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004:なんかなごんでるけど

ティラノは人間5人とデイノニクス1頭で動かすことができるのか?

エンジニアと兵士が人類創世以来の謎に挑みます。



 004:なんかなごんでるけど


「グアァァァァ~~~~!!!」

「フグォ~~~~~!!!」


 ターク隊長以下『騎兵隊』改め『海兵隊』たちに手伝ってもらって、オレのクルマの上でくたばっているティラノをどけようとしてみた。

自前のチェーンブロック(小型の手動クレーン)やら台車やらバールやらフル投入したがダメだ。(なんでそんなモノ持ってるのかは、まあ、そのうち)

 オレは県の南の方にある水族館で、前にシャチのショーを見たことがあるんだが、その時のシャチさんの体重が5tほどだそうな。で、そのシャチのシッポを2倍くらいに伸ばして脚がくっつくとほぼティラノの体格になる。

詰まる所、人間やデイノニクス程度の力で動かすにはムリな体重だった。


 付き合いの長いホット・ハッチ。気に入ってたのに、ルーフ周りのフレームがひしゃげてしまっている。かわいそうだが廃車にするしかなさそうだ。

 不幸中の幸いか、クルマの脇に置いてあるバイクの方は無傷だった。まあ、バイクに手を出してないんだ。ティラノめ、殺すだけで勘弁しといてやる。


 アメリカ海兵隊の猛者共々、ティラノサウルスの移動検証(ムダな努力とも言う)にくたびれ果て、再び冷えたアイスコーヒーで一息入れていると、最後に握手をして来た隊員のポールがバイクを見せてくれと言う。

 カバーを取り払い、くたばっているティラノから離れた所にバイクを出した。

 国産の750ccオフローダー。

 数年前から乗り始めている。

 ポールは目を輝かせながら、自分は1000ccのロードスポーツに乗っていて、よく箱根や伊豆の方へ行くと言った。

 この体になってから、初めてまたがってみた。クルマに乗るのは実質ムリだったが、バイクの方は大丈夫だ。指が太くなってしまった分スイッチ類のコントロールが少し覚束ないが、それ以外は大丈夫なようだ。

「山本さん…おお!?」丸顔の老人が、恐る恐る顔を覗かせ、オレの顔をまじまじと見つめる。隣の中川さんの御主人だ。

 オレが軽く会釈すると中川さんは表情を緩めた。

「山本さんかい…?」中川さんは、オレがバイクを手入れしているトコにちょくちょくお茶を持って来てくれる。オレはといえば、たまにツーリングの土産を持って行ったりと、イロイロと交流がある。つまるところ仲が好いのだ。

「中川さん。いきなりパーティー始めてすみません」

「銃声がしたが…こりゃ…また…」中川さんは玄関から出てくると、ウチのカーポートの惨状にしばし絶句した。そしてはっと何かに気付き、家の中にとって返した。

 ちなみにオレが住んでる地域では、猟友会の皆さんが畑を荒らすタヌキやハクビシンを定期的に駆除するので、地元の方々は割とショットガンやライフルの音は聞き慣れている。

「隊長さん」オレは一応確認を入れる。

「何だね?」

「写真撮影は構いませんよね?」

 そう訊いた所へ、中川さんが愛用の一眼デジカメをひっつかんで意気揚々と戻って来た。

「かまわん。これは言わば災害だからな。今時、写メやデジカメ程度で目くじら立てていては、兵員が圧倒的に足らん。それに、これは国家機密や軍事機密というレベルをとうの昔に超えている」ターク隊長は、やれやれといった面持ちで肩をすくめた。

 中川さんはノリノリでティラノとスクラップにされたオレのクルマを撮りまくり、その内ジョージやダンの記念撮影まで始めた。

「ヘイ!キャップ!トーヤ!トゥギャザ・イン!(隊長!登也!一緒に入れよ!)」ジョージが能天気に手を振る。

「オライ!ヒア!(オーライ!すぐ行く!)さぁ、私たちも混ざろう。タッグの初戦果だ」

 そうか。今まで自覚なかったけど、人類史上初めてティラノを倒したんだ。

これは撮ってもらわないとな!

 オレも隊長の後に続く。

 例によって場所取りでどうのこうのが始まりそうだったが、隊長がスパっと決めてしまった。

中央にオレと隊長が並び、オレの脇にジョージ。そして、後列はポール、ダン、ジェシー。

こういう統制がキチンとしてるトコ、さすが訓練された軍人なんだな、と感心する。ちょっと職場のエンジニアの群れと比べてしまう。

「では撮りますよ。みなさんいいですか?メーク・スマイル」


 その後は、各々オレやティラノとのツーショットを撮ってもらい、その後、中川さんはオレの事を撮りまくった。

 そんな時だった。

「下がれ二人とも!!」ターク隊長の切羽詰った声が響いた。「ディナソー・アタック!!ディフェンス・フォーメッション!!(恐竜の襲撃だ!!防御隊形取れ!!)」

 オレの視界の端にそいつが突撃して来るのが見えた。

 オレと同じ種族。デイノニクスは高々とジャンプすると両脚を揃え、脚鎌爪を中川さんに向けて飛びかかって来た。


これでまた一つ理学的検証が成されました。

ティラノもアフリカゾウと同じで、どかすにはクレーンが必要です。

それもデカいヤツが必要です。


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