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恐竜日和 ウォーク・アバウト  作者: ニジヘビ
ミリタリーお茶会編
45/138

045:親父たちの再盛記

朝メシ抜きの上いい加減疲れたんで、ブランチです。



 045:親父たちの再盛記


 気が抜けちまった。

 昼までだいぶあるってのに、一仕事二仕事アレコレしたおかげでハラペコだ。

 重症を負った始祖鳥の藤沢先生を早くジェシーに診てもらう必要はあるんだが、朝メシを出発後に食べる予定だったのが大幅に狂ったんだ。

 さすがに一息入れたい所だった。

「サー、ヒァコンビニ、ワイドレスト(少佐殿、駐車場の広いコンビニが見えます)」銃座に着いている相方のポールが、クルマを走らせているジョンソン先生(少佐)に、気が向いた時に入れる定期報告をしてきた。路上の惨状がひど過ぎ、却って報告することがない現状もあるためだ。

 そう。

今のオレとポールの置かれた状況とは、言わば部長(少佐)にクルマの運転をさせておきながら、疲れたからコンビニ入ろ~よ~、とダレてるジャク(若輩)と同じだった。


「少し、休むか」先生は罰当たりどもに苦笑いしながらも、ウィンカーを出してくれた。そして、あわてたように急ブレーキをかける。

 理由を聞くまでもなかった。

 そのコンビニの駐車場の隅には、小型から中型の恐竜がアソートで積み重なっていて、店の前にはデカい鎧竜がうずくまっていたからだ。

 アンキロサウルス。映画やコミックによく出てくるし、覚え易い名前なんで知ってる。

 天然のレザーアーマーとウォーハンマー装備の生きてる戦車みたいな恐竜。

 10mほどの体長で、店の前を巧く塞ぐように寝そべっている。

 そして、目はしっかりとこっちを見ていた。


「どうしたものかな?」

 ステゴよりデカくて、ステゴより破壊力ありそうな重量感のあるシッポのハンマーは、かなりの脅威だ。ハムヴィー1号に続けて2号まで失ったら、チーム全滅のリスクが急上昇する。


 でもな。

「ちょっと行って聞いて来ます」

「おい、気を付けるんだぞ」


 ン


 オレが近付くと、アンキー(アンキロサウルス)はオレに顔を向けて、なにか唸った。

「ちわー。タバコ欲しいんですけど店やってますか?後、同僚に珈琲とか欲しいんですが」オレはサイフを出して店の中を指差しながら話し掛けた。


 ン!


 門番のアンキーは少しどいてくれ、店の中にアゴをしゃくった。

「どうもです」オレはアンキーに礼を言うと、先生たちに前肢を振った。

「おい、草食とは言葉が通じないのではなかったのか?」ハムヴィーをスポットに止めて降りて来た先生は、待っていたオレに訊いて来る。

「3.11でね、何となくこういうの分かるようになったんですよ」

「"何となくこういうの"、とは?」

「そうだな…。例えば先生、アフリカとか海外で言葉が通じない場合でも、患者さんとコミュニケーションとる必要ありますよね?」

「ああ、そうか。以心伝心と言ったか、日本語では」なんだ、知ってましたか。

「ドク、何です、イシンデンシンって?」

「インテュイション。後で説明するよポール。まずは何か買おう。ただあんまり買っちゃダメだ。1~2コだけでガマンしてくれ」こういう災害時の礼節だ。

 店の中は、マガジンコーナーの立ち読み客の他3~4人ほどいて、一様に店に入って来たオレにギョッとした顔を向ける。

 まあ、スルーだね。悲鳴も上げていないことだし。


「うわ、恐竜…」雑誌を立ち読みしていた常連らしき兄さんが、オレの姿にビク付き、次いで一緒に入って来たバトル・ドレス(防弾戦闘服)姿のポールと先生に言葉を失う。

「タバコ買いに来ただけだぜ?取って喰ったりしないよ。読書は静かにするもん、だろ?」

「アメリカ軍?」オレの背中のMARINEのロゴを見ながら言う。

「ああ。作戦中でね、一休みに来たんだ。常連さん?」

「ああ」

「水曜日だもんな。ヤッパ気になって見に来ちゃうよな」マンガ好きなら月水木金はコンビニに来るもんだ。昔なら近所のパン屋か本屋だった。これは半世紀経っても変わらない。

