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恐竜日和 ウォーク・アバウト  作者: ニジヘビ
ミリタリーお茶会編
55/138

055:アメリカン・アタッカー

US海兵隊+陸上自衛隊+恐竜勢vs翼竜勢の総力戦!

今年も罰当たり誰得恐竜小説をよろしくお願いします。



 055:アメリカン・アタッカー


 オルニトレステスの渡辺さんのおかげで回収に成功したドローンは、無傷とは行かなかったものの、機体と翼は無事。カメラも無事だった。

ターミナルに映っていたカメラの映像は一面赤かったが、屋根にカメラがベッタリ張り付いていたせいだった。

 しかし、プロペラが割れ、飛行不能になっている。

 まあ、プロペラを交換するか、どこかであつらえればすぐに直せる。


 オレたちは、家のご主人と奥さんに礼を告げ、本隊が待機しているポイントへと戻る。


 キェーーー(おーい、あんたら)。


 声を掛けてくるような鳴き声がしたので、声のする方を見ると、プテラノドンが低空でゆっくりと近付いて来る所だった。


 変なプテラノドンだった。

 ネクタイらしき帯を首から下げ、背中にビジネス向けのショルダーバッグを背負っている。

 なんか、オレの仲間というか、身だしなみに気を遣うタイプのようだ。敵だとしても好感が持てる。

 プテラノドンは、滞留している本隊から少し離れた所へフワッと着陸した。

 見事なランディングだった。

 多分、自我はあるけれど人間の言葉を失ったタイプの発症者(以下、恐竜)なのだろう。


 プテラノドン。

 言わずと知れた、翼竜の象徴とも言える種。

 翼開長はハムヴィーより大きめだから7m程になる。

 体重は見た目とさっきのランディングからすると、10~20kgくらいか。

 地上に降りると、目の高さはデイノニクスのオレと同じくらいになる。

 後で調べてみたら、プテラノドンは8000万年ほど前、白亜紀末期のごく限られた時代にしか生息していなかったそうで、そろそろ真鳥類(鳥類の直系の先祖)が出現し始めていた頃。

 白亜紀末期の進化の暴走の中、翼竜は、ケツアルコアトルなど第5世代戦闘機のように翼の形を変えて生きながらえてゆき、プテラノドンの高アスペクト比の美しい翼は消えて行ったそうだ。


 キコロロ…(あの、すみませんが…)。


 プテラノドンに戦意はないようだった。何か話し掛けて来ているようだけれど、言葉が全く分からない。

 どうしたもんかね?


