036:銃を磨いてダべりましょ(レビュー済版)
数寄者デイノニクスが借りているハンドガンのウンチクを聞きに出かけます。
しかし、ジョンソン先生のNGコメントでバッサリとカットという憂き目に…。
036:銃を磨いてダべりましょ(レビュー済版)
M.E.U.ピストル、軍からオレに貸し出された拳銃のことを教えてもらいに、相方のポールと一緒にジェシーの部屋に行く。手土産にPXで、人間用にポテチとよく冷えたビールを、オレたち用にオレンジジュースを買って行く。
こういう時、オレたち発症者はチト寂しいね。ほんの一昨日まで好き勝手に食べられたものが、今は自分の命を縮めかねないなんてな。
「いらっしゃい、ミハルも来てるわよ」
「こんばんわ、トウヤさん、ポールさん」ミハルはベッドの上で臥せてリラックスしている。オレたちデイノニクスにとっては、人間用のイスに座るのは大変なんでね。ジェシーはミハルにOKしてあげたようだ。
細身で淡色系の羽色の彼女は、パッと見、アフガンハウンドかサルーキが香箱組んでいるように見える。
ジェシーは、手入れをしていたライフルを取るとガンロッカーにしまう。ウォルナット材のストックがデスクライトの明かりに美しい。
本来、銃は保管所に預かってもらうんだが、今は恐竜化シンドローム起因による恐竜の襲撃が相次いでいる有事下。各自管理することになっている。
オレはマガジン(弾倉)をカラにした状態でM.E.U.を持って来た。
「ちょっと貸して」
ジェシーに言われて、銃をホルスターから出して渡すと、ジェシーは数秒でバラバラにしてしまった。
そして、バレル(銃身)に音叉をあてたり、スプリングの長さをノギスで確認すると、すぐに組み立ててしまった。
…1分かかってないんスけど。
「トウヤって、銃の連射間隔が短いみたいだから気を付けて。
バレル(銃身)は冷ましながら使わないと、摩耗が早くなるから。
でも、手入れはちゃんと出来てる」動物と恐竜のお医者さんで、テッポウのお医者さんとは恐れ入りました。
「えーと、訓練の時のことなんだけど…」
「ええ、M.E.U.の歴史と文化ね」
ジェシーはそう言い置くと、流れるようにツラツラ話し始めた。
うんうん…えーと。ジェシーの話はウンチクも含めて面白いものなんだけど、聞いている内にちょっと内容がマズい気がしてきた。
案の定、後でこのシーンをジョンソン先生(少佐)にレビューしてもらったら、"コリャ物言いがつきかねんなぁ"とかつぶやかれた後、"この106行ほど削除するかリライトしてくれ"とNGコメントが付いた。
ヤッパそうだよな?
素の内容だと、日本ではPTAと警察にイビられ、アメリカだと共和党と全米ライフル協会が真っ二つになってケンカ始めそうだ。
だもんでチト端折ることにする。
ジェシーは.45ACP弾の開発創始と要求仕様を裏話コミで話してくれ、アメリカの決闘の歴史と、保安官制度の重要性を語った。
それは開拓時代から始まる凄惨な自衛と闘争の歴史であり、殺し合いへのタブーが絡んだ複雑な感情のせめぎ合いだった。
その歴史の末に、最後ののっぴきならない事態を収束させるための道具として、M.E.U.ピストルが誕生するいきさつへと進んだ。
アメリカの銃社会が奥深いのは知っていたけど、やっぱりその中で生きて来た人の話はそんな知識をあっさり拭いさるほどの生々しさがある。
それに、ジェシーは鉄砲オタクなどではなく、銃という道具で仕事をしているプロであり、ケンカと戦争の線引をきちんと引いている、立派な戦士なのだと分かった。
なにより、シリアスありユーモアありで、聞いていて心に残る話ができる、ウィットに富んだ人物だ。
ポールも時折ウンウンとうなずいていた。
そして、ジェシーの話は、ガバメントのメカニズムとその変遷に入り、トドメに最新型への歯に衣着せぬディスに移った。
「…だもんで、古いガバメントを直して使ってるワケ。新造パーツにいろいろ交換してね。
バレルにスライドにスプリングにハンマーにシアーにトリガーにサイトにグリップにフレームに…」
「あの、わたし、拳銃には詳しくないですけど、つまりゼンブ交換してるワケなんですよね?」ミハルは困惑している。
一方、ミハルの言葉に、ポールは腹を抱えて笑い出した。
「ヒー、ヒー、あー、ハハ、つまりそういうこと。チューンナップパーツに組み換えてるウチに、別のクルマをもう1台作ったってことだな。
オレたちのチームと同じだ」
「オレたちのチームって、…どういうことだ?」なんか、ヤな予感がする。
「少佐から聞いてないか?
