051:恐竜が来るとき #1-1
孤高のガンファイター、大迫二尉のお話。
無限不可能性ドライブ スイッチオン。
051:恐竜が来るとき #1-1
私たちは、恐竜化症発症者(以下、恐竜)を保護するため、米海兵隊のチームが滞留しているポイントへ移動している所です。
私はと言うと、先導車となる米海兵隊のボブ・ジョンソン少佐殿が運転されておりますハムヴィーに同乗させて戴ていております。
私は後席に席をお借りしている次第なのですが、その目の前に、恐竜-デイノニクスがおりまして、私のことを見ています。
正直なところ、複雑な感覚です。
あ、失礼しました。
私は陸上自衛隊 習志野空挺部隊所属 大迫 拓磨二尉と申します。
そのデイノニクスは、米海兵隊所属の士官(-らしい)で、山本 登也少尉と名乗っています。
先ほど私たちが守備する避難所で、実行犯80頭あまりの恐竜たちによる、襲撃人質事件が起きてしまいました。
避難者のエスコートで、たまたま避難所を訪れた少尉たちは、ものの数分で事件をほぼ終息させてしまいました。
少尉は、実行犯竜の内、実に70頭程を生かしたまま倒してしまいました。それもわずか数秒で。
しかも、制圧に先立つ説得交渉で見せた心。
何なのでしょうか、この感覚は。
怖い、というのとも違います。
人の言葉を解する魔物に、隣に同席された感覚です。
神社かお寺に来た時の感覚にも似ています。
その当の恐竜-山本少尉は、じっと私の方を見ています。
恐竜の目と言うと、映画などではよくネコのように瞳が縦に細くなっている演出がなされますが、少尉の瞳は鳥のように丸く、ありていに言うのでしたらタカによく似ています。
それなのに、一般的な猛禽のような、隙あらば飛びかかって来そうなプレッシャーはなく、食事を済ませてくつろいでいるオオカミのような、どこかおっとりした雰囲気です。
TVドキュメンタリーで見かける最近の恐竜と同じで羽毛に覆われていて、モフモフです。
ああ、思い至りました。
神社の狛犬に雰囲気が似ているのです。
バチ当たりな事をしたら許さない。
そんな、厳かながらも親しみのある眼差しなのですね、山本少尉は。
「あの、二尉。何があったのか教えてもらえると、え~と大隈三佐から聞いたのですが。お聞かせ願えませんか?」少尉は親し気にそう言われ、"ダメですか?"とでも訊くように首をかしげるのです。
言葉をしゃべる竜は、酒席での話を待ちわびる同席者のようでした。
「あの、では…」
私は、おとといからの出来事を話し始めました。
-2016/05/16
朝、叩き起こされたのは、デフコン4の呼び出しでした。
私が基地に着くと、デフコン3になっておりまして、それは事実上の侵略行為が起きていることを示しておりました。
北朝鮮?中国?