 フィーヨ?(どうしました?)。


 ハムヴィー2号から、始祖鳥の藤沢さんらしい声が返って来た。


 キョロルルル…(話があります。撃たないで下さい)。


 藤沢さんの声にプテラノドンは何か喋った。


 フィリリ(紳士的にふるまうなら何もしません)。


 キョーキョコロロ…(もちろんです。あんな野蛮な連中と一緒にしないで下さい)。


「山本さん、私を彼の所まで連れて行ってもらえませんか?」藤沢さんの頼みに、オレは藤沢さんを抱えてプテラノドンの前まで出向き、くちばしが届かない所で脚を止めた。

 ジョンソン先生(少佐)が同席しICレコーダーを用意。隊長とジェシーが護衛に着いた。


「では藤沢さん。まずこの方に日本語か英語が聞き取れているか、訊いてもらえますか?」

 藤沢さんはうなずくと、プテラノドンに訊いた。

「ええ、日本語は聞き取れているそうです。しかし、喋ることができなくなっているそうです」

 やはりね。

「では藤沢さん。直接質問しますから、返答の通訳だけお願いします」

「わかりました」

「では改めて。私はアメリカ海兵隊所属の山本 登也少尉です。まず、あなたの名前とご職業を教えていただけますか?」

『私ですか?橋本はしもと 隆志たかし、デザイン会社のサラリーマンです。

 他の翼竜に不穏な動きが出て来たので、あなたたちに警告に来ました』そして「少し焦れているようですよ」と藤沢さんは言い添えてくれた。


「不穏な動き、ですか?」


『あなたたち、アメリカの海兵隊ですよね?さっき河川敷の方で翼竜を片っ端から墜としていた』プテラノドンが訊いて来た。

『翼竜たちが、あなたたちを狙っています。今、総力戦に向けて仲間を呼んでいる所です』

「攻撃意思のある翼竜の数はどれくらいになりますか?」

『分かりません。千なのか万なのか、数えきれないほどいます。早く逃げて下さい』

「そうですか、情報提供感謝します。

 ところで、既にご存知かもしれませんが、私たちは保護を求めている恐竜化した人たちを避難所まで移送している所です。橋本さん、あなたはどうされますか?」

『そうですね、では、私も一緒にお願いします』


「では一段落付いた所で、橋本さん。もう少し詳しいことを聞かせてもらえますか?」

『ええ、まあ、答えられることでしたら』


「あなたがその姿になったのはいつですか?」

『3日前です』

「どうやって飛び方を覚えたのですか?」

『他の翼竜のことは知りませんが、私はこの体になっての3日間、公園で練習してようやく昨日飛べるようになりました』

「やはり練習が必要なのですか」

『ええ。名コーチが付いてくれたので、何とかなりました。

 オーイ、ヨウさんリミさん、来ても大丈夫だよ』

 橋本さんの呼び掛けらしき鳴き声に、カラスが2羽舞い降りて来た。

『公園で飛ぶ練習をしていたら、教えてくれました』


 陽の光に深みのある黒から光を散らす藍色まで、射干玉ぬばだまのようにきれいな羽色の夫婦。小ぶりの体、クチバシの先から額への滑らかなラインはハシボソガラスだな。

 ハシボソガラスはハシブトガラス(アタマがリーゼントで気が荒い)と違い、林や森、木の多い公園に巣を掛けるため、ハシブトガラスのように人間との軋轢が少なく、そのせいか全般的に人懐こい。

 世界規模であまりいいイメージを持たれない鳥ではあるけれど、オレは好きな鳥だ。


『こちらは師匠で旦那さんのヨウさん』

「…コンニチワ」日本語で挨拶してくるとは珍しい。おまけに自分の10倍もある翼竜に飛び方を教えるとは、何とも器の大きい御仁だ。

『そして、ヨウさんの奥さんのリミさん』

「カゥ(こんにちわ)」


 このカラス夫婦って、ひょっとして何かの神使なんじゃないのか?

 ちょっと訊いてみる。


「こんにちわ、ヨウさん。なぜ橋本さんに飛び方を教える気になったんですか?」

『私たちの巣が襲われた所を、飛べもしないのに助けに来たのでな。その礼もある』日本語で挨拶してきた方のカラスが答える。こちらがヨウさんらしい。奥さんと見分けが付けづらいが、若干ヨウさんの方が体付きがスマートで声に張りがある。

