さんに、ケラトサウルスのカイさん。
皆さんター坊の巨体に若干おど付きながらも、代わる代わるノーズ・タッチ(鼻先を摺り合わせる親愛のボディランゲージ)を交わす。
「なんだか三国志みたいッスね」
「ええ。言われて気が付いたけど、なんでこんなに増えたんだか。けど、皆さんのおかげでイロイロと乗り切ってこれたんだ。運が好かったよ」
「楽しそうでいいっスね。
所で、クルマ屋の方、スタンバってますよ。あの後ろのヤツッスか、やられたハムヴィーは?」
「ああ、そう。も~ホント、出掛けでいきなりだもんよ。まいっちゃったよ。先のチャットで言われていたことが身に染みたね、まったく」
「ええ、オレらもヤサに移る時散々な目に遭いましたわ。うわ、こいつは…」ター坊はハムヴィー1号の惨状に絶句した。
「う~ん、こうしてみると、人間が作ったものがどれだけ華奢なのか分かるな。というより、オレらが強過ぎなんだろうけど」
うん。体長10mのトルヴォサウルスに言われると真実味アリアリだ。
「実際、イロイロと壊れたよ」
「これじゃラジエーター交換しないとダメなんじゃないっスか?」
「そうでもないよ。テは考えてあるんだ。ちょっと手伝ってもらえないかな?」
オレはポール(エストラーダ中尉)とター坊と平さんに手伝ってもらって、完全にスクラップになっているトラックを探し、ラジエーターをガメた。というより、ラジエーターパネルを30cm平方程、ナイフのメタル・ソー・ブレード(金属ノコギリ刃)で切り取った。元婦警のミハルと弁護士のマリさんは見ないフリをすることにしてくれたようだった。
「じゃあ、お待たせしてるし行こうか。タマももうあんまり残ってないんだ。また襲撃があるとまずい」
「オレらも結構使いましたよ。おばちゃん、矢は何本残ってる?」
「残り5本よ。回収しながら来たけれど、結構厳しいわね」
「あるよ」例によってドロマエオ(ドロマエオサウルス)の小野さんだった。
「あら、遠的用の90センチがあるならいただきますわ」
「それだとアルミしかないけど、いいかな」
「ちょっと長くなるが95センチならカーボンがある」
「アルミでいいわ。あるだけか30本ちょうだい」
「毎度。6本セットが4ケースある。6万4千でいい」
弓と言う発射装置は、使う人の体格と筋力に応じて色々とパラメーターを調整する必要がある道具なんだ。
まあ、その昔アクション映画でサバイバルナイフやら色々と剣呑な男の子のオモチャが流行った頃、やっぱり作りましたよオレも。
コンバット・ボゥ。
スクラップのリーフ・スプリング切り出して作ったけど、強力過ぎて、そもそも引くことが出来なかった。
で次に適当に持って来たプーリーを付けたら、何とか引くことは出来たけれど、アクリルパイプで作った矢がコンクリの壁にぶち当たって砕けた。ついでにコントロールも難しい。
で、それから3~4丁作って分かったことは、
弓は強けりゃいいってモンじゃねぇ
ってことだ。
弓は使う人の体格と筋力に応じたものをあつらえる必要があり、銃のように威力を上げる事は出来ない。
弦を引く筋力より遥かに弱めのバネレートを弓に持たせる。
弓自体の全長も体格に合わせる必要がある。
矢自体も日本の古い単位系にある通り、腕の長さに合わせる必要がある。
しかも威力は弓の強さと矢の重さによって低下する事はあっても上限はどうやってもあげることが出来ない。
銃は握ることが出来れば、とりあえず撃つことは出来る
弓矢が兵器として廃れた理由がよく解った例だ。
代わりに自然界にある素材で簡単に作る事が出来、再現性や多様性は銃より遥かに高い。中には矢の代わりに石などの弾体を射出出来るように改良されたバリエーションも存在する。