「ああ、サンデーもマガジンも入荷しなかったけどな」

「ジャンプは?」

「初日だったから、ダメだったみたい。しょうがないんでチャンピオンの先週号読み返してる」

「明日はキングか。でも道がひどい状態だからな、これもムリっぽいな。

 じゃな。タマには買って読みなよ。オモテのアンキーのオイさんにぶっ飛ばされるぜ」

「ああ。そりゃな。ご隠居とは長いからね」

 オレと立ち読みクンとの掛け合いで、店内の緊張は消えた。

 そうか、門番のアンキーはこの店のご隠居さんなのか。


 店の棚はやはり食料品が売り切れでほとんどない。酒のコーナーは種類が豊富で奥の壁一面を当てていた。

元々酒屋だったタナが多角化でコンビニにしたんだろうな。


 オレは、冷蔵棚からお気に入りの缶コーヒーを取り、酒のコーナーに回る。

 その棚は、喰い道楽に名の知れた金沢や越後の銘が一通り揃い、メジャーもいいところを選んでいる。

オレが好きなウィスキーも、国内外の銘をしっかり押さえてあった。

 この手の店は、店長やマネージャーが本当に商いが好きでやっているのか、POS頼みの薄っぺらな店なのか、缶コーヒーと酒の棚で簡単に見分けが付く。


 状況的に他に買うものもないのでカウンターにやって来ると、先生がチェック中だった。オレは並んで待つ間、カウンターの周りを見てみる。カラ揚げとコロッケがうまそうに陳列され、タバコ置き場にはオレが吸っている銘柄もあった。その上には、ファイティングポーズを取るボクサーの肖像写真が飾られていた。隅に『長谷川』とサインが入っている。

 会計にやって来てオレの後ろに並んだポールは、なぜかパウチの栗羊羮とお茶を持っている。

「ヨウカン、好きなの?」

「好物の一つだ。後で分けるからそんなにガン見するなよ」

「イヤ、ガイジンさんが嬉しそうに羊羮取るの初めて見たんでね。日本人として喜ばしいんだ」

「中尉、経費で落とすから、ワシの分も購入しておいてくれ。レシートを忘れるな」

「イエッサー」

「今度、浅草寺に行こう。旨い店があるんだ。あと面白い店も」

「マジか?楽しみだ」


 オレは缶コーヒーをカウンターに置いて尋ねた。

「ハイライト(日本のタバコ)を…。あの、出来たら2コ欲しいんですど、いいでしょうか?」だって基地のPXってフィリップモリス系とラッキーストライクしかないんだもんよ。ちなみにPXで販売しているモノは本国からの輸入品らしく、TSN供給の日本製と風味が違う。

