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恐竜日和 ウォーク・アバウト  作者: ニジヘビ
ミリタリーお茶会編
38/138

038:江戸川の砂

今回はトウヤがダン中尉とラジコン飛行機を飛ばします。



 038:江戸川の砂


 ガガガガガガガガ…


 案外翼竜は多い。これで6件目だ。

 江戸川までの空路で何度も翼竜(中には群れで来たケースもあるのでトータルで15~6羽ほど)に近寄られ、その度に相手がただの翼竜になった者なのか、言葉が話せないだけで人間としての自我を保っているのか、確認のやり取りが繰り返され、結局マシンガンの曳光弾シャワーで追い払うことが繰り返される。


 相手は恐竜(および中生代の大型爬虫類。以下、恐竜)とは言え、人間の成れの果てであるため、更正の余地がある。

そのため、オレの提案で、基本的に保護または捕獲するべしと言う事になった。

ただし、相手が襲ってきた場合はその限りではない。


 ヘリから見下ろす地上は、ひどい有り様だった。

街はあちこちが破壊され、テロでも起きたような有様だった。

 時折恐竜の姿が見え、あちこちに人間と恐竜の野ざらしも目に止まる。


 オレは、今の姿になった時から以前と同じ意識を保っていたため、むしろ、自我なしの恐竜の方が違和感を覚える。

 それとも、実は彼らは自我はあるけれどタガが外れた状態で、憂さ晴らしに人間を襲っているのかね?

 もしそうだとしたら?

 適当に襲って、適当に食って、適当にクソ垂れて、適当に寝る。

 さぞかし生きるのがラクに違いない。

 代わりに、明日に希望もなく、荒れたその日暮らしが死ぬまで続くだけだ。

 彼らは、本気でそんな生き方を選ぶつもりなのか?


 恐竜化シンドローム発症者への接し方を考えている内に、地形に見覚えのある地域にやってきた。


 えーと、あれ京成線かな?


 江戸川にかかる鉄橋脇の野球場に、シーナイトはチャッチャッとハムヴィーとオレたちを下ろし、そそくさと離陸して飛び去った。

「地上待機中に大型恐竜に襲撃されてな、ウチと陸自もヘリを損失しておるのだ」ジョンソン先生(少佐)が苦々し気に教えてくれた。

「今回は装備が潤沢だが、気を引き締めて行け。何より医療機器に損害を出すな。

 保護した発症者は、少数な…イヤ、人間数名程度の集まりなら同乗させる。オーバーしたら、最寄りの自衛隊施設まで誘導。襲われない限りこちらからの攻撃は厳禁だ。

 また、これは私からの願いだが、可能な限り殺すな」

 ハムヴィーの中は実際凄かった。多分、体重計と思われる医療機器から、ター坊の食料にブタのホールまで積まれ、なんだか生協のトラックみたいだ。


 ブリーフィングが終わると、ダン中尉は円筒形のケースを取り出し、何やら大きいプラモみたいなものを組み立てはじめた。

 それは小型のUAV(無人偵察機)だった。

 最近のUAVというとミサイルまで搭載した小型飛行機並みのデカさになっているけれど、コレはほぼ原型に近いモデルの発展型。

ラジコン飛行機に無線送信のカメラが搭載されているだけだ。

「目的地までの状況を確認するために飛ばすのです。やはり気になりますか?」ダン中尉はオレのガン見に気付いたのか、チラとオレに目を向けた後、タブレット型UAVターミナルの無線レシーバーの初期化を始める。

 ダン中尉はあまり話さない。しかしコミュニケーションはちゃんと取れる。言葉遣いが丁寧なので、エンジニアによくいる物静かなタイプなんだろうな。

「オモチャなら何度も見たことありますが、MILスペック(軍用規格)は初めて見ました。

 これで何時間くらい飛んでいられるんですか?」

「1時間弱になります。高画像モードの場合や風が強い時はもっとみじかくなりますよ。

 さて、ちょっとこれを持っていてもらえますか?」中尉はオレにUAVターミナルを手渡して来た。

 受け取ったターミナルにはすでにUAVから送られてくるカメラ映像が映し出されていた。

「思いの外、映りが鮮明ですね」オレは素直に感想を言った。

「ええ。偵察とは言え、実際には潜んでいるゲリラやスナイパーを探し出す用途が多いのです。

 その上の方にある"TG"のボタンをタップしてもらえますか?」

 おっと、デイノニクスの苦手な指先仕事だ。オレは人差し指を曲げ、指の甲で画面をタップする。

 TG?サーモグラフの略かな?