オレたちは顔見知りだけど、みんな休暇中でたまたま日本に来てただけだ。そこを、昨日の朝に緊急召集されて編成されたM.E.U.(海兵隊遠征部隊)の新生チームなんだよ。所属は横須賀だったけど、拠点はお前たちを編入したタイミングでココ横田基地になった。
で、オレは休暇で、日本にラーメン食べに来てた」
「わたしも休暇で日本のゴールデンウィークに遊びに来てたのよ。
ターク隊長は離婚直後で心の整理のために、長期休暇で観光を兼ねて禅寺に行っていた所。サブ・チーフは付き添い。
ダン中尉もアキバだかのフリーマーケットにパーツ漁りに来ていたって言ってたわ」
オレはミハルと顔を見合わせる。
「マジですか?(×2)」
「シリアスよ」ジェシーは真顔で答えた。
「だ…、だって、今朝の作戦行動も昼間の訓練も、あれだけ連携うまくいってて、それで新生チームなんて、ウソだろ?」
「みんなあちっこっちでバラバラだけど一緒に少佐と仕事したことがある。それもなぜか激戦区から生還してきた。
オレは前にアフリカでジェシーと一緒だった」
「日本風に言えば、"縁があった"ってコトよ」
「海兵隊って、そんなにホイホイ編成変わるモンなの?
「基本、固定ね。けど、M.E.U.に関して言えば、有事の際にはその限りじゃないわ」
「って言うと?」
「まあ、バラしちゃうとM.E.U.は各部隊が割と独立独歩でね、自分たちが生き残るためなら何でもやるのよ。
戦いながら自前で物資とゴハンを調達するの。で、兵員が足りなければ、場合によっては他所から引っ張ってくる。
ジョンソン少佐は野戦病院のヌシさまだからね、そういうのムチャ強いのよ」
オレとミハルは再び顔を見合わせる。
ヌシ様っすか。それじゃ日本の神様も一目置くわな。
…いろんなイミで恐ろしいチームだ。
そのあとオレは、ジェシーの狙撃職人としての逸話と、ポールのコンバット・サバイバルの逸話を聞かせてもらった。
けれど、これもジョンソン先生からNGコメントもらっちゃったんで公表できない。
公開できないけれど、二人の名誉のためにこれだけは言わせてもらう。
オレは、この二人と仕事が出来る事を誇りに思うし、見捨てるようなことを決してしないぞ。
そして、その公表NGエピソードの流れでオレたちドロマエオサウルス科の恐竜の一般名の話題になった。
「そう言えば、トウヤたちの呼び名を"ラプトル"と言うじゃないか。これ、オレの国の言葉で"誘拐犯"なんだ。
バディを誘拐犯と言われるの、不愉快だ」
「ええ!?ヒドい!」元警察官のミハルも、冠羽を逆立てて不満を露わにする。
「プエルトリコって何語を話すの?」
「スペイン語よ。言われてみればそうだった」
「オレはラテン語か何かで"略奪者"って意味だと何かで読んだな。最近じゃ戦闘機でこの名前がついてるのがあるけれど、さすがにその名前で呼ばれたくはないな」語呂や音はいいんだが、イミ最悪。
「"ゆうかいはんのへんたいひこう"とか、日本語に直訳するとかなりイカレた感じね。自衛隊が正式採用しなかったのもひょっとして名前がマズかったせいなのかな?」
「あれ?アメリカが売るの渋ってライトニングⅡになったんじゃなかったっけ?
もっともどのみち日本の周りは海だからね。
航続距離低下した上に対艦と対潜攻撃能力ないんじゃ、日本だと使い所ないよ。
ドグファイト能力だけ最新鋭じゃな。
日本だとE-767(AWACS:早期警戒管制機)と対空爆装イーグルと対艦爆装ファントムあれば間に合うんだ」
「あ、なるほど」
「そう。
却ってファントムⅡとかサンダーボルトⅡに新素材使って高耐久化なりメンテナンスコスト下がるようにすればよかったんだ。それなら多分、即買いだったろうね」
「サンダーボルトには中東で何回か助けられた。
あれ、もっと増やしてもらいたい。
ヤツの金切り声が聴こえるとホッとする。
デイノニクスの威嚇の唸り声と音が似てるんだ、サンダーボルトのエンジン」
「ギャリギャリギャリギャリ?」そう言えば昼の訓練の時に使ったっけ。ダン中尉がすくみ上がったの、コレのせいだったのか?
「気を悪くしないで欲しいけど、ジャングルでその声出されたら、私でも逃げたくなるわ」
オレはミハルと顔を見合わせる。
「キュク(ヒトには使わないようにした方がいいな)」
「クォ(敵は別ですけど)」
「デイノニクス語で何話してるの~?」
「ん?みんな大好きってね。
そろそろお開きにしませんか?明日は恐竜だらけの街をジョンソン先生を護衛していく大仕事なんですし」
ミハルに言われてみると、時計は21時を廻っていた。
もう少し、このトロんとした時間を過ごしていたいけれど、ジェシーの「また、銃を磨いてダベりましょ」の一言で、またな、ということになった。
ノリノリで書いた後、自分でもこりゃマズいと気がついたのは後の祭り…。
都合3話ほど自主カットっす。