どちらも極東圏でキナ臭い活動を展開してはいますが、日本に殴り込みを仕掛けるような手合いではありませんね。
ロシアさんも、ゴルバチョフさん以降はガラリと対外意向を変えられましたし、これもありえませんよね。
東アジア方面での作戦支援活動の意趣返し、と言うのも、考えづらいですし、全く状況がつかめません。
そして、ブリーフィングで発表された内容は、酔っ払って見た夢のような内容でした。
それは、"大量出現している恐竜の掃討"でした。
これではFPSゲームか映画です。
ブリーフィングに参加している隊員の中には、歓喜の声を上げている者が多く見受けられました。
掃討目的での実弾使用許可など、自衛隊では100%起こらないからです。
もしもそれが発令されたとしたら、日本領土内に敵対勢力の侵略を許してしまった場合に他なりません。
状況にも寄りますが、喜べる事態ではありません。
そして、出撃に中り、私たちは装備を受け取ります。
89式小銃(豊和工業製5.56mm自動小銃。AR-18を手本に開発された。)1丁と銃剣に、30発弾倉6個。9mm拳銃(独ザウアー&ゾーン社製 P220のライセンス生産品。ライセンス元社名のSIGとも呼ばれる。)1丁と弾倉6個。
おかしいです。こんなの。
こんなの狂気の沙汰か悪い夢です。
この時は、何がおかしいのか、自分でもはっきりと分かりませんでした。言葉に言い表せないからです。
しかし、それは取り敢えず置いておきます。
自衛隊員として、国土を守る事に個人的な迷いなど持ち込んでは危険です。
「オラ、拓磨行くぞ」私が補佐を務めております、上官の石山 浩司一尉。そして我が小隊の隊長です。
普段なら陸路で下総基地まで向かい、C-1やCH-47に搭乗するものです。
余程急を要するのでしょう。
今作戦は演習場から搭乗することになっています。
薄明の陽の中に演習場でうずくまるCH-47 チヌークは、オリーブドラブの機体をどこか禍々しくテラ付かせ、ガスタービン・エンジン排気の有機的な甘苦い臭いを漏らしながら私たちを待っていました。
私たちが乗り込むにつれ、機内には、私たちが踏みしだいた青草の臭いが立ち込めます。
やがて、耳障りなモーター音を立てながらカーゴハッチが狸穴を閉じ、ヘリは離陸します。
私たちは江戸川区に派遣されました。
江戸川にある小学校の校庭に着陸します。
私たちはここを避難所兼指揮所として活動を展開して行きます。
私たちは、予定通り恐竜の掃討に出撃します。
同僚たちは頬を綻ばせながら、小銃の遊底を引き、弾丸を装填します。
まるで釣り好きが釣竿を用意するような感じです。
私は素直に喜べません。
その恐竜は、本当に存在するのか?
そして、本当に戮してしまっていいのか?
最初の疑念はすぐに晴れました。
恐竜は、ごく当たり前のように街に溢れかえり、民間人たちと壮絶な殺し合いを繰り広げていたからです。
同僚たちは、鼻歌まじりで次々に恐竜を射殺して行きます。
けれど、私には同僚がなぜ恐竜を殺すのか、よく分かりませんでした。
私と対峙した恐竜はみんな、目を合わせると、何もせず他所へ行ってしまうため、撃つ必要を感じなかったのです。
しかし、それも作戦開始から2時間が過ぎる頃には、流れが変わりました。
持ち弾を使い果たした同僚が、次々と恐竜に倒され始めたのです。
キバにかかり、シッポでなぎ払われ、ツメで切り裂かれ、ほぼ即死で殉職に至りました。
この時私は、肉食恐竜に食い殺されるのはまだマシな死に方なのだと初めて知りました。
アパトサウルスなど長いシッポを持つものになぎ払われると、人間は当たった所を境にして、体が二つにちぎれてしまうものなのです。
実際、アパトでも大型のものは、トラックのコンテナを切り裂く程の恐ろしいシッポを持っていました。
30名いた同僚は、すでに18名にまで減ってしまいました。
隊員の中には、意趣返しに恐竜への復讐を始める者も出始めます。彼らは銃で撃ち倒した後、銃剣を何度も何度も突き立て、悲鳴を上げる恐竜を殺します。
「はは、ま~だ生きてるぜコイツ」一尉は、銃弾に倒れた恐竜に情け容赦なく1発づつ銃弾を撃ち込み、何発まで持ち堪えるか、同僚たちと趣味の悪い賭けに興じ始めています。
気分、悪いです。
殺すことが、ではありません。
殺しを愉しむ、その心根がです。
一尉は、殉職した同僚から弾薬を回収しながらパトロールを続けているので、一向に弾切れの気配はありません。
そして私はというと、まだ1発も撃っていません。
恐竜たちは、明らかに意思を持ち、殺意を見分けているふしがあります。確信はありませんが、相手の動きを見る限り、そうとしか考えられないのです。
-腰抜け
-役立たず
-お荷物野郎
-碌でなし
そんな私に聞こえよがしに、ヒソヒソと囁き合う声がします。
この頃には、薄々感じていた違和感がようやく言葉にまとまり始めていました。
私は、同僚たちの陰口をよそに、逃げて行くラプトルのような恐竜を追います。
恐竜は路地裏に逃げ込みました。そこは雑居ビルの裏手らしく、行き止まりになっていました。
クォーーォ!!クォーーォ!!