 "店長 長谷川"のネームプレートを付けた中年の店長さんは、少し迷った後出してくれた。しかし、写真とは別の人らしい。

「あの、一応、成人ですよね?」さもありなん。デイノニクスの年齢を判別出来る人間がいたら、逆にこっちがビックリだ。

「ええ。免許証、お見せしましょうか?顔写真、更新していませんが」

「いえ、大丈夫です。…あの、それとは別に、よかったら見せてもらえませんか?」

「いいですよ」

 オレはクルマの免許証を出して店長さんに渡した。

「入り口の"門番"の方はご家族ですか?」

「…ええ、父です」

「先生、検査させてもらいますか?」

「頼んでみてくれ」

「失礼ながら、今の私、開け広げに言えば、自我と会話能力を保っている"発症者"に興味をお持ちなのでは?」

「ええ、そうです。うちの父のように自我を持っている恐竜は少なくないのですが、あなたのように言葉を話せる方は初めてです。どうやって話せるようになったのですか?」

「私たちは、アメリカ海兵隊の災害救助部隊の者なのです。私は日本人ですが、こちらのドクター、ジョンソン少佐のアシストをしている山本と申します。

 私は恐竜になった時でも以前と同じ状態でした。そして同僚には、始めは恐竜語しか話せなかったものの、会話能力が回復した者もおります。

 目下、先生が原因も含めて調査中なのです。

 そこで折り入っての相談なのですが、調査にご協力頂けないでしょうか?」

「協力、ですか?父を連れて行かれたりしませんか?」

「それは断言します。

 "しません"。

 本人が保護を希望するなら別ですが。この場合もあくまで人間として接しますし、可能な限り、人道的な対応をしております。

 私たちの目的は、少しでも早く発症者たちの治療法を見つけ、早期回復への筋道を付けることなのです。

 どうか、お願いします」オレは深くアタマを下げる。

「…父と話して来ます。少々お待ち下さい」

「あの、重ねて失礼とは思いますが、私たちも、いえ、私だけでも同席させて頂けないでしょうか?」

「…そうですね。その方がいいでしょう」店長さんは奥さんらしき女性にレジを代わってもらい、カウンターを出る。

 オレは払いを済ませて、店長さんと外に出た。先生とポールは、他の客と一緒にウィンドー越しにこちらの様子を窺っている。


 ン?


「父さん、こちら、アメリカ海兵隊の災害救助チームの方だそうです」


 ン


「はじめまして。山本と申します」


 ン~


「父さんに相談があるそうなんで話を聞いてあげてもらえないかな?」


 ン~?


「この恐竜化症の治療方法を探しているそうで、調査に協力して欲しいと」


 ン…


「別に連れて行ったりしないって言ってましたよ」


 ン~…


 アンキーのご隠居はオレをジッと見つめる。

「話だけでも聞いてもらえませんか?私は日本人ですが、縁があってアメリカさんの現地アシスタントをしているのです」


 ンー


「あの駐車場の戦果、スゴいですね。それに金沢や沖縄の酒を商っている店のご隠居を遠出させる気なんてありません。繊細な風味が持ち味の酒を守りたいし、出来れば酒が分からない方に購入を遠慮していただくよう目を光らせているんですよね」


 ン!?


「いや、若造が出過ぎた事を」

 オレはうずくまり、ご隠居さんの顔に目線を合わせる。まあ出来ればアグラにしたいんだけど、デイノニクスはしゃがむことしか出来ないんでね。

「元の人間の姿に戻りたがっている方は世界中に大勢います。そのため、私たちは恐竜化シンドロームの原因を調べています。

 プロジェクトのリーダーは、そこのウィンドウに立っているにこやかな人で、軍の医師、そして私のボスです。

 ここまではご理解いただけましたか?」


 ん


「その研究のために一人でも多くの恐竜化症の患者さんのデータを集めているのです」


 ん


「そこでご隠居にお願いしたいのが、血液検査と、DNA検査なのです。そして、個人識別のためのID登録です。また出来たら身長と体重も測らせてもらいたいのです」


 ンン?


「すぐに済みます。血液採取の間、ご家族に付き添っていただいて結構です。

 それ以上のことはしません。

 いかがでしょうか?」


 ン~…


「あ、言い忘れましたが、あの積み重なっている"戦果"ですが、よろしければ引き取らせていただきますよ?」タマにモゾモゾ動く恐竜の山を指さしながら持ち掛ける。


 フフ…、ン!


「いいんですか?ありがとうございます!」


 ン!