 やはり画面は赤、黄、緑、青、紺のサーモグラフ(熱分布表示モード。軍用の場合、熱線暗視装置と言う)表示になった。

 画面になんだか見覚えのあるシルエットが映ったので、ダン中尉を見てみると、中尉はしたり顔でUAV機首のカメラをオレに向けていた。

 サーモグラフ化されたオレは、口元と目の温度が黄色く表示され、それ以外の部位はほぼ青から紺で表示されている。何だか夢に出たらうなされそうな感じだ。


「では飛ばしますから、表示モードを元に戻して、スロットルをフルオープンにしてもらえますか?」

「クリアー!プロップ!」ダン中尉に言われ、表示をノーマルに戻すと、画面左のスロットルらしきスライド・バーを目一杯上まで上げた。

 静かに風を巻いてプロペラが回り出す。

「バッテリー・チェック」

「チェック、13V」画面内にある下に"V"の単位表示のあるインジケーターを読み上げる。

「スロットル・カット」

「スロットル・カット」

「エルロン・チェック」

「チェック、エルロンモビン」オレはジョイスティックを左右一杯に動かして主翼の操舵を確認する。

「エレベーター・チェック」

「チェック、エレベーターモビン」次に尾翼の昇降舵を。

「ラダー・チェック」

「チェック、ラダーモビン」最後に尾翼の方向舵を確認。

「バッテリー・チェック」バッテリーの最終チェックだ。

「チェック、13V」

「スロットル・フルオープン」

「スロットル・フルオープン」

「クリア。ラウンチ!」バッテリーを最後にもう一度確認すると、ダン中尉はUAVを空に放った。

「ユーハブ」オレはターミナルをロックするとダン中尉に返した。

「アイハブ」

 ダン中尉はセミオートで飛んでいるUAVのコントロールを取り戻すと慣れた手付きで哨戒偵察を開始する。

 ディスプレイにはUAVから送られてくる映像と位置確認の地図が表示されている。

「これから進むコースコンディションを見ているのですよ」

「あ、そうか。そういう使い方が本来の目的なんだな。

 オレ、この辺にはラーメン食いに来ることあるんで、土地勘ありますよ」

「美味しいお店ですか?」

「出来たらお昼に食べに行きたいですね。スープが絶品ですよ」

 時折雑談を交えながら、リモさんとター坊が避難しているオフィス兼倉庫までの道路状況を確認して行く。

 目的地まで8キロほどあるが、衛星リンクしているUAVはそつなく飛んで行く。

 UAV越しに見える地上には、そこかしこに大型の恐竜が目に止まる。

 ガタイが家くらいあるのや、やたらトゲトゲしたのや、ティラノらしき発症者もいた。

 空から目にとまるサイズだけでも結構な数がいるんだ。小型の恐竜は、もっといる可能性が高いな。

 気掛かりなのはデカいトゲトゲだ。

 コースの近くにいるので、ハムヴィーのエンジン音を聞き付けて攻撃してくる可能性がある。

 しかし、丁度道が狭い区域なので迂回も出来ない。


 この手前で戦闘準備をしておく必要がありそうだと、ダン中尉と意見が一致する。近くにコンビニがあるので、そこの駐車場を借りることにする。


 オレはブラックベリーでリモさんに連絡を入れる。


「こんにちわ、リモさん。今、江戸川の河川敷まで来てるんです」

「ああ、トウヤさん。お待ちしていますよ。恐竜たちに気を付けていらして下さいね」

「今、無人偵察機をそちらのオフィスの辺りにやっているのですが、確認できそうでしたら、確認してもらえませんか?」

『いいわ。ねえ、ター坊、ちょっと空を見てもらえる。トウヤさんのラジコン飛行機が見えない?』

『ラジコン?偵察機ね!見てくるよ』


 リモさんって実にウィットに富んでいらっしゃる。ター坊共々、会うのが待ち遠しいな。


 程なくUAVのターミナルに、目星を付けていた大きめの平屋から大型のセロポーダ(獣脚類。主に二足歩行する恐竜)が現れ、空を見上げる姿が映る。

電話の向こうから『見えたよ。多分アレだと思う』とター坊の声がし、ター坊が家の中を振り返る姿がターミナルからも確認できた。

「ああ、今ター坊が家の中を振り返ったの見えましたよ。早ければ30分位でお伺いします」

『はい、お待ちしていますわよ』

『トウヤさん、ヤバそうだったら呼んで下さいよ!迎えに行きますから!』

「ありがとう。その時は頼むよ。じゃあ、後で」

 ダン中尉は、UAVを帰投させた。


 そして、当然と言えば当然だが、UAVは帰投途中に翼竜に襲われ、不運にも損失してしまった。


ダン :……………orz

トウヤ:あの、さ。帰ったら、ファームにAI組み込んで自動回避できるようにしたげるから、そんな落ち込まないで…

ダン :(;_;)一緒にミサイルもつけてもらえませんか?


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