『小型の翼竜に襲われていたので、いてもたってもいられなかったのです。

 その、公園の隠れマスコットなんですよ、ヨウさんたちは』ハシモトさんが補足する。

「マスコット!?」

『悪さもしないし、仲のいい人間もいるようだったので。たまに公園に来ている人と日本語で挨拶していましたし』

「ヨウさんは人間の言葉が分かるのですか?」

『そうだ。実際、君が抱いているその鳥の通訳がなくても、こうして話しているだろう?私の女房もそうだ。

 あいにく、しゃべるのは難しいので片言になるがな』


「他の翼竜と話はされましたか?」

『いいえ。なんだかおかしな連中でしたよ。

 何というか、言葉は通じるものの、考え方に思慮や分別が感じられないんですよね。

 その…チンピラというかサイコパスというか、とにかく、まともじゃありませんでした。

 逆に私の方がおかしくなったのかと思ったほどです。

 ヨウさんたちがいてくれたおかげで、正気が保てましたし、何よりあなたたちに会えて、ようやく人心地着いた気がします』

「では、私たちのように会話が成立する翼竜とは出会えましたか?」

『近付かないようにしていたので、いるかどうか分かりません』


「そうでしたか。では、ヨウさん。集まってきている翼竜の数は分かりますか?」果たして野生のカラスの知性やいかに。

『詳しくは分からん。少なくとも群れが10ほど』

「すみません。ヨウさんの言われる"群れ"は一つで何羽ほどになりますか?」

『100ほど。20家族ほどになる』

「つまり1000羽…」

「コァ(そうだ)」


「まあ、それくらいなら戦えるかな?今回は仕方ない、発砲を許可する。敵の生死は問わない」ジョンソン先生が作戦方針を明言して来た。-敵の生死は問わない。つまりそれほど戦局が不利だということだ。


『あの、よければですが、私が様子を見て来ましょうか?』橋本さんの声を通訳してきた藤沢さんは、不安げにオレを見上げる。

「…危険ですよ」

 正直、敵の規模、進軍経路、補給経路の3つは作戦立案に最低限必要な情報だ。

 相手がその日暮らしの翼竜なので、補給経路は無視出来る。残る2つが掴めるのは非常に重要だ。

 だが、民間人に単独で偵察させるのは無謀だ。

『私は彼らが飛ぶ高度よりかなり高く飛べます。町の上空を一回り観て来るだけですから、攻撃される危険はほとんどありません』


「先生、どうします?」


「…分かった、頼む。まずは通信手段を都合付けよう。少なくとも、作戦中の連絡は絶やさんようにしたい」


 おお、これで航空支援も揃った!

 後は無線だな…。


「あるよ」足元へ来ていたドロマエオサウルスの小野さんだった。

「え?」

「ウチにあるよ。ネックマイク。ハンディートーキーも一応ある。周波数がトウヤさんたちのラジオと合うか分からないけど」

「本当かね?それは助かる。決済はカードか後ほどウチの基地に請求してくれればいい」

「商談成立」


 結局ダット5に行くことになった。(ヨッシャー!!)


「ところで、橋本さん。あなたはなぜネクタイを締めているんですか?」

『はは、ようやく飛び方をマスターして身動き取れるようになったので、今日出勤したんですよ。あいにく、この状況で社は閉鎖されていたので、今は帰宅途中なんです』

「なんだ、トウヤのお仲間か」隊長が忍び笑いを漏らす。

『?』橋本さんは首をかしげる。

「初めて会った時、コイツは君と同じようにビジネススーツを着て出勤しようとしていたんだよ。

 よし。地上支援は任せてくれ。偵察任務、よろしく頼む」

『了解です!

 翼竜を墜とせるのは、あなたたちが初めてでした。他の人間は自衛隊さんも含めて防戦ばかりで』

「どういうことだ?」

『つまり、翼竜のバトル・ジャンキーはほとんど手つかずで残っているんですよ。地上の武闘派恐竜たちはこの3日でおおむね相撃ちで死んだようですが』

「じゃあ、私たちがさっき墜としたのはホンの一部だってこと?」

 ジェシー(シャルビノ少尉)の問いに、橋本さんは真剣な面持ちで頷いた。

『まだまだ来ますよ。このままでは避難所も襲われます』


 そしてオレたちは移動のため、クルマに乗り込む。


 それにしても、アレだ。

 オレたち恐竜というのは、何かに付けてタテに長いので、クルマに乗るのに困る。

 とは言え、猶予はない。

 いつ襲撃してくるか分からない。

 その上、敵の正確な数も布陣も分からない。


 今回は急を要する作戦ということもあり、ミリタリーショップ・ダット5まで急ぐ。

 ナンマンダブ、エイメン、色々とお祈りがつぶやかれることになった。


 店に着くと、ドロマエオサウルスの小野さんが車から飛び降り、店の裏にオレたちを招いた。そして、今まで羽毛にカムフラージュしていたらしい小さなポーチから鍵を取り出し、ジェシーに渡した。