恐竜は壁際に張り付かんばかりに身を寄せ、怯えた目で私に何かを訴えるように必死で鳴き声を上げます。
「…君、私の言葉が分かりますか?」
恐竜は私の言っていることが分からないようです。本当に理解出来ないのかもしれません。怯え切っているせいなのかもしれません。
私はもう一度話しかけます。今度は、ゆっくりと、落ち着いた声で。
「私の言葉が、分かりますか?分かるなら、ゆっくり頷いて下さい」
私の言葉に、恐竜はゆっくりと頷きます。
そして、私は重要な事を恐竜に問いかけました。
「…あなたは、人間なのですね?」
恐竜は目を見開き、何度も頷きます。
クォーオーキュルル…。
「すみませんでした…。気付いてあげられなくて」
通りの方から同僚が私を呼ぶ声がします。行かなくては、なりません。
私は、できることならこの恐竜さんを保護したかった。
しかし、私が所属する小隊は狂気に侵されたような状態になっています。恐竜を目にすれば、なぶり殺しにしてしまうでしょう。
「これ、携帯食と水」
私は恐竜に携帯食ポーチを手渡し、手を握ります。
「死なないで。
生き延びて下さい」
クフッ…クフッ…。
恐竜さんは、鉤爪の生えた手でそっと私の手を握り返し、涙を流しながら何度も頭を下げて来ます。
恐竜さんと別れて隊に戻ると、一尉がイライラしながら待っていました。
「どこ行ってた!まったく」
「恐竜と話をしていました」
「は?」
「一尉殿。恐竜を銃撃してはいけません。彼らは人間が恐竜になってしまった者たちです」
「…アホ」一尉と小隊の全員が、呆れ顔で目を細めます。
「ですが、本当のことです。恐竜たちがどこから現れたのか、その原因もこれで説明が付きます」
「行くぞ」一尉は背を向けます。
「一尉!」
「黙れ!」一尉は、有無を言わせぬ形相で私をにらんできます。私は、仕方なく口をつぐむ他ありません。
その一尉も、そろそろ弾薬が心許なくなったのか、避難所へ帰投することにしました。
そうして、補給兼報告のためCPを兼務している避難所に着いた私たちを待ち受けていたのは、在留米軍横田基地からもたらされた連携報告。
突如出現した恐竜は、人間が恐竜に変身した者たちなのだという事実。
そして、恐竜と化した人間の中でも、人間だった時の意識を持っている者がいると言う情報。
小隊の生き残り全員が驚愕に目を見開き、次に"なんでこいつだけが"、という顔で私を睨みます。
恐竜への射殺命令を撤回するべきか、上層部も頭を抱えていたようでした。
結果的にですが、国民に対して掃討作戦を展開するという、ありえないことが起きてしまい、実際に全国規模で成果を挙げてしまうという、世界の終わりのような大事件が起きてしまったのです。
当避難所で作戦部長を務める大隈 智也三佐に、一尉と私は任務中の報告をします。一尉は戦果を。私は任務中に見聞きした出来事、あの恐竜との交流を。
三佐殿は、私の報告に"やはりか"と言わんばかりの苦い顔をされました。
そうして、大本営からの通達がないまま、私たちは宙に浮いた状態で避難所を専守防衛することになりました。
恐竜たち-恐竜になってしまった国民への掃討作戦は、一時中断になりました。
-2016/05/17
私たちは、避難所の設営を進めます。
小学校の体育館を中心に、校舎の中も宿泊可能になるよう片付けを黙々と続け、半死半生でやってくる避難者たちの救護と炊き出し。
一尉は相変わらず、いえ、ますます危険な状態になってきています。
この頃には、避難所にポツポツと恐竜がやってくるようになりました。
私は恐竜たちに声を掛けようとします。
しかし、一尉は私を押しのけ、89式小銃の威嚇射撃で応じます。
「あの、一尉殿…」
「ほっとけ。今度来やがったら無反動砲でトカゲのミンチにしてやる」
一尉の気勢に悪乗りした避難者たちの中には、恐竜たちの正体を知っているにも拘わらず、彼らに石を投げつける者まで出てきました。
ヘリのパイロットたちからは、町の方はひどい状況で、まだあちこちで戦いが起きていると聞かされました。
あの恐竜さん、逃げ切ってくれたかな?