「先生、OKですって!」

 先生はほくそ笑みながらうなずいた。

 あれ?そう言えば、一休みするためにコンビニに入ったんだよな…。また藤沢先生の治療が遅れちまう。


 先生は長谷川店長立ち合いの元、ご隠居の採血。採血器が通る皮膚が薄い所をあちこち探して苦労されている。

 オレはポールとご隠居の体長をメジャーで測る。

 体重計はあいにくハムヴィー1号車にしか積んでないので省略。

 ご隠居の体長は8.72mあった。


 ポールはご隠居のID登録を始め、手持ちぶさたになったオレは、少し離れて、アンキロサウルスを観察することにする。

 見える範囲の外見からは、アンキーの骨格は、真下に脚が生えているようだ。

ちなみにカメはほぼ真横、ワニだと斜め下。

真下に向くにしたがって、陸上で体捌きのレスポンスが高くなる。

つまり、アンキーは見かけよりも動きが素早いことが分かる。

おそらく、体重を効率的に支えるためと、テール・ハンマーを自在に使いこなすため、選択進化したんだろうな。

 そして、テール・ハンマーと並ぶ特徴。ホホとコメカミの計2対のスパイクに始まり、背中を覆う無数のタイル状の装甲突起。

これは日本でも戦国時代に使われていた動甲冑に使われていたアーキテクチャで、樹脂を染み込ませて硬化させた小さい木の板を無数に装着した仕様と通じる。

このタイプの利点は、装甲性能と放熱効果と軽量化を高度にバランスよく引き上げている所にある。半面、装甲面に隙間が多いため、槍や矢など刺突攻撃に弱い。

とはいえ、中生代に背中上面から打ち込めるスパイクを持った種はいなかったので、十二分な機能を果たしていた。

そうしてみると、案外とアンキロサウルスは、打ってよし受けてよし走ってよしの、意外と攻守に長けた種だったんだな。


「ご隠居さん」


 ン?


「背中の鎧を見せてもらっていいでしょうか?」


 ン


 OKをもらえたので、オレはアンキーの背中に並ぶ装甲突起の組成を調べることにした。

 はやり、皮下から伸びる、爪と同じケラチンベースの突起だが、面白いのが、よく見ると亀の甲羅のように年輪状の模様がついている。

つまり、ある程度すり減りながらも皮下から成長を続けるドーム状の外板は、その下層の皮下脂肪で効果的にインパクトを減衰してゆく構造になっている。天然の積層装甲であり、チョバム・アーマー並みのハイテク設計だった。

 そして、何よりよく出来ているのがその曲面系。

 ヤブの中でも引っかからず、そして音も立ちづらいよう、突起の頂は若干頭の方に寄っている。

 併せて、脚もゾウに似た構成になっていて、足音が立ちづらくなっている。


 すげぇな。

 今までアンキロサウルスのことは、ドン臭い鎧竜程度にしか思っていなかったけれど、生きてるステルス戦車とは恐れ入った。

 こりゃ白亜紀のフェルディナンド(WW2時代旧ドイツ軍の重駆逐戦車)だね。

 後で調べてみたら、アンキロサウルスはジュラ紀頃から白亜紀末まで永く種が続いていたというレポートも見受けられた。オレとしてはむしろ当然だと思う。


 まあ、それはそれだ。


 これで、ご隠居の体重も目算が付いた。

 多分5~6tの当たりだろう。見た目より軽いはずだ。


 オレはメドがついたので、ご隠居の戦果たちに尋問してみることにする。


「おい、オレの言葉が分かるか?」積み重なった恐竜の山から、気を失っていないヤツを引きずり出し、注意して日本語で話しかけた。

 相手は個々の種族ネイティブ語で『痛ぇ~』とか『チクショ~』とか、まるで噛み合わない受け答えを返してくるだけだった。

 多分、全員自我なしだろうな。

 ネイティブに切り替えて話を聞いてみると、やはり全員、ご隠居や店内の人間たちを襲おうとして、ご隠居に返り討ちにされたようだ。

 ヒャッハーやらかしたツケだな。

 死んでいる奴は、おそらくご隠居のハンマーを喰らったと思われる部位が粉砕骨折を起こし、グニャグニャになっている。

 運良く、本当に運よく生きているヤツは、ハンマーがかすったか体重が軽かったせいでダメージは脱臼がほとんどだった。


 などとお気楽に個竜的な趣味で検証している所へ、20m級の大型サウロポーダ(竜脚類)が現れる。

 相手はオレ(デイノニクス)を見るなり、シッポを横なぎにしてきた。

 攻撃の次手はなさそうなので、オレは上に跳んで避ける。

「タンマ、オレの声が分かるなら、攻撃するな!」

 その瞬間、ドン!という音と共に下から何かを食らい、オレはバランスを崩してコケた。なんだコイツ、サイコキネシスでも使うのか?それともソニックブームでも食らったのか?

 例によって相手の種類は詳しくないので分からん。一応、ブロントサウルス(雷竜)っぽかった。

 それに、聞く耳もたずで、オレを踏みつぶそうと後足で立ち上がり、前脚を揃えて振り下ろして来る。

 オレはわざと相手の足の真下、ブロントの死角に入り、そこから脇腹の方へ抜け出た。


 ゴズッ!