 ダット5の中は、いつ来てもワクワクするが、今回は別格だ。


小野トシ、ライフルは頼んだ。オレは表でマイクのフィッティングをしてくる」佐野さんはネックマイクとハンディトーキーの箱を抱え、店の表に出て行った。


 小野さんは、89式小銃用のアンダーレールとフォアグリップを出してくれた。

「ストックもあったら見せてもらえないか?テレスコピック(伸縮式)かフォールディング(折り畳み式)があるなら欲しい」

「お安い御用だ。オプティカル・サイト(光学式照準器)はどうする?」

「それはいらん。サイトはほとんど使わない」


 小野さんは作業に入ると、何を考えたか89式をバラバラに分解してしまった。

 そして、パーツを並べてしばらく眺めた後、ちょっと待ってろ、と言い残し、奥に入ってしまった。

 奥の方から金属を削る甲高い音がしばらく続き、数分後に小さなパーツを何点か持って戻って来た。

 次に、摩擦面をベルトサンダーで鏡面ポリッシュし耐熱テフロンコートを塗った。ガスラインもポリッシュし、こちらはフッ化コーティング。


 そうして、89式はフォアグリップとフラッシュライトが装備され、ストックはMP5ライクな伸縮式へスワップされることになった。



 オレはなんか面白いモンないかな、と店内を物色。

 …ちょっと電動ガン用パーツコーナーでよさげなものが。

 …2つ…あ、これもいいな、3つ?


「おい、ヤバそうだぞ、トシ」店の表で橋本さんにハンディトーキーのフィッティングをやっていた佐野さんがあわてて駆け込んで来た。

「どうした、佐野シュン?」

「翼竜が集まって来たぞ」

「じゃあ、出番だな、ポールさん。出来ました」小野さんはレシーバー・ハウジングをパチンと閉め、完成した89式を差し出して来た。


 出来上がったアサルトライフルは、ライフルというよりマシンガンに見えた。

オオムカシのギャング映画によく出て来た、トンプソン・マシンガンに似ている。

 バレルがやたら長いので不格好だが、突撃銃の名にふさわしく、弾を吐き出すことしか考えていない、なんとも攻撃的なシルエットになった。


「ちょうどいいテスト・ファイヤになる」

「トリガーメカに手を入れた。セレクタリーをフル・オートにした状態で、ハーフ・プルでノッチが掛かる。そこで止めるとセミ・オートに、引き切るとフル・オートになる」

「マジか?そいつはイイ。じゃ、ちょっと行ってくる」

「じゃ、オレも」


 店の表に出ると、皆さん不安げに空を眺めていた。

 商店街の空を翼竜が雲霞のように飛び交っている。


「ジェシー、ミハル、本隊は頼んだ」ポールは通りすがりにハムヴィー2号から予備のマガジンポーチを取る。

「オレらオフェンスね」

「トウヤ、持ってけ」ターク隊長が、ガバのマガジンポーチを放ってよこしてくれた。

「ありがとうございます」オレはサムズアップで礼を言う。

「ヤバそうならすぐ戻って来いよ」

「コピー(×2)」


 ポールは十字路に出ると、マグポーチをストラップに着け始めた。

 どこから攻撃されるか分からない最悪のポイント。フツーこんなトコ選ばんぞ!?