その意味では、銃と弓矢は、ティラノとトルヴォの関係によく似ていた。
そして、リモさんが所望したのは、重量と重心バランスを遠距離用にしつらえた矢ということだ。
リモさんは受け取った矢を一本ずつ反りがないか確かめてはクイーパーに差していく。
そして矢を全て確認すると、その内一本を無造作に抜いて弓につがえ、撃った。
矢は積み重なっている翼竜に当たった。
「悪くないわね」リモさんはつぶやくと、矢を取りに行った。
「カ~。粋だねぇ」バリオの平さんがうなる。
お二方といろいろ話したいことはあったけれど、やはりここは場が悪い。また例によって"障害物"をかき分けながら進む。
さすがにこの所帯規模になると、ちょっかいをかけてくる恐竜もイカレた人間もいなかった。
クルマ屋、というか整備工場を併設しているディーラーは閉鎖されていたが、ター坊がやってくるとチェーンを解いて開けてくれた。
大隈三佐と大迫二尉とはここでお別れだ。
ご厚意でハムヴィーをレッカーしてくれて助かった。
「大隈三佐からお訊きしたのですが、発症者たちが自意識を保っていることを特定した経緯をお聞きしたいのです。
遠藤君を始めとした、いわれのない被害を受けた方たちの訴訟資料をまとめる必要がありますから」トロオドンのマリさんはオレたちと来ることになった。プロの弁護士として、明確な目的意識を持って。
平さんと遠藤君もだ。
「オレもトウヤさんたちと行くよ。
まあなんだ、自衛隊にあんまりいい感情持ってないもんでな。
坊主はどうする?」
「ボクもおじさんと一緒に行っていい?」
「そうか…」バリオはつぶやくように言うと、トリケラにノーズ・タッチする。「オレもブッキラボーで気が回んねぇ事が多い。苦労させちまうだろうが、それでも言うことは取り敢えずでいいからきいてくれ、な?」
「うん、分かった」
トリケラトプスとはいえ、遠藤君もまだ子供なんだ。面倒見てくれる大人が居た方がいい。その点、平さんなら大丈夫だろう。
「オレたちも一緒にいいですか?」ダット5のドロマエオ・コンビもお揃いだ。
「店はしばらく営業出来そうにないし、トウヤさんたちといた方が面白そうだ。
協力するからどうでしょう?」
このご時世、助っ人は大歓迎です。
「わたしは大迫さんと残ります」オルニトレステスの渡辺さんは自衛隊というより大迫さんに付いて行く。当然と言えば当然だが、寂しくなる。
始祖鳥の藤沢先生はまだ治療中ということもあり、オレたちと行かざるおえない。
そしてプテラノドンの橋本タカさんも師匠と一緒に来るそうだ。
やはり通訳に藤沢先生がいてくれた方が安心だし、会話リハビリは海兵隊の方がよさそうだと嬉しい評価をいただく。
詰まる所、隊長たちが保護した恐竜たちはほぼ海兵隊が引き取ることになった。ジョージ副長(大尉)が狂喜したのは言うまでもない。
「分かった」
大隈三佐は残念そうだったが、ピックアップポイントまでの移送にと、トラックとドライバーの隊員を置いて行くと言ってくれた。
大隈三佐と大迫二尉を見送った後、ジョンソン先生はジェシー(シャルビノ少尉)ター坊の身体検査の準備を始めた。
オレもお付き合いしたかったが、ハムヴィーの修理がある。
ハムヴィーは、当然ながら交換用のラジエーターユニットがないため、この工場では修理不能とのこと。
さて、ハムヴィー修理プランBだな。
取り出しましたる小型バーナーとアルミ用ハンダ。さっきダット5で買っといたんだ。なんでも電動ガンのフレームのクラック修理用だとかで店頭に置いてあったんだ。
それとフレームがへし折れたトラックからガメて来たラジエーターの切れ端。
サンダーでピッタリにカットして位置固定の仮溶接。
ジョイント部を上から薄いアルミ板で巻いてさらに溶接。