寒い思いをしていないだろうか。
私は、一人で野戦食と炊き出しの温かい豚汁を食べながら思い返します。
携帯食と一緒にファーストエイドキット(応急手当キット)も持たせてあげればよかったな。
-2016/05/18
私は一尉と数名の部下と共に、避難を求める地域の方々へ呼び掛けの巡回に、高機動車(通称、コウキ。陸上自衛隊が運用している、悪路走破性能に特化した人員輸送車。)で出動します。
そこへ、妙な通報があったので急行するようにとの指示が、GPS座標と共に来ました。
なんでも米軍のチームが恐竜と一緒に住宅地でタムロしているとのことで、追い払って欲しいとの内容でした。
現場に到着すると、私は目を疑いました。
そこでは、確かに米海兵隊のチームが恐竜たちを保護しており、しかも重傷を負った恐竜を緊急手術しているのです。
何より、その場を案内してくれたのが、恐竜化症を発症しデイノニクスとなった山本少尉なのでした。
少尉は、名前からすると明らかに日本人というか日本竜でした。そして、どんな経緯があったのか、背中にMARINEのロゴを背負っていました。
そして一尉の物言いに、比喩的な意味で食ってかかります。
さらに、海兵隊と一緒にいた保護されている恐竜たちは、みんな人間の言葉を取り戻しているのです。
私は、何が起きたのか知りたかった。
少尉に教えて欲しかった。
しかし、一尉に付き従う役職の前、私にはなす術がありません。
それに、私は自分の中に彼らに語り掛ける言葉が見つかりません。
私は、ジョンソン少佐と山本少尉に、自分のプライベート携帯の番号を残してその場を去る他ありませんでした。
次に山本少尉と出会ったのは、避難勧告に応じようとせず営業を続けるラーメン店のご主人へ、避難の再勧告に行った時です。
昼には早めの時間帯でしたが、少尉は少佐殿とバディと一緒に、楽しそうにラーメンを食べていました。
この香りは、是非とも食してみたいものです。
しかし一尉は、勧告を受け入れようとしないご主人へ暴言を吐き捨て、出て行きます。
こんなことを言うのは、部下としてあってはならないことだとは思いますが、一尉の喧嘩腰に付き合うのにも、いい加減うんざりしてきました。
遊び気分で恐竜を殺して歩く上司より、身動きが取れなくて困っている人々へ温かい食事を届けるラーメン屋のご主人の方が、よっぽど男気がありますよ。
そうして避難所に戻ってくると昼食です。
みんな黙って食べます。
まるで機械みたいです。
みんな、自分たちがしてしまったことに目を向けないようにしているのでしょう。
よりによって、自国民を殺害して回っていたのですから。
一方で、一尉と彼の賛同者たちは、また恐竜ハンティングが出来ないか、物欲しそうにボソボソ話しています。
あの恐竜さん、無事かな?