「上空に停滞している諸君に告げる。こちらはアメリカ海兵隊および自衛隊の保護者輸送隊である」ターク隊長がアナウンスを始めた。

「キァーー…(上空に停滞している諸君に…)」始祖鳥の藤沢さんが、言葉を完全に失った翼竜のために通訳のアナウンスを続ける。

「当方は、保護を求める者は、人間も恐竜の別なく受け入れる。

 保護を求める者は速やかに着陸し、その意思を示すこと。または速やかな解散を要請する」同じく藤沢さんのバイリンガル・アナウンスが続く。

「ただし、攻撃してきた場合はその限りではない。

 宣戦布告とみなし、当方も応戦し諸君らを撃退する心づもりである。

 これにより死傷者が出たとしても、当方は一切関知しない。

 繰り返す…」

 ターク隊長は律儀に繰り返し、呼びかけに応じた翼竜が、保護を求めて何羽か舞い降りて来た。

 たが、上空の翼竜たちは3回目のリピートまで待ってはくれなかった。

 舞い降りて来た翼竜たちの保護もそこそこに、戦闘が始まった。


「ウェラ・タイプ・エイトナイン、ロックンロール!(さて89式、演るか!)」ポールは楽し気に89式のボルトを引き、マガジンポーチのカバーをめくり返した。

 オレもポールから借りたばかりのM.E.U.改(コルト社の半自動拳銃、ガバメントのUS海兵隊カスタム仕様をポールがさらに高耐久化したバージョン。)のスライドを引き、指の間にマガジンをたくし込む。


 ジェシーたち1号車勢はさすが翼竜の相手に慣れたのか、第一波から、こともなげに次々と翼竜を撃墜して行く。


「イェ~~~~ヤァァ~~~~!!」ポールもよほど鬱憤が溜まっていたようだ。89式ダット5カスタムのトリガーコントロールを早速駆使して、セミ/フル切り替えながら、カツオドリのように急降下攻撃をかけて来る翼竜を次々迎撃する。

「イン・トゥ・イーショーン!!(直カ~ン!!)」


 お、ポールがなんか歌っとる。

 オレも好きな曲なんで混ざろう。


「オイ、助っ人に来たぞ。ライフルの調子はどうだ?」ドロマエオの小野さんがラジオフライヤーに何か積んで持って来た。ご丁寧にもM1ヘルメット(1985年まで使われていたアメリカ軍のヘルメット)らしきレプリカ(ドロマエオサウルスサイズ)を被っている。

「ディスティニーオーーブーーモーーメン!!(運命的な出会いだ!!)」

「ソイツはガンスミス冥利だ!タマ持って来た、5.56mmと.45。マグ・ロードはオレがやる。使い切ったらオレに寄こしてくれ。ついでに次メタリカにしてくれ」

「OK。ギブミー・アモ(OK。タマくれ)」


 オレたちは、小野さんを中心に背中合わせでリバース・クロスファイヤ・アタック(逆十字砲火)での応戦に勤しむ。フツー、クロスファイヤというと、十字路に入り込んできた敵を後方と側面の2方向から集中砲火させて全滅させるモンなんだが、オレらの場合は逆で、十字路のど真ん中で四方に攻撃するらしい。


 本隊の方を見てみると、ジェシーはM700のマガジンを咥え、片手撃ちでボルトを操作しながら、ワン・ショット・ワン・キルでガンガン翼竜を撃墜しまくっている。

 自衛隊勢も89式で頑張っているが、慣れていないらしくなかなか命中弾を得られない様子だった。だが、被害を出さず、応戦している所はさすが高練度の空挺部隊という所だ。

 デイノニクスのミハルは本隊の周りを忙しく駆け回り、撃ち漏らしをM4で仕留めに掛かっている。

 GPMG使いのターク隊長は、上空で固まっているグループやチームアタックを掛けて来る翼竜へGPMGで.308を雨アラレと浴びせていた。

 その周囲ではドロマエオの佐野さんはじめ、手先が器用な小型の恐竜がチャキチャキとマガジンロードを仕上げては手渡していた。


 ハシボソガラスのヨウさんリミさんご夫婦は、2号車のターレットから上空監視。時折指揮を執っているジョンソン先生と藤沢さんに状況を知らせていた。


 小野さんは、マガジンスプリングに脚の鉤爪をひっかけてテンションフリーの状態でザラザラとカートを詰めるため、リロードが実に早い。30連のSTANAGマガジン(5.56mmNATO弾用共通規格マガジン)を4秒ほどで送り返して来る。