 ブロントの一撃は地響きを立てて、店の前のアスファルトを30センチほど陥没させた。


「フゴォ~~~!!(おい、ウチの客をシッポではたくとはどういう了見だ!!)」

 見ると、ご隠居が身を起こした所だった。

 それまで、言語差異無効化の謎スキルでしか話をしなかったご隠居が、盛大に吠えた。


「フボオオオオオオオオオオ~~~!!!(肉喰いのクズどもは皆殺しだ~~~!!)」

 ブロントはエール交換のつもりか、耳が割れんばかりの咆哮を挙げた。そういや和名でカミナリ竜とか言われていたっけな。


「ゴォッ!フォ~~~~!!(大声出すな近所迷惑だ!客じゃないなら帰れ!!)」

「オォォォォォ~~~!!(クビ突っ込んでくんな!!)」

「フンッ(そうか)」

 ご隠居はブロントに正対した。

 いくら頑丈なアンキーでも、さっきのブロントの両前脚の踏み付けを喰らったらただじゃすまない。

 それに、ご隠居のハンマーは4m程度のリーチしかない。どうやったって相打ちでブロントの後ろ脚をとることくらいしかできないぞ!

 先生もポールも検査作業中だったこともあり、ライフルはハムヴィーの中に置いて来たらしく、ハンドガンしかない。


 この巨体をすぐに沈めるにはアタマを落とすしかなさそうだ。

 オレは加速モードでブロントの頭へ駆け上ろうとした。


 だが、ご隠居は無造作に一歩踏み込むと、前肢を軸に、体ごとテール・ハンマーを下から上へ振り上げる。体全体のバネを使って加速させたハンマーは音速を超えたのか、ソニックブームらしい衝撃波を引き連れ、相手の肩口を抜き切った。

 リーチがいきなり倍になった上、この距離でマッハで飛んで来るハンマーを避ける術は、ブロントにはない。

 肉と骨が砕ける鈍い音がし、ご隠居はそのままくるりと身を一回転させると、元の立ち位置に戻る。

 ブロントは、そのまま声もなく駐車場に倒れた。


 ンッ


「いいぞ、チャンプ!」

「ハセガワ~~!!ナイスキック!」

 店の中からも外からも拍手喝采が上がる。


「キックボクサー、だったんですか」カウンターの片隅に飾られた写真が思い浮かぶ。あれ、若かりし頃のご隠居だったようだ。


 ン


「ありがとうございました」

「フルル(ケガしなかったか)」

 ご隠居は、鼻先をオレに擦り付ける。返礼にオレも頬ずりを返した。

「膝の靭帯を傷めてしまいましてね、引退したんですよ、父は。お怪我はありませんか?」店長さんがやってきて、陥没したアスファルトに苦笑いしながら教えてくれる。

 昔、流行ったもんな、キックボクシング。毎週テレビで中継をやっていたっけ。

 ご隠居さんは、あの時代を生きた地元ヒーローなのか。

「見事な…キックでした」あの一撃は、ご隠居が全盛期に鍛え上げたキックの延長だったんだ。プロのショットシーンを真正面で観戦できたオレは、いまだ感動の波が収まらない。

 "ウチのオヤジ、すごいだろ?"店長の笑顔はそう語っていた。


 オレたちは、ご隠居がKOしたブロントを拘束した後、ハムヴィーで押して駐車場に寄せる。そして、そこらから適当に土を運び陥没穴を埋めた。


 ご隠居は気分よさそうに店の前にうずくまり、静かにまどろんでいる。

 オレたちは、ハムヴィー2号でようやく一息入れることができた。

 ケビン(ローイン大尉)が用意してくれたコンビーフハッシュもご隠居の店で買った栗羊羹も旨かった。


ポール  :あ、これならネタ分かる。

ジョンソン:うむ。我々、海兵隊の歴史物語でもあるからな。

トウヤ  :後編の方はタマゲた。アメリカがあんな熱く日本を描けるなんて。イーストウッドすげぇ。

ジョンソン:この作品を鑑賞する時は、前編後編イッキ観することを強くお薦めしますぞ。


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