液冷エンジンてのは、易々とオーバーヒートを起こさせないよう沸点を上げるため、内部で圧力が上がるようになってるのさ。
だもんで、溶接部が割れないよう、少し補強しとく必要があるのね。
この辺りは小野さんにカバー用のアルミを切り出してもらう。
なんだかんだで10分ほどで出来上がった。
クーラント(冷却液)を注いでエンジンの始動。ラジエーターに圧を掛けてのテストだ。
接合部にトイレットペーパーを巻いて液漏れが起きてないかしばらく様子を見る。
どうやら大丈夫そうだ。
ハムヴィーのエンジンを止めると辺りは静まりかえる。
「それにしても見事なものだな。どこで覚えたんだ?」オレの作業を見ていたターク隊長が訊いてきた。
「ティラノにオシャカにされた愛車に教えてもらったんですよ。もう古いクルマなんで、あっちを直しこっちを直しているウチに、です。溶接は、まあ、電子工作やらイロイロとモノ作りで」実際、自分でやってないのはエンジンのオーバーホールくらい。ECU(エンジン制御ユニット)は電脳屋なんで自分で作り直したくらいだしな。
先生の方は、ター坊の身体測定が終わったらしい。先生はハムヴィー2号の屋根に座り、2号の脇に座るター坊に問診をしているようだった。リモさんはジェシーと一緒に付き添っている。
平さんと遠藤君は自衛隊さんと一緒に踏み抜いたトラックの荷台を修理していた。
ター坊はオレに気付くと軽く手を振り、リモさんは会釈して来た。
それにしてもつくづく大きいもんだ。
駐車用の敷地に座るトルヴォサウルスは、それでもハムヴィーの屋根を見下ろす格好だった。
ジェシーに身体測定データを見せてもらったところ、体長11メートル30センチ、体高3メートル60センチ。体重は6920キロ。
なんとなく初代のハリウッド・ゴジラを連想させる細マッチョな体型。
思ったよりも体重が軽い。バリオニクスの平さんは確か体長8.3メートルで体重5トンだったからター坊は体長2割増。例によって3乗で考えると8割増になるので13トンにはなるはずなんだが半分ほどの体重しかない。
これも自然界という無類のエンジニアが妙手を奮っての最適化が行われた結果なんだろうな。
面白いもんだ。これだから自然科学とエンジニアリングはやめられない。
そこへ、トラックに積まれている無線に自衛隊さんのCPから入電があった。
海兵隊がまだ修理工場に居るか確認している。
なんでも携帯電話の基地局が襲撃されているらしい。
制圧&奪還に向かうので協力して欲しいとのことだった。弾薬は自衛隊さん持ちと言う。
ブラックベリーを出してみると、アンテナ・ゲージが1本しかたっていない。
「ポール、スマフォのメリット(無線用語で通信品質状況のこと。メリット5で最高の状態になる)はどうだ?」
「ノーシグナル」相方のポールも自分のスマフォを見て訝し気な顔をする。
鉄壁の感度を持つハンドセットが商店街でサービスアウトギリギリになるといったら、最寄りの基地局がダウンしている位しか原因はない。
そう言えばター坊もケータイがつながらない、と言っていたから、結構前からこの状態だったんだろうな。
ジョンソン先生はターク隊長と頭を突き合わせて「トラック出してもらってるしな…」と打診に応じる様子だ。
「太ぇヤロウだチクショウめ!」
「ケータイ使えなくしやがって!ツブしたるわ!!」
平さんもター坊もやる気満々だ。
オレが断る理由と言えば"疲れてっし~"位しかないので、行くしかないだろう。今日はもうター坊とビール飲んで打ち上げにしたいんだけどな。
んじゃ、もう一肌抜いどこうかね。
もう一丁ダット5で買っといたパーツ。電動ガン用のハイパワーモーター。
