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恐竜日和 ウォーク・アバウト  作者: ニジヘビ
トリケラトプス編
33/138

033:仮想敵というと

副長のジョージが恐竜になってしまいます。

しかたなくみんなで捕獲することになってしまいました。



 033:仮想敵というと


 デイノニクス、というかオレが強過ぎて戦闘訓練にならない。かと言って相当に手を抜かないと人間側は星を取れそうにない。

その問題もさることながら、そもそも今日の訓練メニューは恐竜症発症者を仕留めるための内容になっていて、どこからどう見ても確保、つまり生け捕りを目的にしたものになっていなかった。


「ターク隊長」

「何だ?」

「オレたちは恐竜(恐竜化症発症者)を捕り押さえるのが任務なんですよね?」

「そうだが」

「この訓練内容だと相手を仕留める事が勝利条件なので、マズいですよ。

 ビル・フィールズのケガのことを思い出して下さい。

 オレたち恐竜は、ケガをしても外科治療だけで輸血出来ないんですよ?

 これじゃ下手したら失血死させてしまいます。

 訓練の内容を組み直しましょうよ」

「うむ。それはそうなんだが…。哨戒小隊ロードランナーの装備じゃ恐竜を生け捕りにするのは難しい。さっきのキミとの一戦で分かると思うが、まるで勝負にならない。こちらが応戦するだけでも手一杯だった。

 保護説得に失敗した場合、相手が逃げ出すならいいが、襲って来られたら、こちらも即座に本気でかからないと命取りになる。それを実感してもらうためのメニューだったのだよ。

 そして、ここまでは想定通りだ」

「と言われますと?」

「今までの訓練は、チーム内の連携を向上させるもの、狩猟恐竜の恐ろしさを身を持って経験するもの、それが目的だ。

 ここからは、発症者たちの説得確保のメニューになる」

「それを聞いて安心しました。

 訓練内容ですがよければ教えてもらえますか?」

「1つは、自我はあるがコミュニケーションが取れなくなっている相手の説得交渉。もう一つは、相手が自我を失っていてこちらに襲いかかって来た場合の応戦だ」

「恐竜役は?」

「ミハル…はさすがにもう恐竜役をやらせられんな…。昨日の一件の上に今日も散々な目にあっている」ターク隊長のそういう所好きだな。

「もっとデイノニクスがいればいいのに」副長のジョージ(レナード大尉)がぼやく。

「物騒な事を言うな」

「じゃあ恐竜のカッコさせた人間を仮想敵アグレッサーにして、無傷で捕獲したらどうです?動物園の脱走訓練でよくやるアレですよ」オレは思い付きを口にした。

「脱走訓練!?」

「檻から脱走した大型の動物を生け捕りにする訓練のコトよね、トウヤ」動物好きのジェシーが合いの手を入れてくれた。

「そうです。やっぱりジェシーは知ってたね」

「動物園でそんな訓練があるのか!?しかし、好いアイデアだな」最初は面食らっていた隊長も、訓練ドリルだと言う事が分かると乗り気になった。

「そう言えば去年のハロウィン・パーティーで恐竜のコスチューム着てたスタッフがいたな」ジョージがつぶやく。

「よし借りて来てくれ。恐竜役は…」

「わたし/オレやります!」人間勢が一斉に手を挙げた。

「一番機動力があるメンバーがいいんだが…」

 隊長的にはポールになるのかな?けれど、結局ジャンケンで恐竜役を勝ち取ったのはジョージだった。


 オレはミハルと並んで座り、ふたりで人間たちの様を生温かい目で見守る。


 そうこうする内にコスチュームのオーナーがモノを持って来てくれ、ジョージの着付けを手伝い始めた。

「なんだかレックスとステゴサウルスをフュージョンさせたようなカッコね」ミハルの隣に座りに来たジェシーが、ミハルをモフりながら感想をぼやく。「恐竜なのは分かるけど、何の恐竜なのか分かんない」