私は、一人で野戦食を食べながら思い返します。
そんなことを考えていたら、襲撃がありました。
恐竜たちの中でも体格のあるティラノサウルスかカルノタウルスらしき発症者が校門の警護を破り、侵入して来たのです。
そして、恐ろしいことに、彼らは陽動作戦のために、自らの命を犠牲にしたのです。
折しも昼食の炊き出しで、校庭には多くの避難者が出ています。
正面から突入してきた陽動班の恐竜に気を取られた私たちは、側面から強襲され、多くの避難者を人質に取られてしまいました。
相手が恐竜の身とは言え、一般人の策略に、我々は見事に嵌められてしまったのです。
一尉は歯軋りしながら、人質たちと一固まりになっている恐竜に89式小銃を向けます。
「やめて下さい一尉。人質に当たってしまいます」
「多少の犠牲はやむ負えん」一尉は私の言葉などどこ吹く風と遊底を引きます。
「お願いします。やめて下さい、一尉」例え何を言われても、今度ばかりは止めなくてはなりません。この後に及んで、避難者を犠牲にしてまで恐竜を殺すなど、恥の上塗りにもなりません。
「オマエ、この後に及んでまだ上官に立て突くか?」一尉の声のトーンが落ちました。
一尉は89式小銃を私に向けました。
「撃たれる前に、俺の目の前から消え失せろ」
この役立たず
そう、ですか。
私は、確かにこの通りの性格ですし、人からもいつもバカにされています。
ですが。
ここまで堕ちた無法者を許す訳にはいきません。
恐竜と化し人としての生を失った者たちの襲撃、人質に取られた多数の避難者たち。そして、自動小銃を向け合っての仲間割れ。
人としての定義が瓦解し、法が崩れ去った、飽くなき殺し合いの世界。
もしも、仏教の修羅界があるとしたら、きっとこんな世界なのだと思います。
それでも、あの恐竜さんと心を通わせた一時は、確かにこの世界で起きた出来事です。
変わり果てた姿になっても、一握りの糧に涙を流した恐竜さん。
科学や哲学で説明できないとしても、心や魂というものは、きっとあるのだと思います。
私は、西部開拓時代の、法を守る保安官や、仁義に生きるアウト・ローたちを、ずっと尊敬してきました。
彼らの、人間臭さと生き様を。
だからでしょうか。彼らのように生きられたらと、子供の頃から毎日欠かさず練習を重ねてきました。
ファースト・ドロー。
拳銃の抜き撃ちです。
それも、すでに銃を向けている相手を倒す域の技を。
敵が引き金を引く前に、敵がすでに私に対して行っていること、銃を向け、狙い、そのうえで、撃ち、命中させるまでを行わなくてはなりません。
そんなこと出来るわけない、と周りからはいつもバカにされました。
けれど、私は知っているのです。
学生時代に読んだ銃器雑誌の特集。
ガンファイターの神髄を。
私にとって驚天動地の内容でした。
それは、それまで私が最速だと思っていたガンファイターの1/10以下のタイムで撃つシューターの存在。
不可能要素を否定する根拠でした。
そうか。
ガンファイターの神に及ばないとしても、彼らが思い描いた世界に、わずかでもこの手で触れてみたかったんだな、私は。
だから、自衛隊員を続けて、ファースト・ドローの練習を続けて来たんだな。
それが、ずっと違和感を覚え続けていた核心だったのです。
ようやく本心にたどり着けた自分に、思わず微笑みが漏れてしまいました。
全身から力を抜き、立っている最低限のみにします。
私から離れている、自分の体の一部、腰の銃を感じ取ります。
ゆっくりと呼吸を掃き、一度一杯に吸い、再び掃きます。
そして、吸った息がバネになる所までゆっくりと吸って行きます。
ここだ。
息を止めた瞬間、体を自分のあるべきフォームへ収束させます。
私の抜いたSIGは、一尉が引き金を引く前に、一尉の肩を射抜いていました。
「うろたえるな!」私は拳銃をホルスターにストッと戻し、居合わせる同僚たちを一喝しました。
「例え姿が恐竜になっているとしても、国民に無闇に銃を向けるとは何事か!
自衛官としての本分を蔑ろにしおって。恥を知れ!」
私は、悔しい。
自分の磨いた技で、同僚を撃たなくてはならなかったことが。
一緒に苦労して訓練を重ねて来た者が、誰も、現実とゲームの区別がつかない子供だったことが。
山本少尉のように、全てを失った身にも関わらず、舵取りを失ったこの世界を何も迷わず歩いて行ける人物が、この場に誰もいないことが。
海兵隊トリオ:よくやった!(×3)
タク :はい、ありがとうございます。
トウヤ :二尉ってひょっとしてカニ座?
タク :そうですけど。なぜ分かったのですか?
トウヤ :気配り上手な熱血漢だからね、カニ座。好きだよ、オレ。
ジョンソン :さしずめテッポウエビかモンハナシャコだな二尉は。見事なファースト・ドローだった。