ダン中尉のドローンにスワップしてついでにプロペラを作っておく。修理工場のジャンクがいくらでもあるんで、ジュラルミンとか奢る。モーターが軽量ハイパワー化しているのでプロペラ翼面系を軽く再設計。風量同じで静音化しておく。
丁度出来上がった所で大隈三佐と大迫二尉がやって来た。後はダン中尉がやるというのでおまかせした。
今回はトラック3台と装甲車1台。多分、1小隊連れて来た感じだね。普通科隊か施設科隊かな?(空挺部隊に施設科があるか知らんけど)。
これだと人間だけなら攻略は難しいだろうね。
「ご協力、感謝します」戦闘用防護服を着込んだ大隈さんと大迫さんが装甲車から降りてきて敬礼を送ってくる。
オレたちも敬礼で応じる。
「テロ恐竜の規模は?」ジョンソン先生が情報連携を求める。
「偵察にコブラ(AH-1S 対戦車ヘリというか攻撃ヘリ。なんとか頑張ってます)を派遣中です。まもなく報告が入ります」
「木更津(木更津駐屯地)から来ていたのか。パイロットを呼び出せんかね?敵が恐竜の場合、偵察時に注意する点がいくつかある。ロングボウ(AH-64D アパッチ・ロングボウ攻撃ヘリ。この子もすでに旧式)だったらもう少し楽なんだが…」
「あの、大迫さん。コブラってオレが小学生の頃からありませんでしたっけ?」
実際、ベトナムデビューなので半世紀前の機体なんだよな。センサーも大して積まれていないしデータリンクって何ですか?という悲しいコ。その上エンジンがパワー不足のため、完全爆装すると重量オーバーで離陸出来なくなるので、代わりに燃料減らせて運用するしかない。兎にも角にも哀れ。
同世代のファントムは、なんだかんだで日本も含めて世界中でイロイロと改修されたのにムゴイもんだ。
「ええ、冷戦終結以来、旧ソ連からの進攻脅威が低下したものでして。攻撃ヘリの配備が手薄になっているのです」
「ヴァイパー(AH-1Z コブラの魔改造バージョン。同じなのは外見だけで中身は全くの別物。マムシとドラゴンくらいの違いがある)に切り替えたらどうですかな?チト高いが、かなり使えますぞ」
「予算欲しいです…、ホント。部品ニコイチとかでギリギリ運用しているのに出来もしない新型開発に予算ムダ使いして、その上今度はオスプレイにライトニングⅡ買うだなんて、ヒドいですよ」大迫さん涙目。C-1(輸送機)に付いて行くのがやっとのエアクラフトじゃ、ナンボ攻撃力あっても上じゃ名目付けづらいんだろうな。もっとも、オフィス用品にムダ使いしていたのも悪かったんだろうけど。
「ヴァイパーを呼んでやりたいが30分はかかる。時間も圧しておるのでな。明るい内にやろう。暗くなるとこちらが不利だ」
で、ジョンソン先生はさすが分かってらっしゃる。
ケータイ基地局上空から、ホバリングしながら双眼鏡で敵勢力を調査するよう、コブラのガンナーに指示を出している。
特に小型セロポーダの数をしつこく訊いていた。
大物はティラノかカルノらしい。
そして小物、つまり事実上の敵兵数は結局不明という観測報告が帰って来た。
オレはトラックに乗っている自衛隊員たちを振り返った。
フツーなデイノニクスでも5頭以上いれば、人間勢はひとたまりもなく全滅させられる。
もっと小型のヴェロキでも数が揃えば人間30人くらい瞬殺だ。
どうやったら全滅を避けられる?
ミハル(デイノニクス)とマリさん(トロオドン)と渡辺さん(オルニトレステス)の女性陣は口々に「ヤッホ~」「また来ちゃいました」とかハイタッチなんかしてる。
負ける気がしてませんね彼女たち。
なんか考えるか。基地局の図面もらって来よ。
ポール :サメ?
トウヤ :違うんじゃないの?
ジョンソン:あ~オモチャ会社のハナシかね?一応社内紛争があったことだし。ともあれ、ようやくワシのハムヴィーが直ったわい。