「一応肉食みたいですね。キバついてますよ」ミハルは軽く剥いた自分のキバを指差す。

「サブ・チーフって肉食ってイメージじゃないのにな」

「そうよね」

「オレは、前に見た映画のイグアノドンとイメージがダブるな、副長は」

「あ、そうね。おっとりしてるけど面倒見いいし」

「明日の朝イグアノドンになってたりして」

「ジェシーが恐竜だったら何になるかな?」

「え~恐竜は考えたことなかったなぁ。哺乳類とか鳥は想像したことあるけれど」

「チーターとか小型のタカとか?ジェシーってチームの中で一番脚速いし」

「ああ、同感だな」

「え~、そう?わたしはイヌかマグパイだと思ってたけど」

「あ、カササギか。確かにカラオケとかキュートだったし」昨日のパーティーでABBAを歌っていたジェシーは、実に楽しそうだった。

「トウヤさん、マグパイってカササギって鳥のこと?どんな鳥なんですか?」

「カラスの仲間でお腹だけ白いんだ。日本だと九州の方にいる。綺麗な鳥で、キャロリングって言って独特の鳴き声で可愛らしい歌を歌うんだよ。七夕伝説にも出てくる」

「タナバタ、って何?」

「ファーイースト・レジェンドリー・ラブ・ストーリー。ヒコボシ・ウィズ・オリヒメズ。アストロ・イベント・イン・7ス・ジュライ・オァ・7ス・オーガスト。フェモス・フェスティバル・イズ・センダイ・ミヤギケン。(極東アジアのラブストーリーだよ。彦星と織姫のね。7月7日か8月7日にやる空のイベントで、宮城県の仙台で有名なお祭りがあるよ。)訓練終わったら教えるよ」

「日本じゃね、毎年7月7日に自分の願いを添えて二人が会えますようにって祈るのよ。カササギのエピソード、あたしももっと詳しく知りたいです」

「オ~、ファンタスティック!プロミス・イン・ディナー!。ウェル・リターン・トレイン(え~ステキ!ディナーの時に約束よ!じゃあ訓練に戻りましょう)」


 今回の訓練セットでは、相手が人間のジョージと言うこともあり、かなり手加減した。

1セット目は自我を失っている相手を想定したもの。オレとポールとで恐竜役のジョージを取り囲み、相手の気を引いた所をダンがネット・キャノンで捕縛。

2セット目はヒトとしての意識はあるけれど言葉が使えなくなっている相手を想定。ミハルとジェシーとの説得の後、平和的に保護というシナリオだった。

いずれのシナリオも、ジョージは迫真の演技を見せた。


 午後イチからのマジな訓練もギャラリーがかなり沸いたが、むしろ、こちらの第2部とも言うべきロールプレイ訓練の方がウケは好かった。

 アメリカーナもジャパニーズも、命を持った人間や動物に思い入れがあるのは変わりないんだな。

 訓練後に基地司令がこちらの録画をYouTubeにアップすると言うことになった程だ。

もちろん基地の広報として、恐竜化した人間を無傷で捕獲する努力をしてますよ、と言うコマーシャルだ。

しかし、その一環で、恐竜にもパーソナリティーを保っている者がいて、人間と協力関係にあるのだ、という事実を広める意味合いも含めてくれたのは、オレにとっても嬉しい限りだな。


 さて、今日はこれで訓練終わり。明日から実地だ。

 インドミナス・レックスとか出て来ないことを祈りつつ、チームのみんなとビル・フィールズのお見舞いに出かける。


トウヤ :副長が恐竜になったら困るんだけど。

ジェシー:ウチは少数先鋭だから1人でも抜けられると困るわね。

トウヤ :オレのマガジン・ロードやってくれるヒトがいなくなっちゃうのは一大事だ。

ジョージ:そこか!?


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