032:サバゲーやるの?~射撃訓練 その2
デイノニクス vs US海兵隊
トウヤがちょっと本気になります。
032:サバゲーやるの?~射撃訓練 その2
ランチも終わり、相方のポールが戻ってくるとサバゲー(サバイバル・ゲーム)になる。
字面ではお遊びに見えるけれど、実際には戦闘訓練。モロに命が掛かる。
初めはコンバットシューティング。ホーガンズアレイ(シミュレーションレーン)を廻り、そこかしこにしこまれている動態標的を間違わずにしとめる。
敵兵を模した標的を、物陰からふいに出現させるアレね。
もちろんこれらの中には一般市民を模した標的、つまり撃ってはいけない対象も含まれていて、これを撃ったらアウトになる。実戦でソレは御法度で、やっちゃうと殺人扱いになっちゃうんだからな!
オレは不安はあったものの、加速モードを使わずに、素のままで訓練に参加することにした。
訓練中に能力的な恩恵でミスヒットをださなくても、それでは判断力を問われる極限状態ではどうなるか分からない。
きちんと基本も底上げしないとダメなんだ。
地下のシューティングレンジは狭いので、あまり本格的な設備ではないようだけど、ビギナーのオレにとっては十分だ。
上の方のオペレーション・ルームには、司令の他にもギャラリーが詰めかけている。
ミハルはもちろん警察学校で訓練済みだったので、難なくパス。
オレもサバゲーをやりこんでいたこともあり、可もなく不可もなくパスした。フィールドに参加者以外の人間が入り込むケースがしばしばあったんで、誤射しないようにいつも気を付けていたからな。
それにしても、実銃だと撃った時の反動のせいかうまく当たらない。外しはしないけどポイントギリギリだ。
次に模擬銃、つまり、エアソフトガンに装備を切り替え、フォックス・ハントをやる。イギリスのキツネ狩りを真似たものね。
このルールは1対多、つまりキツネ役以外はみんなでキツネ役を攻撃し、しとめる役になる。
これは、キツネ役になったルーキーにとっては戦い方そのものを学ぶ格好の機会であり、エキスパートがキツネ役をやる場合は、他のメンバーが戦い方を学ぶ場になる。
午前中の射撃訓練が『単位作業』にあたるなら、こちらは海兵隊員としての『仕事』を覚える訓練ということだ。
キツネ役の反撃可否ルールについては、反撃可の場合は相手を全滅または規定の人数をしとめることが勝利条件となり、反撃不可の場合は、あるエリアから指定のエリアまで逃げ切ることが勝利条件となるか、逃げ続けた時間の長さを競う。
で。
「最初はトウヤ、キミがキツネ役だ」キツネ役反撃可&全滅ルールに決まると、隊長から早速指名される。
シニョールそりゃネっすよ。「戦力差ありすぎじゃないですか?」オレが使える得物は装弾数7発の.45オート1丁きりで、基本設計なんか100年以上前なんだよ?
「むしろそれでも勝てる気がしないんだが、人間側としては」
あれこれ押し問答の結果、今回だけSMG(小型マシンガン)を使わせてもらえることになった。
しかし、その判断はお互いにとって甘かったことが、ものの10分経たずに判明した。
オレは、真っ先に攻撃先鋒とリーダーを襲い、そのタイミングでワザと動きをさらし、そこへ狙撃してくる狙撃手の位置を確認。
リーダー、アタッカーを潰し、さっき確認しておいたスナイパーの射点に移動。スナイパーは、射点を移動した後なのですでにいない。スナイパーのセオリーなので、ジェシーなら当然のリアクションだな。
とは言え、ここに来たのは別の理由なんだ。スナイパーの臭いを追い始めるスタート地点なんだよ。
人間のメ…じゃなくて人間とデイノニクスのそれぞれ女性。ランチに食べたポークチョップの匂い。
アタッカーとスナイパーのアンブッシュ(待ち伏せ)に注意して、身を晒さないようにふたりの臭いを辿る。
デイノニクスのミハルがアンブッシュしていたが、臭いと殺気がプンプンしている。ジェシーを守ろうと意気込むのはいいけど、それじゃバードウォッチングも釣りもどっちもオデコ(釣りのスラングで成果ナシのコト)だよ。
飛び出して来るミハルの出鼻をあっさりしとめ、スナイパーのジェシーの背後に回り込み、とどめをさした。
もちろん加速モードなんか使ってない。我ながらデイノニクスの機動力と索敵能力の高さに驚く。
「やっぱりあなた強すぎよ!SMGなんか渡すんじゃなかった!」byジェシー。ハイ、ごめんなサイ!自分で自分の能力見誤ってました。実際、SMGもセミオートしか使わんかったし。
「映画のウソつき!ラプトルの怖さパネェよ!」byジョージ副長。それは映画監督に言って欲しい。後ラプトル(略奪者)言うな。
「地獄の魔物だ…一発も撃てなかった…」byダン中尉。そういえば中尉はオレを見るなり固まってたな。
「ナット・ディナソー、ザッツ・デモンサウラー(恐竜どころかありゃ魔物竜だ)」byポール。暴れトリケラに飛び乗るオメさんがソレ言う!?
「なんで居場所がバレてたんですか?」byミハル。あーそれはツッコミ所多いから後でね。
「いや、まったくだ。次はミハルにキツネ役をやってもらおう」ターク隊長。
2セット目。
オレはフィールドを彷徨うキツネ役のミハルの足音を頼りに、相方のポールに頼んで狙撃してもらった。
「ひぁ!」藪の中でミハルの悲鳴が挙がる。
ものの2分で決着がついてしまった…。
ポールのペイント弾は、ミハルのアバラ3枚(あばら骨の下から数えて3本目と4本目の間。つまり心臓の位置)にきれいに当たっていた。ポールのカンも大したもんだ。
オレは人間だった時に、バードウォッチングでキジやコジュケイの足音や気配を読めるよう鍛えていたんだけど、それがミハルにとって災いした。それに、デイノニクスはさすが狩猟恐竜だけあって耳の聴こえもズバ抜けていて、集音マイクをインプラントしているような感覚なんだ。
とは言え。
「これじゃ訓練にならんな…」隊長が困った様子でつぶやく。
オレも含めてみんな同感だった。
それに、そもそもの目的が何か違う気がする。
ターク :ところで、私たちはどれくらい持ちこたえたんだ?
ジョージ:7分12秒でした。
ターク :次は15分がんばろう。




