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005:カム着火インフェルノ

デイノニクス VS デイノニクス



 005:カム着火インフェルノ


 高々とジャンプしたデイノニクスは両脚の鎌爪を揃え、中川さんに飛びかかってくる。

 オレは咄嗟に中川さんに猛ダッシュし、老人になるべくショックを与えないよう気を使いながら抱きかかえて、飛びかかって来るデイノニクスの攻撃ライン上から脱出する。


「何をする!!」オレは呆然としている老人をそっと下ろしながら怒鳴る。視界の隅で、中川さんが大切にしているカメラも無事なことに、心のどこかでホっとする。

 相手のデイノニクスは一瞬キョトンとすると、オモチャを取り上げられたネコのような、さも不機嫌そうなオーラを立ち登らせ、ユラユラと尻尾を揺らせる。


「クオオオオオオォォォォォ!」さっきのティラノにしろコイツにしろ、紳士的とは言い難い態度に、オレは心底腹が立った。前にツーリング先でテントをメチャクチャにしてくれたイノシシに対しても、ここまでアタマに来たことはなかった。


 オレは相手に身構える隙をやらずに、速攻で食い付きにかかった。両腕を広げての下段。相手に真後ろへのスウェーをさせ、運が好ければ脚に食い付ける。

 相手は何も考えずに上体をのけぞらせ、首を上げる。しかし、相手も流石はデイノニクス。動きが迅く、脚まで取ることは出来なかった。


 オレは続けて踏み込み、相手ののど笛を狙ったフェイントをかける。

 バクンッ!!

 威嚇も兼ねて、さっきのティラノに喰い付かれた時のように、ワザと大きな音をを立ててやる。


 相手は狙い通り、首を下げられず、のけぞりすぎていて前にも後ろにも動きが取れなくなり始めた。


 かかった。


 そうそう。頭を下げさせないようにして、仕切り直しのバックジャンプのタメを作らせない。


 真後ろにしかいけないようにサイドステップの先に牽制の掌撃を撃って。


 そうそう。バンザイしながら後ろにヨタヨタ下がるしか道はない。


 わざと何手かに1度タイミングを遅くして。


 そうわざと作ってやった逃げ道へ脚爪で払い。


 よしコケた。テールのフルスイングを相手の耳の後ろに!


 相手はKO。


「隊長!」オレは、デイノニクスが起き上がってこないかしばし様子を窺ってから、隊長を呼んだ。

「お、おお!」ちょっと間を置いてから、隊長はタイラップを取り出しながら、倒した恐竜へと近づいて来る。

「オーサム!トウヤ!!」ジョージも駆け寄って来た。

「トウヤ。キミは何か武術を身に付けているのかね?」

「ええ、まあ。初級のカタだけ教えてもらって、後は自分で発展させたものを応用しました」

「見事な体捌きだった。最初に食い付いた後はダンスでもしてるようだったぞ。しかし、なぜあそこまでのワザをあ~、練り上げたんだね?」

「オフィスでタマに必要になるのです」

「君のオフィスは強盗でも入るのかね?」ターク隊長は面食らったように言った。

「いいえ。前にオフィスで仕事がテンパってキレた外国人が暴れたことがあったのですよ。

わたしが武術を身に付けたのは、それが必要だったからです。さっさと仕留めないと仕事に影響が出ますから」

「ホウ。近いうちに手ほどきしてもらえないか?」

「海兵隊のマーシャルアーツの方がよっぽどパワーがあるので、当てられればこの位の恐竜なら1撃で仕留められますよ。

 オレの技は護身用ですし、基本技しかマスターしてません」

「だが、キミと同種の恐竜を完全に封殺していたぞ。まるでマジックだ」

「テコンドーやムエタイの足技とカラテとボクシングの拳技の両方の封じ方を研究しましたから。

 要はボクシングのフックとカラテの前蹴りを封じれば、デイノニクスのアタックは後はキバしか残されていません。

 ワザとスローで掌撃を繰り出して首を下げさせないようにすればいいんで、簡単です」

「それを瞬時に考えたのか?」

「確証はなかったのですが、どうやら正解だったようです。間違いだったらこっちがやられてました」

「ヘイ・トーヤ!プリーズ・テル・アス・アネングレッス!!(おい、登也!オレたちに英語で話してくれよ!!)」

「ソーリー。マイ・エングレッスボキャブラリィズ・プァ(スマン。オレ、英語のボキャブラリー貧弱なんだ)」

「しかし、恐竜になっても使える武術なんて一体、何と言うのだ?」

「ハッケショウ。

 ノー・フィスツ・インステッド・パームスアタック。モダン・チャイニーズ・マーシャルアーツ。(八卦掌。拳を使わず手のひらで攻撃する、近代中国の武術です)」ポールにも分かるように、英語切り替えたけれど、通じてるかな?。「ドン・ダメージ・ハンズ。イッツ・イディアル・マーシャルアーツ・フォー・エンジニア(手を痛めないので、エンジニア向けの武術なんですよ)」

「パームス・アタック!?ハッケショー?…イズ・スモウ・レスリング(手のひらで攻撃?ハッケショー?…相撲のことか?)」

「ハハハ、イッツ・"ハッケヨイ"。ノット・スモウ。アンド・ノット"ハリテ"(ははは、それ、"八卦良い"だ。相撲でも張り手でもないよ)」ポールって天然系なのかね?


功夫を重ねた恐竜にタダの恐竜が勝てるはずもないですね。

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