 おかげで"仕事"が詰まっている時でも常に2本ほどマガジンストックに余裕がある状態をキープできていた。

 もっとも、オレたちも弾がいつまでもつか分からない。なるべく1発で仕留めるよう、テンションガン上げで銃を操る。


『ポール、トウヤ』先生からの無線が入る。『ハシモト・タカさんが上がる。トサカが赤いプテラノドンは撃つな』

「トサカが赤いプテラス(翼竜)は友軍竜。コピー!(×2)」

 そろそろ翼竜を撃墜するのにアキてきた所だったので、ちょうどいい清涼剤になった。


 しかし、発症してから3日足らずじゃ、撃墜されに出ていくようなもんじゃないのか?


 が、タカさんは予想の斜め上を行った。


 トサカをフェース・グリスで赤く染めたプテラノドンは、低空で防戦圏から離脱すると、ビル風を利用してあっという間に高度を稼ぐ。そのまま急降下で速度に乗ると、群れている翼竜のグループの中へ切り込み、翼竜たちの攪乱を始めた。

 ヨウさんがタカさんに伝授したのはタダの飛び方ではなく、空戦技術込みだったようだ。ハシボソガラスとプテラノドンとでは翼のジオメトリーが根本から違うというのに、一体どうやって技法をアレンジしたんだ?

 それに、トーキーの向こうからは藤沢さんがタカさんを誘導しているらしき声が聞こえ、一緒にヨウさんらしきカラスの声もする。


 一体何が起きようとしているんだ?


 分かるのは藤沢さんの指示だけ。

 タカさんとヨウさんのやり取りは全く分からない。

 だが、3人がやろうとしていたことはすぐに分かった。


 流れが変わったのか、いきなり当て易くなった。今まで10羽近くまとまって攻撃されていたのが2~3羽ほどの小規模の攻撃に変わり、マガジン・チェンジのタイミングが取り易い。


 藤沢さんが分散/集合と命中確率を計算してタカさんをオペレートしてくれていたらしい。

 やはり数学者や物理学者の頭脳は、こういう時活きるな。


 そうして、撃って撃って撃ちまくっている内に、不意に翼竜の攻撃が退いた。


 よく晴れた5月の空の下、風が静かにガンスモークを吹き消して行く。

 静かな世界、ガバのスライドがチリチリと熱鳴りしている。

 十字路の周囲30mは撃墜した翼竜の山がクレーター状に積み上がり、オレたちの周りは灼けた薬莢の山が陽炎を上げていた。

「フ~、メタルと恐竜はよく合うな(×3)」結局、3人でいろいろ取り混ぜ4曲ほど歌った。

「あー、冷えたコーラ飲みてぇ」

「あるよ。店で冷えてる」

「じゃ、帰ろう。小野さん、マグ・ロードありがとう。乗りなよ、引いてくから」オレはラジオフライヤーのハンドルを取る。

「じゃ、頼むよ」小野さんはラジオフライヤーに跳び乗ると、寛いだ様子でうずくまった。


 ガバも89式も見事に持ちこたえた。

 翼竜は、ほぼ全てヘッドショットで墜としたので、軒並み恨めし気な顔つきで息絶えている。

 弾が心許なかったので、オレもポールもそうせざる負えなかった。

 先んじて警告はしたぞ。それもバイリンガルで。文句は言うな。

 もちろん文句は出てこなかった。

 代わりにオレたちは、翼竜で出来たクレーターを登る羽目になった。


人間勢+恐竜勢:冷えたコーラ ウマ~!!(×全員)

ポール    :しかしあのタイミングでタカさんが上がるとは思わなかった。小野さんのマグロードも大助かりだった。

トウヤ    :ホントホント。あの二人いなかったら戦局かなりヤバかったよな。

ターク    :オマエら正月からバカやってるんじゃない。

佐野     :ウチはイロイロ儲かったんで大助かりだ。

小野     :89式の気に入らんところ手入れられた上に実戦でガッツリ頑張ってくれたのには感無量だ!

タカ     :早く私も日本語喋れるようにならんとな。


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